第52話
今週は投稿するゾ!
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「ではお持ちになられたものを見せてもらいます」
解体場までマリーさんと、俺と、解体作業長のライチさんの3人で俺のマジックバック(笑)を囲んでいた。
「わかりましたっ…と」
何も持たずに出歩いている方が怪しまれるから持ってきていたなんでもないバッグに助けられたな…
中身こそ皆無だけど。
「お二人とも、その前に二つほどお願いがあります」
「おっと、言わなくてもわかるぜ?一つはどんな魔物が出てきても他言無用。だろ?」
「少し前にそのようなご要望をした期待のルーキーさんがいらっしゃいましてね。あなたのような方が意外にも凄まじい才能を持っていそうってことも前例があってなんとなくわかるのですよ」
「すごく聞きたいことが出来ちゃいましたけど、その方とは私は違いますよ?」
「…?ではどのようなご要望ですか?」
俺の前には主人公が来ていたみたいだ。
…アレクじゃないよな?
「やむに止まれぬ状況というかで…俺は目立ったことをしなきゃいけないんですよね。ですのでマリーさんはこの買取が終わったら誰かしらに聞こえるぐらいの声で買取の話にしてもらっていいですか?あと、ライチさんは今日のことを他の店の人とかに伝えてもらえませんか?」
「「え?」」
予想外の展開だったのか2人は目を見開く。
「目立たなきゃいけないってお前…なんか危ないことにでも首突っ込んでんのか?」
「そうでしたらギルドに相談してくださいよ?不始末になってしまっては優秀な人材を手放すことになるかもしれないってことですし」
少しマリーさんの言い方はぶっきらぼうな気がするけど心配してくれているからモーマンタイ。
「大丈夫ですよ。…後で俺の前例について教えてくださいよ?」
やっぱりアレクかもしれないとなるとここにいるのもいささか気まずい。
そう思いながら空のバックに手をの入れバックの中にアイテムボックスの亜空間を作り出す。
アイテムボックスの中には俺が多田晃として転移の館にいた時に戦って手に入れたドロップ品やらやケイトとなってから手に入れたレッサードラゴンエンジェルの目やらリザードマンやらゴブリンやらのドロップ品で溢れていた。
「…え?!これはゴブリンロード?!災害指定級の…挑戦するのは危険…いや無謀とまで言われていたやつですよ?!」
初めて俺が外に出た時に手厚く歓迎してくれた
「おい!マリー!こっちもみろ!龍魔将のツノじゃないか?!凄まじいくらいのレア物だぞ!」
驚愕…もといはしゃいでいる彼らには少し驚きだ。
俺の感覚からしたらもう少し取り乱してもおかしくはないような気もしたが、
これもやっぱり前例がいたからだろう。
ちょっと彼らの反応が楽しみだったというひねくれた考えを持っていたが故、若干がっかりだ…
「あともう一つあるのですが…」
結局色々なものを見せたら満足顔になった2人にトドメをさす。
「まだあるのかい?」
その顔は蕩けきっていてワクワクしている。
「今日は最高の日だ…」
なんて思っているだろう。なんてわかりやすいんだ。
「これなんですが…」
そう言って取り出したのは今回の大本命『レッサードラゴンエンジェルの目』だ。
「…?目…ですかね?」
「なんの目か鑑定してみるぞ?」
「構いませんよ」
【鑑定】出来るとは…
「スキルですか?貴重ですよね…」
「…何言ってんだ?【鑑定】は
いや
「すみません…少し世間知らずなもので…」
「…たく、どっから来てんのやら」
田舎者だと思われてる方がいいのか?
いや、貴族の箱入り息子の方が設定としては普通か…?
