第34話 死体が散乱してるけど朝から鰻
翌朝、街は当然騒ぎになっていた。
知ったこっちゃないですけどね。
ミズーリが邪悪な笑みを浮かべた時、私は直ぐにミズーリの耳たぶを触った。なんとなく。
「うふやにゃわん。」
謎の声を発したミズーリは半分涙目で私を睨む。女神の性感帯発見。
「どうしよう。開発されちゃったわ。甘噛みでもされたら私おかしくなっちゃうかも。かも。」
「とりあえず落ち着きなさい。耳を私に突き出さない。噛んでくれないからって膨れない。…ホテルから離れたところで先に仕掛けるぞ。」
つまりホテルには近寄らせない。
私がさっさと右手を振ると、ミズーリは両手で落ち着けとばかりに上下に振って、それで全て終わった。
少しミズーリが興奮気味だったので、両手で抱きしめてあげる。
私の腕の中で真っ赤になったミズーリは、うにゃうにゃと謎の声を上げながら直ぐ寝付いてしまう。
それを確認して私も寝る事にする。
翌朝、雨がしとしと降り続ける中スタフグロの民が見たものは庶民街の入り口で左足首を斬り落とされてペチャンコになっている男の集団だった。
一部の人は知っていた。これは組織の人間だ。関わらない方が良い。
そして街の衛兵が来るまで死体は放置された。離れたところにある高級ホテルのスイートルームの客が疑われる事はついに無かった。
「これで終わりかしらん。」
「気になるのは万能さんが一切反応してないんだよ。」
「どゆこと?」
「あの町で私達が夜襲われたとき、万能さんは積極的に協力してくれた。けど。」
「今回は協力してくれてない。」
「考えられるとすれば、今回の騒ぎは私達の旅本来の目的に全く関係ない。イレギュラーなトラブルだ。だから万能さんは私の要求に対してのみ力を貸してくれた。」
つまり前回のトラブルには何かがあったという事か。
「迷惑ねぇ。」
「君、この街に来れば何かが起きるって言ってたよね。起こらなければ起こすって言ってたよね。」
「あの時は私が私じゃない時間だったからセーフ。それよりご飯食べましょ。」
君は本当に何一つ変わりませんね。
「女神ですから。」
そうですか。
さて、何を作ろうか。ホテル名物朝食バイキングは二人しか居ないからなぁ。カリカリベーコンとウインナーとスクランブルエッグで食べる、ホテルのくせにジャンクなメニューは結構好みなのだが。
うん、決めた!今朝は高級食第二弾!
「朝から鰻にします。」
「うなぎうなぎうなぎうなぎうなぎうなぎうなぎうなぎ!」
しまった。ミズーリが壊れた。
「あとカリカリベーコンはいつか食べさせなさい。」
どうしよう。うちの女神が治らない。
などと戯れながら炭火でじっくりと焼きお重に飯・鰻・飯・鰻の二段重ね。小皿に奈良漬を添えて。汁物は勿論肝吸い。
タレをお重に掛け回すと、山椒はお好みで。
特上鰻重(肝吸い付き)の完成です。
鰻を一口食べたミズーリが泣き出した。
「なんでよ。なんでご飯食べただけで涙が止まらないのよ。トールはご飯に何か盛ったでしょ。」
「愛情を。」
料理は愛情!
「ずるいずるい。」
別にずるかぁない。大体私は独身生活がそれなりに長いからそれなりに自炊経験は豊富だが、寿司を握った事も鰻を焼いた事もない。そういえば餃子を包んだ事も。
私の生半可な知識と技術を万能さんが補ってくれているだけだ。
「こうなったら覚悟しなさい。女神の全力をもって貴方を幸せにしてやるんだからね。」
泣きながらのツンデレ口調だし内容も滅茶苦茶だし。
「貴方に、泣きながら気持ちいい気持ちいいと言わせてみせるんだから。」
それは君の身体が元に戻った時にお願いします。あらあら、なんで言った君が照れているんですか?
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