第31話 メシくらい落ち着いて食わせろ

そのまま進む。さっきのはまぁ、辺境の辺境だから通る人いないし、しばらくは発覚しないだろう。

と思ったのに。

「ピキーン!悪者レーダー発動!」

君、一応女神だし、アホ毛はないよ。

「一応は余計です。で、どうする?間違いなく私達を狙っているけど、まだまだ距離はあるわよ。」

「おかわりさん?」

「多分。」

ならばやる事は同じ。右手を振り回して、ほい。あ、悲鳴が聞こえる。数分歩いた先の草むらに自分の左足首抱えて泣き叫んでる天狗のおじちゃん達が何人もいましたが勿論放置。

出血してないし、生命力が有れば死にませんよ。多分。


地図と地形を見比べるとそろそろ街道にぶつかる筈だ。ドローンを飛ばしてみると、私達の世界でいう2キロほど先、結構往来の人も見える。

ならばこの辺でお昼にしようか。ミズーリ?

「誰が反対しようか。いや無い。」

下手くそな反語ですねえ。

テーブルセットを出すといそいそと座るお嬢さん。あ、そうだ。

「ミズーリ。バンザーイ。」

「バンザーイ。」

昨日新しいテーブルセットと一緒に作ったテーブルクロスをバサッと敷く。それだけでミズーリはご機嫌になった様だ。

「トールは分かってるう。」

鼻歌を歌い出した。

朝の食パンの残りを使う。牛と豚の合い挽きを丸めると両手でペッタンペッタン。

空気が抜けたらフライパンで炒めデミグラスソースを軽く絡める。

肉に火が通る間に食パンを四枚切りにしてさっと炙る、スライスチーズとレタスにマヨネーズをかけて全部を挟む。付け合わせは塩をまぶしただけのフライドポテトに、待ってましたの黒いいつもの炭酸水。

ジャンクのくせにちゃんと作るととことん美味しくなる僕らの味方、ハンバーグサンドセットです。

ぱんぱん

何の音かと思いきや、ミズーリが柏手を打ちました。神に柏手を打たれるハンバーグ。

そのまま手を合わせて頂きます。

「頂きます。」


「すごーい。すごーい。おいしーい。おいしーい。」

いつものようにテーブルをバンバン叩くミズーリさん。ちょっと違うのはミズーリがテーブルを叩くたび、バンバンと地面が揺れる事。その内にその揺れに巻き込まれた天狗のおじちゃん達が飛び跳ねては落ち飛び跳ねては落ち。悲鳴が上から下から賑やかな。飛び跳ねる高さが結構なモノになった頃、

「ごちそうさま。」

と挨拶し、そのままテーブルにべたりと倒れ込む。食休みの時間らしいが、テーブルの下では素足を私の腿に乗せている。

「まったくぅ。トールが作ってくれたご飯くらいゆっくり食べさせなさいよ。私の一番大切な時間なのに。」

でミズーリさん。この足は何ですか。

「つまらない事に力を使って不愉快だから、トール成分補給してるの。」

不愉快で殺戮された天狗のおじちゃん達、いと哀れ。

「ねぇトール?天狗のおじちゃんで誰?」

月よりの使者でもいいよ?

「古い。」

ご存知だったらしい。


うーんと伸びをしたミズーリが出発を告げる。

しばらくすると沢山の天狗のおじちゃんが倒れている。みんな首や手足が曲がってはいけない方向に曲がっている。

ちょっと思いついて転がっている天狗のおじちゃんの左足首を全部斬り落として、持ち主のお腹の上に置いておく。

「何してんの?」

「敵は明らかに私達を認識して攻めて来てる。ならば私達に手を出すとこうなると、

まぁ警告だな。これでも来るようなら覚悟して貰おう。」

私達は間もなく街道にでる。スタフグロの街には陽が落ちる前に入れるだろう。

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