第53話

一 方 そ の こ ろ


幹部会議をしていると思わずくしゃみが出る。


「…ハックシュン!」


「アレク大丈夫?」

ロゼアが心配してくれる。


「誰かに噂されてるのかもね」


「アレックス殿は既に英雄。皆が噂をしないわけもないでござろう」


「ウチもそー思うよぉ〜」


「ご主人様…体調管理はしっかりと…」


ここはとある貴族が所有する土地の一角で、

僕らのクランホームになっている。


ここ、「夜明けの英雄」に所属するのは僕をクランリーダーとして総勢30名程の中くらいの規模の組織程度だ。


その中に5人の幹部ポジションが存在する。


1人目は俺の幼馴染のロゼア。


2人目は東の国からやってきたサムライ?のコゴロウ。


3人目は落ちこぼれと言われていたけど本来のセンスはクラン最高クラスの女の子マドカ。


4人目は公開オークションで売られていた奴隷の中で一番の光る原石だった獣人のテテ。


5人目は今は別の仕事で離れているが、

みんなが頼れる仲間だ。


最近は1日の密度が濃すぎる。

1日が一週間のように思えてしまうほどで

毎日が充実している。


奴隷になっていたテテを助けたり、

コゴロウとは一国の王様が架け橋になって出会うことができたり、

襲われそうになっていたマドカを助けたり…


基本助けることが多かった気もするが、すごく毎日が楽しい。


何がきっかけになったと聞かれたら、


「最高の友人に出会えたこと」


といつも言っている。


…ケイトさんは僕なんかより圧倒的だ。


きっとこれから僕の功績よりももっと凄い偉業を成し遂げてしまうのだろう。

少しでも近づきたい。少しでも追いつきたい。彼は届かない存在なんだ。届かなくったていつかは彼の横に並びたい。


その心が僕を突き動かしてくれる。


クランに入ってくれる人には全員に話していることがひとつだけ共通にある。


『ケイトと名乗る人がいたら報告すること、そしてその人がもし、困っているようならば陰ながら全力でサポートしてあげること』だ。


旅について行くことが叶わなかった僕からのささやかな餞別です。


これから僕の組織はより一層大きな組織になることでしょう。


いつか貴方とまた、依頼を受けることが叶うように。


「…すみません!」


バタン!と大きな音のなる方を見る。


彼は組織の組織員の中でも幹部職に近いとされている青年だ。いつもは大人しいかつ、時に大胆な判断を下したりとすることができる才覚を持った人間だ。


余談だが、僕がケイトさんに

「お前は主人公だ」と言われた時から

僕が実際に見た人の人柄やこれからの才覚がなんとなく分かるという超感覚が手に入った。


自分が主人公だと自覚するきっかけがケイトさんとなって発現したのかもしれない。


それのおかげで裏切りそうな人がわかるから組織作りとしては最適の能力だ。


僕は僕だ。


自分の将来を自分で決める権利がある。

たとえケイトさんがきっかけとなったって

それは変わらない。しかし、人間には「恩」というものがある。


だから僕は自分の将来をその「恩」に尽くそうと思って居たりする。


…なんて余談は置いといて、と。


「取り敢えず、一体どうしたんだい?」


慌てて来たから落ち着いてもらうためにゆっくりと魔力を込めながら一言一言を噛み締めて話しかける。


「『神話殺し』を名乗る奴が現れました!」


「…はぁ、分かった後で僕が向かうよ」


「そ、それがいつもとは違くて…」


「どういうことだ?」


『神話殺し』を名乗る輩は溢れるほど居た。

それほど他人の偉業を奪ってまで、地位を上げようとする奴しかいない。


そんな奴らが僕は嫌いだ。


所詮世の中は奪い合い。

真実とかけ離れていても、真実が隠されてしまえば『嘘』が蔓延る。


「…その『神話殺し』を名乗った方の名前が…」


少し落ち着こうとして彼、クロックは一度深呼吸して、


「その方の名前が、ケイト という方らしいです」


幹部全員がざわつく。


「ケイトさんが…?」


「ケイト殿はもしやアレックス殿がいつも言ってた御仁…?」


(もう動いたんですね…少し想定よりも早かったですが、全然問題はないはず。…でもなんで今、行動したんだろう?)


クロックの情報は当たりが多い。というか今までに報告してくれた情報は全て正確性がある。ということはこの情報は当たりの可能性が高い。


「アレックス殿!こんなこと頃で細々とした会議をしてるよりも此方の実力を底上げしていった方が良い!訓練場にむかいませぬか?」


「…そうだね。僕もこの件について少し考えたいことがある。一度、会議はお開きだ。ちゃんと各自の仕事をこなしておくように」



訓練場には僕ら2人を囲うようにギャラリーがいる。


「コゴロウ、言葉は要らないよ。ただ、ぶつかってくれればそれでいい」


片手剣を持ち、構える。相手は東の国の剣「刀」を構える。


「承知致す。それではコゴロウ、参る!」



訓練という死闘が始まる。



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次の3000文字投稿日は木曜日です。

この話は単体なので次はちゃんとケイトたちは戦います。


最後の情景がリンクするっていうのをやりたかっただけっていう…( ͡° ͜ʖ ͡°)

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