第11話 人攫いでしたか

部屋で宿の簡単な夕食を取り(晩御飯はトールが作ってよ、作って下さい、お願いしますとポンコツ幼女が土下座しながら駄々を捏ねた)、昨日作ったランタンさんに部屋の灯りを調整を頼み、来客を寝たふりしながら待っている。と

「お客さん寝てますか?……寝てますね。!」

見当違いだったのは宿の食事に毒が盛られていた事。

もっとも女神とそのなんたら(私)には効く訳もなく。一番最初に無断侵入して来た宿の親父をひとまずぶん殴ったら、窓から落ちて行った。私の腕力も底上げされたと見える。

それを合図に黒づくめの男達が乱入、無言で一斉に刃物片手に飛びかかって来た。

瞬時に隣を見るとミズーリを袋詰めにしようとして居る男も数人。

「ミズーリ!」

「やっぱりトールのご飯じゃないと駄目。美味しくないもん。」

いつまでブー垂れてんですか。

「問題無さそうですか。」

ならばとりあえず右手で宙を斬る。

「!」

いつものように男達の左足首が左足と生き別れになり、全員足を押さえながら床でのたうち回る。

無言で。気持ち悪い。

大量出血で目の光が無くなって行くのを横目にミズーリのそばに行こうとしたが

ミズーリを袋詰めしようとして居た男達の様子がおかしい。

「天界裁判の拘束魔法を流用してみたの。やっぱり現世の人にはきつかったみたい。精神が壊れちゃった。」

ああうん。本来こう言う仕事する女神でしたね。

部屋に広がった血の海をミズーリに片付けて貰う。

これで3回目だし、血の出ない方法少しは考えてよね。と叱られた。

あと、この死体と狂者の山だけど。万能さんに念じたら引き取ってくれた。

子供誘拐組織がこの街にはあるらしく、そのアジトに全部お返ししてくるそうだ。

お返しですか。そういう事ですか。


万能さんにはもう頭が上がらないな。とつぶやくとすぐさまミズーリが反応した。

「私にしか出来ない事は必ずあるから。万能さんにばかり頼らないで下さい。」

私に土下座しながら万能さんに嫉妬し始めるうちのポンコツ女神様。

安くなったな女神様の土下座。

ミズーリ、だいたい貴方まで万能「さん」呼ばわりし始めている段階で何か変だと思いませんか?

何はともあれ、窓を直し部屋を綺麗にして戸締りを確認したら、そのまま大人しく寝る事にする。

今晩もミズーリが同じベッドに潜り込んで来たけどほっとく事にしよう。

転生させられて、二晩続けて大量殺戮してる私はなんなんだろうと悩む心に安寧をもたらしてくれると気がついたから。これは女神様のご加護ですね。


宿屋の親父は会計まで見かけなかった。

因みに会計は私が支払った。ミズーリが言うには最初の最初、あの光に触れる事で少なくともこの世界で一生食べるに困らない金額を得る事が出来たそうだ。

私はさらに万能さん持ちなので、ステータスで言うなら所持金♾なんだそうだ。

で、この世界でそんな金有って何買うのと疑問に思い女神に問うてみる。

「女神の私に聞かないでよ。私の物欲はトールが作るご飯だけなんだから。」

焼肉定食とバケットサンド2食で女神1匹餌付けしてしまった。というか君、天界に戻らなくていいのか?

あと幼女が性欲とか言い出さなくてホッとした。



まだ二日目であるが、長年続けているが如く今日も息のあった馬鹿をやっている。

勿論このままで済むとは思っていない。いやいなかった。

もう少し穏便に済ませる筈だったのだ、ポンコツ女神が本領発揮してくれるまでは。

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