第46話
9月9日に日間ランキングの総合で84位になってました。2桁の順位になったのが初めてでありがたい限りです。自分のペースで楽しんで書いていきます。あっ、ちなみに異世界ファンタジーだと日間51位でした。
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先程まで感じていた羞恥心も少し和らいできた。
「…じゃあ次は俺からの質問だな」
「どんとこいじゃ」
この飄々とした態度は怠惰ゆえなのか…
「…回りくどいのは嫌いなんだ。単刀直入に聞こう。カガクレ…いや、スティール。お前はエルフか?ドワーフか?…それとも、その2種族のハーフなのか?」
「…どうしてそう思ったのか、聞かせてもらおう」
先程の警戒心よりも鋭い気配を感じた。
俺はその警戒心を真っ向から受けながら
理由を語っていく。
先程まであまり注視していなかったが、
スティールの容姿は金髪金眼の若そうな美人の女性だ。しかし、20年以上前からこの工房で鍛治仕事をしていたとなると彼女は長齢の種族の人間なのだろう。
長齢で金髪金眼…条件が当てはまるのはケイトのような例外はあれどエルフの基本的特徴だ。
だからエルフだと断定する…にもまだ違和感がある。
そう、鍛治をしているという点だ。
ケイトの記憶によると、そもそもエルフは高潔な精神を持っており鍛治仕事のような泥臭いことが遺伝子的に苦手なのだ。…補足をするが、努力をするのが出来ないというわけではないぞ。
エルフだとしたら彼女は遺伝子に反発できるナニカを持っていることになる。
そこで考えたのが、ハン◯ラビ法典の理論で「目には目を、歯には歯を、遺伝子には遺伝子を」という具合だ。
簡単に言うと、苦手と思う気持ちよりも好きだと思う気持ちが強かった。ということだと考える。
これらのことから考えて、
・基本的特徴からエルフの遺伝子が混ざっている。
・エルフの泥臭さ嫌いに対抗する強い鍛治好きの遺伝子が混ざっている。=ドワーフが混ざっている?
総合…エルフとドワーフのハーフである。
という結論になった。
俺の推論を聞いておかしそうにカガクレは笑っている。
「ハハハハハ!お主はやはり聡いやつじゃのぉ!」
「その返答は俺の推論を肯定してるのと同義だがそう受け取るぞ?」
「かまわんかまわん!その通りじゃ。ワシはエルフの女王とドワーフの王のハーフに生まれたおんなじゃよ」
oh…禁断の愛ってやつじゃん…
エルフとドワーフは絶対的に相性が悪い。
もうそれはどうしようもなく悪い。
会話することはおろか、視界の中に入れただけで血を見る争いになってしまうのだとかなんとか。って俺がまだエルフの森にいた頃に唯一最後まで構ってくれたお婆ちゃんが笑顔で言ってた。(尚、そのお婆ちゃんはドワーフ過激派とする)
「よくその組み合わせが成り立ったな」
相性的な問題もあるが、その2人を取り巻く人たちはよく思わなかっただろう。みんながみんな大反対の嵐を起こしていそうなのが目に浮かぶ。
「知らんのか?ドワーフ種とエルフ種の内乱を。かなり大事になっていた気がするが…」
「…俺はガルフ派の情報しか知らない」
「ガルフ派とは…かなりの旅路じゃったろ…」
エルフにも派閥で分けられている。
西のガルフ派。これは俺が昔いたエルフの森だ。
それと対を成しているのが、
東のヴォルフ派である。こっちがカガクレの居たであろう派閥だ。
あと、中立の立場にあるのが女王派閥である。ここが一番の政治の中枢と言っても差し支えはない。ガルフとヴォルフは女王の子の双子で才覚も姿も似ていて、両者の性格以外は一致していた。そこから王位継承者を決める対立が起こり、派閥で分かれている現状なのだ。
「俺も少しガルフ派に肩入れしてた頃があったぽいからな…ヴォルフ派の話なんて全然聞こえなかったな…」
「その体の記憶か」
そんなところだ。と返す。
「それで?その争いがどうしたんだ?」
話が逸れてしまったなと苦笑し合う。
「そこで意外にも女王派が仲介役になってな。そこで正式に結婚が認められたのじゃ」
「女王派が…?」
「そこは気になるじゃろ?じゃがな、結婚した後もなにも干渉してくることがなくて本当に善意だったらしいのじゃ」
「ありえねぇ…」
あのク…ババ…がそんなことするわけないだろうに…
「でも信じることしか出来なかったんじゃよ。…今生きてるなら信じて良かったと思えるぐらいには長く生きておるからなワシも」
「何歳か…は無粋か」
「よくわかっておる」
カガクレはにっこりと微笑んでくる。
その妖艶な雰囲気に呑まれないように頭を振って理性を働かす。…なんで俺は理性で精神を保っているんだ…?いつもの無関心はどこ言った?!