まぁ、なるようになればいいか。
「魔導具持ってきましたよ」
マリーさんが荷台に大きな機械を乗せて戻ってきた。
(あれ…?何処かで見覚えが…)
…思い出した。
何かを乗せる台とドーナツ状の白い機械…
CTスキャンする機械と全く同じだ。
「すみません…これが最小のサイズでして…これ以上のサイズとなると一つの家レベルの大きさになってしまうので貸し出しはこれしか出来ないんです…」
最小でそれか…だから市場で出回ることもないのだろう。
「早く調べようぜ?気になって仕方ねぇんだ!」
ライチさんの目がキラキラしていて今だけ少年時代に戻ったようだ。
マリーさんが荷台に目を乗せてスキャンをかける。
…スキャンが終わったようだ。
「?!ライチさん!この目の価値…神話級ですよ!」
「…ハァァァァア?!」
「しかもレッサードラゴンエンジェル…アイルスタンで話題になった謎の『神話殺し』って…ケイトさんだったんですか?!」
『神話殺し』て…あぁ、あの時にすれ違った人たちが見つけたんだろうな。
「あの時は公表してませんでしたけど確かにこいつ倒したのは俺ですね」
そんな異名知らないが。
「…こいつぁかなりの肝っ玉だぞ…」
先ほどのライチさんの叫び声が聞こえたのかちらほら冒険者がこちらに顔を出してきた。
どうした、どうしたとなっていたが先ほどの話が聞こえたのだろう。
「あいつが『神話殺し』…?」
「あんな普通そうな奴が?」
とかなり懐疑的な様子。
なので小声でマリーさんに耳打ちをする。
「マリーさん。ここいらで一番、いやそれに近い実力を持った方は誰ですか?」
「何をする気ですか?」
「少し実力の証明でもしてみようかと」
「なるほど…それで知名度アップと誤解を解くためというわけですか」
「まぁ、そうとも言いますね」
「…いいですよ。どうせならSランク級の方に来てもらいましょう。神話級を倒したのならいけますよね…?」
この人…俺を試してるな?
お?やったろか?国中のSランクと俺1人で戦ったろか?勝ったろか?おん?
…危ない危ないパワー系はモテないんだよな…
それから1時間ほど突っかかってきた冒険者と適当に遊びながら噂のSランクを待っていた。
「おや、もうやっていらしたのですか?」
少しマリーさんが白目を剥きながら聞いてくる。
「軽く準備運動とお遊びをね」
俺は木刀、相手は真剣という状況だが。
「やぁ、君がマリーさんの言っていた『神話殺し』だね?僕はローウェイ・コイルだ。一応貴族の息子だけど実質的な身分は平民と変わりないよ。よろしくね」
マリーさんが連れていた青年は爽やかな印象でアレクを彷彿とさせる。
この世界の流行りの前髪をしていてそれでいて周りに流されない圧倒的なオーラ。
この世界での間違えようのない強者だと分かる。
「どうもって…あんた、強いね」
「Sランク冒険者って案外手抜きの人が多いから結構舐められやすいんだけどね。よく気づいたよ。…僕は強いよ?」
彼は自分の強さに溺れた傲慢なのかもしれない、負けたことがないのだろう。
彼は今成長しているのか?
強くなろうとしているのか?
限界のその先を目指しているのか?
恐らく全てNOだ。
彼はもう前進することをやめてしまっている。まだ若くてもこれ以上の実力を求めようとしていない。
そんな奴は"傲慢"なんかじゃない。
そう理解すると彼に苛立ちを覚えてしまう。
俺の前でそんな全てを見透かした風の顔をするな。
昔は彼もライバルと共に剣を交えて互いに高め合ったのだろう。
でも、もう彼は。
「早く始めようぜ。武器はなんでもいいか?」
「…僕の武器も見せてあげよう」
そう言って互いに武器を取り、手に持つ。
俺は「小太刀級 宵月」を。
アレクは名匠が作ったのだろう両刃の長剣を構えている。
「君…すごい業物を持ってるね…」
刀と俺から放たれる覇気を感じて軽く身震いする。
「けど…僕も負けてるわけじゃないからさ」
彼の爽やかな印象に相反したドス黒い気配が立ち込める。
「…っ!それが本性か?」
「ハハッ!そんなことはいいでしょ?早く始めよう!」
「…お二方準備はいいですね。それでは…始めっ!」
模擬戦という名の死闘が始まる。
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