第18話 草原で一泊!

草原を渡る風が気持ちいい。ふと気がつくと、枝に一羽の小鳥が羽根繕いしながら私達を眺めている。

何の気無しに、パンを一欠片取り出してテーブルの上に置くと、小鳥は何の警戒心も無く降りて来た。

嬉しそうな鳴き声を発してパンを啄む。

「人慣れしてるのかな。」

「そう言う訳でも無いわよ。私達は女神様御一行だからね。妖気の無い被捕食動物には私達の神気のそばは何より安心できるの。」

テーブルに顎だけ乗せてお行儀悪い格好のままミズーリは小鳥を眺めている。

「私達?」

「私の誓約で、トールはもう私という女神よりも上位の存在なの。そろそろ諦めて。」

「そうかあ。」

思う存分パンを啄んだ小鳥は私の頭に止まり、髪の毛を啄み始めた。

「ごちそうさまでした。ありがとう。だって。」

ミズーリの通訳が終わると小鳥は飛び立っていった。

「女神の格が上がるって事自体私には初耳だったし。」

顎乗せ女神ミズーリが続ける。

「私がさっき貴方に誓約したのは、本当に私の感情の行き場がなくなったからなの。何か貴方に伝えたい。じゃないと私は凄く苦しい。さっきの私の言葉は全て本心。というか、嘘なんか付きたくとも付けない様に私達は作られているんだけどね。」

私も姿勢を崩してだらしがない格好でミズーリの話を聞く事にした。

「貴方は私の大切な友達であり愛しい人。あそこで天界の神々まで出したのは、貴方に私が本気である事を知って欲しかっただけなの。まさか天界が反応するとか一番私が驚いてる。」

まぁ、あの人達じゃなぁ。面白半分にやってても何ら不思議とは思わない。

「女神の格が上がるって事が分からない。私がどうなったのかも分からない。誰も教えてくれない。ただ分かったのは。」

分かったのは?

「貴方が居てくれれば大丈夫って事だけ。ねえトール。」

「何?」

「貴方って何者?女神を本気で惚れさせて、女神が膝付きたくなる人間なんかあり得ないんだけど。」

君は最初から土下座していましたが、でもそれは私が一番知りたい。


そのままマッタリしているうちに陽が傾いて来た。二人してダラダラしているだけで足は一歩も前に出ていない。

何、私達は無限の存在になってしまったんだ。一日くらいのんびりしてもバチは当たらないだろう。

そういえばバチを当てる方の神様は人手不足がどうこう言ってたな。ミズーリの女神格が上がっても、まだ同じ職場なのだろうか。

「知らない。天界で死者を引き上げ裁くよりも、ここでトールのご飯食べてる方が大切な時間だもん。」

へっぽこ女神はテーブルセットで溶け切っている。当の本人はもう動く気なさそうだ。

先程の素敵女子モードは一瞬の夢だった。

「仕方ない。」

森の中で作ったバンガローを万能さんに頼んで取り出した。

中に入り、唯一の家具をダブルベッドに置き換えた。

結局、ここがキャンプ地になったか。

女神以前に女として見るに堪えない姿勢でミズーリは叫ぶ。

「草原で一泊!」

うるさいよ。

「あと服をちょっと変えてみました。」

なるほど、そんな姿勢なのはパンツルックからスカートになったからですか。

でも君、小学生のパンチラって誰が喜ぶと思ったんですか?

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