第24話
僕たちは森から離れるようケイトさんから指示が出されて、それに従いボロボロになった体を動かして逃げ帰っている。
本当は逃げたくなかった、まだ戦っていたいと思ったけど、俺らがどうこう言って邪魔をすればケイトさんの足枷になってしまう。頭では理解しているのに感情が理解を拒む。
戻りたい。まだ戦いたい。ケイトさんになら、ケイトさんになら…背中を預けられる。
あの人には何とも形容のし難い、人を惹き寄せる力がある。ものを多く語るような人ではないが、僕たちはその後ろ姿を見せられて、戦いぶりをみて、諦めない心を見せられて、心は自ずと忠誠を誓う。これをカリスマ性と言うのだろう。
あの人と今日会えて良かった。
この人はついていこうと思える。
この人はついていきたいと思わせてくれる。
この人は、心の芯が絶対に折れない信念でできているのだろう。人としてとても強い人間なんだろう。
この人なら…ラシュカを、彼女を一番一人の命として見てくれると思う。
僕たちは彼女を生かすことが出来なかった。生きていてありがとうって心の底から言えなかった。
生きているのが当たり前と命の感謝を忘れしまった僕たちの心根を見透かされるのが怖かった。
「ケイトさん…生きてください…!」
僕たち三人は彼の生を願うことしか出来なかった。あんな化け物に一人で戦いに挑むその姿はやはり男の僕から見ても、どう見てもイケメンだった。僕が女だったら惚れてた。
そんな考え事をしていると、
「私…もう動けないわ…」
ロゼアに体力の限界が来たみたいだ。
正直俺もそろそろ倒れてしまいそうだった。
森を抜けるにはまだまだ時間がかかってしまうため、この体力では最後まで持たないだろう。
「ラシュカ、一回止まって休憩しよう。このままだと危ない。」
「了解…」
いち早く帰ることを優先してもう少し進んでから…とも思ったが、下手に動いて敵地の真ん中で倒れるよりかは敵地外の森で休憩した方が安全だ。
そうして、休憩を挟んでから数分経った時に
突如大地が大きく震えた。
揺れといっても波状で一点から波紋のように大きくなっていくといったものでそれなりに揺れが大きかったここは震源の近くなのだろう。
「この揺れ…さっきケイトさんが戦ってたところだ…!」
何が起こったのだろう。僕たちには分からない。が、何かとてつもない力が発生したのだと直感が叫ぶ。
「ケイトさんが危ない…!」
思わず結界の外に走り抜けようとする。
しかし、ラシュカの結界は内外どちらからも干渉ができないという特徴があるため、
結界に触れた途端弾き返される。
「ラシュカ!ここから出してくれ!ケイトさんのところに行かなければ!」
ケイトさんがやられそうになっているかもというのにみすみす逃げてるのは見殺しと等しい。助けられるかは、恐らく無理だが絶対にケイトさんのところに向かいたい。
「だめ…」
ラシュカはその考えを否定する。
「どうしてだよ!行かせてくれ!」
少し苛立ちが湧いてくる。どうして共感してくれないのか。どうして肯定してくれないのか。今の僕にはわからない。ただ彼のところに向かわなければ。
「アレク…そんな状態じゃ…死んじゃう…」
「そんなこと分かってる!けど…けど…ケイトさんを見殺しにできない!」
「…話しが通じない…」
ラシュカは何といったのかが小声だったため聞こえなかった。
「とりあえずアレク…ここからでていこうとしたらだめ…絶対に止める。」
「…そうだ。ラシュカ…すまないが少し眠っててくれ。」
話を分かってくれない彼女に説得は無理なのだろう。強硬手段だが仕方ない。
一瞬で彼女の背後に回り込み彼女の首筋を打とうとする。
(これは…完全に入るな。すまない…彼のところに行かせてくれ…)
しかし、彼女の首筋を狙った手刀は空を切り
彼女が僕の首を手動で狙うと言う完全に逆の立場になってしまった。
(え?彼女は体術は得意ではないはず…なぜ避けれた…どおし…)
そこまで考えた時には僕の意識は刈り取られていった。
〜
(倒れた…)
なんとなくだったけどアレクに入れた手刀は見事に炸裂し彼の意識を奪うことができた。
ケイトのことは私も気になっている。
あっちで何が起こったのか分からない。
それでアレクの精神情緒が不安定になってしまうほどとは…魅力が凄まじいのだ…
アレクがすぐに目を覚さないよう
これなら直ぐには起きないだろう。
その後に私だけ結界をでて、遠隔結界と自陣結界を展開させる。
身体能力上昇を使って、少ない体力をカバーしながら森を駆けて行く。
徐々にさっきまで私たちがいたところまで戻っていくと魔素がとても澄んでいることに気づく。
木がとてつもない範囲にわたって抉られたところまで来たとこでそこの中心に彼が…ケイトが倒れているのを見つけた。
そこには先ほどまでいたレッサードラゴンエンジェルは居なくなっており、危機は取り敢えず退散したことは理解した。
彼に近づき心臓に耳を当てると鼓動は…
聞こえた。よかった生きてる…
彼が再び意識が戻るのを待っている間に
治療魔法をかけて、傷を治していく。
(神話級に勝った…?それは人間技じゃない…じゃあどうなってるのだろう…?)
彼について私は、いや世界はまだ何も知らない。とても興味が湧いてくる。
彼に突き動かされるこの感情はなんと言うのだろう。
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