「なにかお主は根本が近い気がするのぉ…そうじゃ!カガクレと呼んでくれと言ったがそれはドワーフとして名乗る時の名前じゃから真名で呼んで欲しいのじゃ!もちろんスティールとな」
「秘密を共有した仲間だしな。よろしく、スティール」
「こちらからもよろしく頼むぞケイト」
〜
俺たちの質疑応答(一対一)は終わりを迎え、スティールはルアの元に戻った。
鍛治仕事の見学をさせてやるらしい。
その間俺は気を失ったラシュカの様子を見守るためにベッドの隣の椅子に座っていた。
「ラシュカも可愛いけど光の方が…って女の子は比べられるのが嫌なんだっけ?」
この子の寝顔は安らかで、少し蕩けている。 そんな可愛らしい顔は頬を突きたくなる。すごく衝動的だが。
ツンツン
ついさわってしまった。かなり柔らかい。
もちもちっと若い弾力があり、指で触れると少し沈んで跳ね返る。
(うぉっ…癖になりそう…)
地球にいた時は晃のボッチのストレスを和らげてくれるものは飼い犬と柔らかいスクイーズとスライムを触ることだった。
この癒しがこっちの世界に来ても感じることができるとは…
「ん…ぅん…」
っ!起こしてしまったか?
…大丈夫そうだ。気持ちよさそうに指に顔を擦り付けている。小動物のようで庇護欲を掻き立てる。
この子も辛い経験してきたんだ。
労ってやりたいと思える。彼女は年相応の幼さを持っている。
「…ケイト…」
呼びかけられてびっくりしたが起きた気配はない。寝言のようだ。
「…置いて…かないで…」
どうやらいい夢ではないらしい。
「置いてかないよ」
そう言って頭を撫でてやる。痛いやつかも知れないが、俺が仲間を置いていくと思われるのは嫌いだ。…まだ出会ってそこまで経ってないから信頼関係が築ききれてないところもあるんだけど。
結局ラシュカが起きるまで俺は彼女を見守っていた。
「なんだかいい雰囲気じゃない?」
「そうじゃの。あいつ女たらしの才能があるんじゃないか?」
…その間ルアとスティールは2人の様子を見守っていた。ケイトはラシュカに意識を向けていて気づかない。
「残念なのがラシュカちゃんが寝ちゃってるってことなんだよねぇ…」
「しかし、"強欲"よ。ワシらはここでアレを盗み見てていいものなのか?」
「いーのいーの。僕たちは見守り役なんだ。ラシュカちゃんの気持ちにお兄さんが気づいてくれるか…だよねぇ…」
(あいつは気づいておる可能性もある。あいつの世界は一夫多妻制ではなく、一夫一妻の習慣が強いらしいから、嫁がいるお主は気付かないふりをしているということか…?)
違いますよスティールさん。
彼は鈍感なだけです。
たしかに気づいたとしても気付かないふりをするかも知れませんが、
彼は気づいていません。(強調)
(あいつに一夫多妻制の良さでも伝えといてやろう)
少し不穏なことを思案したのだった。
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