第26話
俺の身長の8倍ぐらいはあるであろう天界の門をくぐる。
セシアはここに慣れていて何とも思っていないのだろうが、現界ではこんな景色を見ることができないだろう。
空を浮かぶ島や美しい自然、砂漠もあれば、ビル街なんてものもある。少し地球の文化も織り混ざっていたり、どこかの世界の文化なのか地球にはなかった風景がどこもかしこも広がっている。
天界でもやはり都会は憧れるものなのか…
ネオン街のような街並みを抜けると…そこにはいきなり雰囲気が変わり、神殿があった。思いつくものはかの有名なパルテノン神殿と似た構造の感じを覚える。規模は段違いなのだが。
しっかりとした作りで年季を感じさせながらも新品のように綺麗、そんな矛盾を抱えた美しさがある。
セシア曰くここはケントルム神殿というらしい。神の中でも上位の位に付いている神ではないと入れないそうだ。
総務省やら国会やらと同じようなものらしい。
セシアに連れられてきた此処はただでさえ神々しい気配をさらに色濃く漂わせる扉の前だった。前の俺だとここの前にだった途端神経がこの気配にやられてしまいそうなものだ。
その考えは合っていたのかセシアが俺が悠然と立っているのを見てほぅ…と感嘆の声を漏らしていた。
「カタルセニカ様。晃さんをお連れいたしました。」
『どうぞぉ〜入ってぇ〜』
くぐもった声が返される。この口調はやはり、さっき交信していたカタルセニカが中にいるのがわかる。
扉が音もなく開く。
某名探偵のコマーシャル前と後にあるあの扉
のようなものを見てみたかったが流石にうるさくて他の神様に失礼なのかもしれない。
「いらっしゃ〜い」
気の抜けた歓迎の言葉を放っているカタルセニカを見る。彼女を一言で表すと、やはり美女が一番合うだろう。赤のグラデーションのかかった髪はとても長く地面についてしまうほど、手入れが毛先まで行き通っていてとてもさらさらそうである。豊満な二つの双丘を隠す布は羽衣のようで宙に浮いている。神話の女神を美化したイラストを見たことがあったが、そのイラストの作者はこの姿を見たことがあるのでは?とつい思ってしまうほど美しい。
纏う空気は神々しさを持ちながら親戚のお姉さんくらいの気軽さも兼ね備えている。
だが、笑顔は張り付けたような笑みで柔和な感じがするが、大半の人を騙せるだろうが俺は騙せないぞ。
「さっき言ってた用事ってなんだ?」
胡散臭さを感じ取るのはいささか気持ちが悪い。話題をふってその気持ち悪さを少しでも拭おうとする。
「だからそんなにせかさないのぉ〜」
「カタルセニカ…こっちにいる間にあっちの時の流れとか変わっているのか?」
何やら長丁場になりそうで気になったことを聞く。もしかしたらここに少し滞在することになるかもしれない。時の流れが変わる変わらないでここにいてもいいタイムリミット的なものが変わってくる。
「いいところに気づくわねぇ〜お察しの通りあっちの時の流れはこちらよりも遥かに遅いわよぉ〜。ここに比べてあっちは50000000分の1時間くらいかしらぁ〜」
…かなりゆっくりなんだな…
50000000時間もいるとなると…日数換算で…
約36500日位…100年もか…
正直100年もここにいるわけもないだろうから、あっちの現界では1時間も経たずに戻れるだろう。
「まぁ、そんくらい遅いのだったらゆっくりと聞いていこうじゃないか。」
「でもぉ〜こっちから呼んでるのだからちょっとぐらいは教えてあげるわぁ〜」
「カタルセニカ様。彼も待ち人が居るのですよ。急ぎたいと思っている気持ちも私は少し分かりますよ。」
「…その待ち人って誰のことを言っている…?」
俺が目指している目標もそうだが、きっと
アレクたちも待っているだろう。
光のことが分かっているのなら俺らを転移させてきたのはカタルセニカたちだということになるかもしれない。
「もちろん〜光ちゃんのことよぉ〜」
…ビンゴか。神様って聞いて最初に思いついたのがこれだったからな。予想はしていたが、やっぱり犯人を目の前にすると少し複雑な気持ちだ。
「あんたらが俺らを転移の館に送り込んだ張本人なのか?」
「転移の館?ええっとぉ〜…あぁ!賢者ちゃんの家かぁ〜あそこに送り込んだのは私たちで間違いないよぉ〜」
「…あそこで光に会えたから無かったことにしろなんて言わないが、どうして俺らを転移させた?」
これは常々疑問だった。
どうしてただの高校生である俺と光が転移することになったのかよく分かってないのだ。
俺は少し無視という形でいじめこそされてきたがそれでも特別な力なんてものはなかったはずだ。
「特別な力なんて持ってないのにどうして…みたいな顔してるわねぇ〜」
心が読めるのか…?それとも俺が表情に出やすいだけなのか。魂の曝け出されている今は隠し事はできないってことか…
「あなた忘れてるのぉ〜?あなたも…光ちゃんもすっごい特別な存在なのよぉ〜」
俺の…特別な力…
「無限の可能性」は転生した時に貰ったものだから地球での生活には関係ない…
…すると思いつくものは…
「大罪のことか。違うか?」
「正〜解〜♪」
初めてカタルセニカが張り付けた笑みを外して笑った気がした。…その笑みはいたずらに成功した子供のような無邪気さを備えていた。
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ケントルムっていうのはラテン語で「中心」という意味があります。
読んでいただきありがとうございます。
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なくても続けますが、やはり執筆に向ける熱意は変わってくるものだと思います。
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