第27話 納豆はどうでしょう
朝は何を作りましょうかね。
この世界に来て初めてちゃんと一晩眠れた。
あまりに平和だったのでミズーリは眠ったままだった。
久しぶりに王道な旅館朝食といきましょう。
白米に味付け海苔、卵は目玉焼きもいいけど昨日昼夜続いたのでだし巻き卵で。
主菜は肉が続いたし、魚で。鮭か鯖か。
うん鮭かな。塩鮭を網でパチパチ焼きます。
野菜はほうれん草のおひたしに削り節、化学調味料をこっそりと。ナスときゅうりの浅漬けは私の和食にマストです。
お味噌汁は鰹出汁でワカメと豆腐の具。
おまけは素材が被らない様に野菜ふりかけと一応納豆も。私が結婚する人は納豆が食べられる人に限ります。
「ならば私は必ず食べられるようになります。」
ミズーリが起きてきました。
「起きたらお布団にトールがいなかった。凄く寂しかったの。」
可愛い事を言ってくれる→
「そしたらお魚を焼くいい匂いがしたから飛び出してみたの。」
→残念なへっぽこ女神だった。
「何これ。この納豆とかいう発酵大豆普通に美味しいんだけど。ネギと辛子が効いてるし。」
「私の世界では香りと腐っている様な見た目で嫌う人も多いんだ。」
「この納豆が食べられないだけでトールと結婚出来ないとか、そっちの方が可哀想。」
ご飯に納豆をかけて器用に海苔で納豆巻きを作る天界の女神様。たちまち完食すると、お茶お茶とリクエストするので冷たい玄米茶を差し上げる。
「ふひー。」
朝から溶け始めました。
食休みを終えてキャンプ地を元通りにすると私達は出発する。
「今日も目的地はないわ。強いて言えばシュヴァルツ領を出る事くらい。」
「出てどうするのかな?」
「街道に戻って新しいトラブルに会いましょう。」
「トラブルを求めて旅をするってどんな珍道中なんだろうか。」
「どうせどんなトラブルが起きても力尽くで解決しちゃうしね。私達。」
身も蓋もない。
「それにほら、昨日は悪人も鬼も殺してないわ。そろそろ何か起きないかしら。」
悪の女神様が本音を吐きやがりました。
「まぁ、私も鬼の魂を屠った以降はご飯しか作っていませんが。」
「まぁ、なんて事を言うの?トールのご飯は全てに優先されるのよ。」
ヲイ
「おっぱいの秘密もまだ分からないしね。不必要なよそ様にはなるべく迷惑をかけない様にしてトラブルに巻き込まれます。それがしばらくの目標です。特におっぱい。」
二日連続で、死と転生を司る女神ミズーリ様が私に全裸を見せているので、なんかもう麻痺ぎ
「それはいけないわ。」
私の思想を遮らないで下さい。
「全裸はやはりサービス過剰かしら。でもおっぱいくらい見せて貴方の劣情を引き出さないと。折角膨らみかけたおっぱいなんだから。今でしか見られないおっぱいなんだから。」
この女神には食欲と性欲しかないのだろうか。天界に帰すという私の目標か達成出来るのに何百年かかるのだろう。
「やあねえ。神様なんて欲望の塊って何回も説明したでしょ。私だって根っこは大差無いわ。それに何百年もトールと一緒に居られるなら天界なんかどうでもいいわ。」
少し嬉しい。
「まだついて来てるな。」
そちらには視線を向けず呟いた。
「殺気は感じないから放置してたんだけど、気になる?」
「いや、夕べはお互い朝まで眠れたし、万能さんも反応ないからいいやと。」
「私も正体が分からないの。感情も分からない。肉体の有無も分からない。人間か、モンスターか、それとも何か。でもね。」
ミズーリは私の手を握り直す。
「私達がいくら不死身でも許せない事はあります。それは貴方に敵意を向ける存在。
貴方にいくら実害が無くても、貴方に敵意を向けた時、私はその存在を抹殺します。貴方に敵意を向けない限り、貴方が不快に思わない限り貴方が命じない限り放置します。」
素敵女子モード入りました。
「ならしばらく放置の方向で。」
「畏まりました。」
そうして私達は仲良く手を握りながら昼前にシュヴァルツ領を出た。
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