第13話 女神がデレた
「何故あそこまで怒ったんだ?」
(今では住民の頭が)小日向の街を出て数分。少しはミズーリも落ち着いた様子が伺えたので声をかけてみた。
「単純な事よ。貴方に害をなそうとしたから。」
なるほど。
「それと女神たる私の身体に触れたから!」
なるほどなるほど。ん?
「一昨日、森で賊に襲われた時は君は凄く冷静だったと記憶しているが?それに二晩連続して私達は同衾しているが?」
「言わせないでよ。」
?
「トールってもしかして朴念仁?」
??
「しょうがないわね。」
少し前を歩いていたミズーリは立ち止まり私の顔を見上げる。そのくらい、幼女ミズーリとは身長差がある。
わざとらしくコホンと咳払いをすると深呼吸、それから私をぎっと睨み背筋を正す。
忙しい女神様だ。
「私、死と転生の女神ミズーリは我が永遠の友にして愛しき人・瑞樹亨と天界の神々に宣誓します。私ミズーリは瑞樹亨を全身全霊を持って護り抜きます。私の心と身体は瑞樹亨のものとします。全てを貴方に捧げ尽くします。」
その瞬間、ミズーリの身体は光輝き、光は柱となって天空を貫いた。
身長はあの時に見た女神ミズーリに戻っている。
とはいえ柱の光は決して眩しいわけではなく優しい光、数秒して光が収まっ時、ミズーリは元の幼女に戻っていた。
「わかりやすく言えば。」
元の身長に戻ったミズーリが私の顔を見上げて話出す。気のせいでなく顔が赤い。
「トール、貴方は女神ミズーリ、私の主になったわけ。」
ふむ。ん?
「それは今までと何が違うのかな。」
「私は神だから死なない。同時に貴方も私が存在する限り死なない。貴方が生き疲れるまで、私は貴方のそばで貴方を護り続ける。女神の力、そして私の全てを貴方に捧げ続ける。」
んん?
「ミズーリ、君の覚悟は理解した。だが、私の使命は君を天界に戻す事だ。天界の神々が言っていた事、授かった万能の力に君の女神の力を捧げて貰ってもやる事は変わらない
君を天界に戻せたら私も転生後の現世を終える事が確定している。君の宣誓は一人の男として光栄だが、」
「それでも。」
必死の形相で私の言葉を遮る。
「それでも私は貴方と共に居たい。貴方と為したい。これは私の我儘です。私の贖罪です。私が貴方に私の全てを捧げる事は私の欲望でしか有りません。それに。」
「それに?」
「天界は私の願いを聞き入れてくれました。」
さっきの光とミズーリの変身か。
「だからトールは私を受け入れて欲しい。貴方を求めます。貴方を受け入れます。私は貴方が欲しい。」
「一ついいか?」
「なんでしょう。」
「私達が一緒に過ごす様になってまだ2日だ。女神様がそこまで私を気に入ってくれた理由がさっぱりわからない。」
「ご飯。」きっぱり
それかい!
「冗談ですよ。」
ミズーリは今まで見た事の無い大人びた顔を私に見せてクスクス笑った。
「あの時、あの森の家の中で、貴方は私が貴方のベッドに潜り込んだ時、私を真摯に受け入れてくれました。」
そりゃ子供相手だからね。色々あったし。
「嬉しかったんですよ。単純にひとりの女の子として甘えさせてくれて。でもそれ以上に。」
言葉を切って私の顔を見つめ直す。
「女神として多幸感が私を包んだんです。あの晩も昨日も。そんな事は長い間女神をしていますが初めての経験でした。意味は分かりません。理由も分かりません。ただ分かったんです。女神ミズーリの正しい居場所はここだ、貴方のそばだと。天界の反応もそれを認めています。
だから私は貴方と歩む。ずっとそばで歩み続ける。そう分かったんです。」
そうか分かっちゃったなら仕方ないな。
「ミズーリ。」
「なんでしょう。」
「これからもよろしく。」
それを聞いた女神は涙を溜めながら満面の笑みで私の腰を抱きしめた。
私の胸に飛び込んだという表現が出来ないあたりが何とも私達らしい。
ただ、今後もミズーリのポンコツ振りは治らない事だけ付け足しておく。
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