第47話
嫌な夢を見た。
…仲間に捨てられて孤独になる。そんな夢だった。
今は一度別れた幼馴染たちである、アレクとロゼアたちに伸ばした手を払われて、
「お前なんかはもう要らない」
「前からあんたなんかずっと嫌いだった」
アレクたちが絶対に言わないことなのについ頭に浮かんでは心に斬りかかる。
ルアも、
「君がいないおかげでケイトを独り占めできるよキャハハ!」
カガクレさんも、
「主が一番扱いが面倒くさいからの。いなくなってくれた方がせいせいするわい」
皆…優しいのに…そんなこと…言わない…のに…
「ラシュカ。君ははっきり言おう。足手まといだ。僕の仲間はやっぱり、俺と同じ仲間じゃないと務まるはずがない。とっとと消えてくれ」
私の大事な人に…私を私として見てくれた彼ですら酷い言いようだ。
「…どう、して…どうして…貴方は…私のことを凄いって、言ってくれたのに…」
目元には涙が浮かぶ。
「あぁ凄いと思ったさ。あの時はな。範囲攻撃を見た時は素直に感心したさ。それを連発、長時間維持できる魔力量。とても優秀だと思ったさ。けど蓋を開けてみればそれを遥かに凌駕する欠点があるじゃないか。単体に向ける魔法が出来ない。単体への魔法は初歩であり、極地でもある。魔法師としては当たり前のことだろ?たった一体のゴブリンを倒すために君はどんな魔法を使う?全てを焼き払ってしまうような炎魔法?一帯を冠水させるほどの水魔法?地形を変えてしまうほどの爆裂魔法?そんなことをしてたらこっちの身が保たない。…だから君は足手まといなんだ」
淡々と告げられた言葉は世界中のどんな鋭利な刃物よりも鋭く、私の心を抉ってくる。
「そ…そんな…」
膝から崩れ落ちていく私。またあの村に帰って大人たちが私の魔法を利用しようと必死に争うのだろうか?私はその中心でまた何もできずにうずくまってしまうのだろうか?
「君も夢ばっか見てないで現実を見なよ」
現…実を?
私が見ていたケイトたちとの冒険は夢だったの?
…あれ?これが現実なの?
今まで私は夢を見ていたの?
あの楽しいと思えた日々は幻想だったの?
これが私の当たり前だったの?
分からない…わからない…ワカラナイ…
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ…
気持ちが悪いくらいに自分の心は崩れて始めている。自覚はしている。止めようともしている。でもそんな気持ちに相反して不安は募る。
この気持ちは身勝手なのかもしれない。
でも気持ちは溢れ出て仕方ない。
今までうずくまってて気持ちを抑え込んでいた今までの感情が制御できなくなっている。
私は声にならない言葉を発していて
-私って…惨めだな…
しかし、その一言で諦めがつくほど私の仲間への気持ちは弱くない。
「アレク…ロゼ…ごめんね…ごめんなさい…私が逃げ出したいから連れ出してくれたのに…ごめんなさい…勝手に私が抜けちゃって…怒ってる…よね…でも私がいなくなってせいせいしたりしてるのかな?ごめんなさい…ごめんなさい…」
気持ちの吐露は収まることを知らない。
「ルア…あなたとは今は険悪な仲だけどもっと仲良くなりたかった…私の何がダメなの?お願い…教えて…」
紡ぐ言葉は徐々に心に彩りを戻していって、
「カガクレさん…私はあなたのことを大切に思っています。それこそ…ケイト…には劣るけど…やっぱり大事。出会ってすぐだけどあなたは自然と信頼ができるの…私をちゃんと私のままでいいって心から思ってくれている
「…ケイト。あなたは私の1番大切な人。あなたが守ってくれる前からもあなたには惹かれていたの。忘れられない気持ちがあったの。初めてだった…うぅん語るなんてのは私はできない。でも、これだけは言える。あなたは私を見捨てない。それだけは確信ができるの」
この世界が現実?バカも休み休み言え。
こんな世界なんてクソ喰らえだ。
私は揺さぶられた心の世界なんかよりも確かに感じていた人生を…全てを確実に噛み締めていた。
これが偽りの記憶なのだったら私は偽りでもそこに居続ける。そして、本当にする。
たとえこの世界が誰かにとって非現実な世界だとしても私はその誰かすらもこの世界を現実にして見せる。
だから…だから…
「…ケイト…」
「…置いて…かないで…」
あんなに意気込んじゃったって、私はまだ心が発達していないお子様だ。
自分では一人で生きていけるなんて強がってるけど、本当は…心の根底は、未だに王子様を探しているんだ。
どれだけ巧みに隠し通したって密かに…気づいていなくても心で女の子が持っている願望だ。
心の中ではいつもフラストレーションが溜まっているのだ。それを発散させたくもなる。
そんな欲求を知っていたかのように脳に…心に声が響く。
「置いてかないよ」
その一言で私は救われた気がした。
体がぽかぽかして、温かいと感じていたものが熱くなってきた。
…満たされた。私はその一言だけでどれだけ昔の自分が人と組むのを怖がってしまっていたのかを忘れてしまった。
私には…ケイトがいる。
私の大切な仲間。
私の…好きな人。
この想いはあなたからしたらイケナイものなのかもしれない。
私は変わる。変わりたい。
今までの閉じに閉じていた人との関わりを…
人の温もりを…感じても、いいですか?
気づけば私の瞼には大きな水滴が溜まっていて、水滴は滝のように激しくなってくる。
ここは夢の世界。誰が何を思ってこの世界でどんな行動をしたって咎める人のいない最高の世界。それと同時に意志の弱いものをここに縛ってしまう、自分に自分が洗脳術をかけているようなものだ。
…居心地がよくても私はこの場所を、
好きになることはなかった。
頭の方がホワホワしながらこの世界に別れて告げて出ていく。
これほどまでに見たくなった夢は初めてだった。
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ルアちゃんはあんなキャラじゃないです(迫真)
そろそろⅢ章も終わりが近づいてきました。
…今回3000字全然超えなくてすみません…
(あと少しで10万文字!)
これ以上女性キャラを増やすか地味に悩んでいます。
あと、僕は『ボカコレ』という運営の自主企画に参加したくなったので短編を書き始めました。ですので少しだけ今作の頻度がまちまちになる可能性があります。
…ないかもしれません。
ちなみにタイムリープモノです。
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