第25話 今日の目標(何も無し)

万能さんにひと念じ(ああ、私はまた珍妙な日本語を作ってしまった)してバンガローとテーブルセットを消す。

食器類はなんとなくきちんと洗いたかったので、水と前世御用達だった黄色い洗剤で綺麗にする。その端から万能さんは乾燥させて回収していく。

「今更ながら便利よねぇ。」

「嫁さん要らなくなるな。」

「!」

慌てて、お役に立ちますご主人様、とミズーリは手をわちゃわちゃ振り回した。

一瞬で私が崩した草が元通りに回復する。

最後にお願いしようとしてたんだけどね。

「ありがとう。私とミズーリは以心伝心だね。」

ミズーリは真っ赤になって俯いてしまった。

ちょろい。

後片付けが終わり改めてミズーリを見る。

自分のおっぱいを揉んでいる。

何してんのこのへっぽこ女神。

「嫁さんと言う単語に、おっぱいだけちょっと膨らんだ意味を考えていたの。」

この下ネタ女神様、今までも一応口だけで発情はしてないと思うけど。ブレないなぁ。

「成長の条件。多分私の行動がそうなっている。」

「鬼退治では無いな。」

なら最初の村で鬼本体を私達は倒している。いや待て、あの時倒したのは私だけか。

「夕べだって私は何もしていないわ。」

結構活躍していた様に思えるが鬼退治という点では確かに。

「それに昨日トールに宣誓した時と違って身長は多分全く伸びてない。おっぱいだって、まだまだちっぱいだし。」

あ、ほんとだ。あと、ちっぱい言うな。

「あれはイレギュラーとして、それ以外に私がやった事って一つの町と一つの誘拐組織を、人間を怒りの感情に任せて潰しただけ。こうプチっとな。」

アリンコを潰す様に大量殺戮を表現する死の女神様。

「早くトールに美味しく頂いて貰う為にもっともっとおっぱいを大きくしないと、その為には何をしたら良いのかしら。」

本当にブレないなこのへっぽこ女神。

「そう言えば。」

「何?」

「天界で初めて君に会った時。君は胸元の大きく開いたドレスを着ていた。」

「あれは私達のユニフォームだから。神のセンスって中々酷いわよ。創造神様がたまたま見つけたデザイナー上がりの人間に天国行きを条件に作らせたの。」

とんでもねぇな。あの親父。

「その辺は大丈夫。魂の天秤がなんらかの善行を為せば天国行きが出来ると判断した人だから。実際割と好評よ。神々しさとセクシーさの融合に。」

「君は土下座してたから胸元丸見えだったんだけど。」

「??……!!」

ミズーリが何かに気がついてふらつき出した。顔が見えない。

「…トール。貴方は巨乳派ですか?」

「形派だな。」

「なら良し!」

あ、復活した。


「さて、今日ですが。このまま街道を行くと

明日の昼過ぎには次の宿場街に着きます。」

ふむ。

「君の考えは?」

「何も考えず街道を行くと、遅かれ早かれさっきのアリスちゃんの仲間に遭遇するでしょう。」

ちょうど馬が帰って来ます。

「面倒くさくなりそうだ、逃げるか。」

「賛成に一票。」

馬を万能さんに収納して貰って、私達は進路を西にとる。大回りしてシュヴァルツの街を避ける事にする。

私達はのんびりと草原に足を踏み入れる。

ミズーリがおずおずと手を繋ごうと言い出したので諾の返事を返すと、喜んで抱きついて来た。今日も先に進まないんだろうなぁ。

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