第16話 成長?
「とは言うものの。」
私は従者の童女の扱いに困った。
「どしたの?」
「おいへっぽこ女神」
「誰がへっぽこよ。」
ポンコツ女神ミズーリは何故か神格が上がったらしい。本人の申告によるとだ。
と同時に少し成長したのがわかる。
未就学児から小学3~4年生くらいだろうか。
私如きなんら取り柄の無い男に、従者宣言と愛人宣言をまとめてして下さった女神様であるが、少し大きくなった分扱い方を考えなければならなくなった。
性行為要求をしてた幼女が愛人宣言をしたせいか、平気で人にまとわりつく様になったのだ。
おかげで小日向の街から大して進んでいない。
「君、昨日は確かあのキャンプ地で一日の方針を宣言したと記憶しているが。」
「したわね。」
「今日はこの有り様なんだが?」
「とりあえず今朝はあのゴキブリ駆除しか考えてなかったから。あと貴方への宣誓なんか宿出るまで脳の片隅にもなかったもん。」
「さっきのあの健気な女の子はどこにいるのだろう。」
「だからこれが私の地って最初に言ったでしょ。またイベントが来れば健気で真面目で素敵な女の子が現れます。」
「そうですか?」
今は素敵じゃ無い自覚あるんだ。
「次のイベントでまた貴方への愛を告白し成長します。具体的には第二次性徴期で生理が始まるくらい。」
「しませんよ。」
「しましょうよ。」
ポンコツ女神からへっぽこ女神に転職させた私のアドリブ力に自慢アンド感謝。
「とは言うものの、イチャついていても何も始まらないもんね。」
やっと本題に入った。
「私は楽しいけど。」
「知りませんよ。」
「具体的な年齢はナイショだけど、女神ってこういうのに幾つになっても免疫が無いの。」
「男性神とかいるでしょう。創造神は男に見えました。」
「知ってる?神様って欲望の塊なの。男の神様なんかアレの事しか考えてないもの。」
「私の目の前にいる女神にも再会早々性行為のアプローチをかけられた覚えがあるな。」「言ったでしょ。私は貴方に捨てられたくなかったから、なんでも受け入れる気だったの。先に宣言しとくけど、私に男性経験は無いわ。お楽しみにね。」
知らんがな。
「覚悟しておいてね。私は貴方のベッド以外で寝るつもりは無いから。」
一応、物凄い事言ってるんだよなぁ。童女だけど。
「さて、今日はですけど。次の街まで歩けば2日かかります。」
「歩かなければ?」
「この世界なら馬車かな。でもご覧の通り。」
ミズーリが手のひらを眉に当て360度見渡す素振りを見せる。遠方に丘陵が見えるが基本的に開かれた草原だ。
ミズーリ曰く表街道ではないので、交易商人が時々利用するだけ。一日歩けば2組くらいはすれ違える程度の交通量しかない。
「なので別に馬でも良いし、見つからないのなら自動車でもなんでも大丈夫。」
「何故そんなに人がいないんだろう。」
「トールの故郷でも広い平野だと、見渡す限り一面田んぼとかあったでしょ。そこを徒歩か馬で旅したら。」
北関東をドライブした経験を思い出す。
「人に会う事は減るわな。」
「それに最初にあった森の中の村から私達相当な距離と時間歩いているけど?」
「疲労感は一切無いな。」
「正解。神様の力だからこれ。それに私達は天界帰還の条件なりヒントなりを探さないとならない。」
「急ぐ必要は無い訳か。ミズーリの主になった私はいわば不老不死でもあるから時間は無限にある。」
「お金と体力もね。こういう言い方はあれだけど、私達はトラブルに巻き込まれた方が良いのよ。多分。」
「分かった。のんびり歩こうか、女神様。」
女神様の頭をぽんぽんと触ると、私達は仲良く並んで歩き出した。
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