第23話

大層なことを言って入るが、

軽々避けるなんてことは出来ない。

それこそやれるのはチート能力を使いこなせる奴とかだろう。俺はまだこの体に魂が慣れきれていない。


武器チートがあるとは言え大剣の重量とは相性は良くない。武器の恩恵に頼れないとなると使えるのは俺の、ケイトの身体だけ。



天使竜の突進に反応し、そこに合わせて俺も天使竜に向かって走り出す。


先ほどまでの微かな動きをよく観察して

賭けの形になってしまうが、

相手の性格がなんとなく分かった。

あの天使竜は己の武力に絶対的な自信を持っていて、不意打ちなどしなくても人間なんぞは倒せるぞ。なんて思っているのであろう。

こちらに向ける嘲笑や大剣を振るった時の気分が高揚してることを知らせるかのようなオーラの力強さ。


きっと武人としての心得があるのだろう。

下位級とはいえ、生物のカーストの中で最上位に君臨する竜種の神話に出てくる化け物。

多かれ少なかれプライドが芽生えているのであろう。


そもそもの竜種は己の力を誇示することが

快感のように感じるらしい。あの天使竜もその特徴は例外ではないだろう。


これだけ根拠があっても所詮、

推測の域を出ない。だからなのだ。

ここであちらが奇襲の形で体当たりをしてきたらこちらも対処できずにに死亡するだろう。


普通の俺なら考えられない異常な行動。

命の保証なんてないこの世界で危険に片足突っ込まず勝利なんてないと身体が本能で感じる。


命の危険を感じると体は不思議と高揚感を覚える。脳内麻薬で自身の精神安定を行なっているのか。



俺の推論は正しく、天使竜は突進の勢いをプラスにした大剣を横なぎにふるう。


俺はスキルの一つ、「身体能力向上」をフルに発動する。

このスキルは転生前に1番使っていたスキルとも言えるほど使用していて、使い方は魂に刻まれているのだ。このスキルは血液が体を流れるように、体内の魔力を循環させる。

ただし、全身を光の速さで駆けるほど早くだが。体に魔力の循環を強く促すと、体が魔力の力に呼応するように強化されるのだ。


スキルが発動することで体が感じる感覚が一味変わる。


時の流れがゆっくりと遅くなり、

それに反比例して俺の体は素早く動く。

万力の力を得たように漲ったエネルギーは

転生前と遜色がない。


相手方からしたら敵が唐突に大きく強化されて、知覚しているであろう俺のオーラが先ほどまでと別人の如くに研ぎ澄まされていることに動揺したのだろう。


わずかに剣を振るうスピードがおち避けるのが容易になった。

感覚で時の流れが遅く感じていても、

元のスピードが早いため、人間種の剣の達人とサシで戦っているような感覚を覚える。

(尚、相手の体格は4メートルを超えているものとする。)


横なぎの斬撃の範囲外に跳ぶように走り抜けて攻撃を避ける。こちらの戦法はカウンター一択なのだが、相手が魔術を使ってくれるのなら、逆に使ってくれなきゃこちらに勝ち目はないのかもしれない。


待ちで構えているとはいえ、天使竜の攻撃を真正面から受け止めれるほど俺は化け物ではない。せいぜい避けるのに精一杯なのだ。


しかし、この森は街から一日ほどの案外近いところにある。誰かが異常を察知して応援をよこしてくれたら迷惑だ。

これは俺以上の実力がなければいけないのだが、今の俺はAランク帯ぐらいの実力はあるはずなのだ。それ以上となると人員は自然と少なくなってしまう。

下手な低ランク帯が来てもあっさりやられるのが関の山だ。

来ないことを願うことしか出来ない。


今回の死闘はなにかと運が絡んでくるようだ。


ラシュカたちは結界の中で俺のことを観戦しているが、いくら防御力の高い結界だろうと相手は神話級。壊されても不思議はない。

ここで壊されてしまったら俺は俺たちの信念をいきなり捻じ曲げることとなる。

だから隙をみて逃げるよう、撤退のサインをアイツらに投げかけている。それをアイツらは理解しているはずだ。



天使竜との闘いは短い時間なくせに

攻防のやり取りの密度が濃すぎて悠久の時のように感じてしまう。


ここまでくると俺はなんとか避けてはいるが、少しずつ俺の動きは疲弊によって鈍くなっていき、次第に剣が纏う衝撃波に体を少しずつ掠めてしまい生傷が多く血もかなり出てしまっていた。


…天使竜はこんなボロボロの相手に

興味を無くしたのか先ほどまでの繰り広げられていた攻撃が突如止んだ。

次に来るのは終わりか、それとも終焉おわりか。


(次はなんだ…?)


ラシュカたちは結界を範囲を絞って拡張していき、少しづつ移動していて、今ではもう見えないくらいには進んでいた。

これほど遠ざかれば影響は及ばないことだろう。


天使竜は先ほどまで使っていなかった翼をこれほどかいうくらい大きく広げて羽ばたく。

地面には竜巻のように砂埃がたち、視界が荒れる。


気づけば天使竜は上空まで高く飛翔していて、俺が跳んでも絶対に届かない高さにまで来ていた。


そこで口を大きく開けると、口前に魔術式を展開し始める。


『マスター!破壊の魔術ですよ!確実に殺しに来ています!』


大気中の魔素が天使竜を中心に渦巻かれる。

徐々に構築されていく魔術式は

俺個人の"死"だけではなく、

この世界そのものの消滅を感じさせる

禍々しい気配を漂わせる。


そこで俺は


『マスター…気でも狂いましたか?』


「朱音…喜べ。これで…この闘いが終わるぞ。」


『え?』


天空竜は魔術式を構築し終え、最終調整に入っている。次第に渦巻いていた魔素が再び空気中に霧散していきあとは撃つだけだとそう実感が伝わる。


「ゴォォァアァァァァア!!!!!!」


とてつもなくでかい咆哮と共に魔術式は派手に発光し、凶々しい黒い球状のものが俺を目掛けて飛んでくる。


その黒は全てを飲み込んでしまいそうな恐ろしさを秘めており、この闘いのクライマックスの材料が整った。


今まで使えなかった短刀を構え、

黒い球体に立ち塞がる。


何度も説明するが、この武器チートである

短刀の能力は「吸収」、「蓄積」、「開放」があり、非常に応用のきく素晴らしい能力である。


応用というものはただ一つの機能を本来の用途とは別に状況に合わせて変化させるだけではない。


能力の合体。それが最後の技のようだ。


短剣を構え、破壊エネルギーである黒の球体に短剣を突き刺していく。

すると一つの能力「吸収」によってエネルギーが短剣一つに吸い込まれていく。


そこにもう一つの能力「開放」を間髪入れず

「吸収」と同時に発動させる。

すると、吸い込まれたエネルギーがそのままリリースされていく。これで、「吸収」と「開放」の合体能力「反射」の完成だ。


黒い球体はそっくりそのまま天使竜に返っていき、その球体に触れた天使竜はそのまま



灰となり消滅していった。


アレクたちとの共同依頼から始まった波乱は

最終の敵が自滅という結果で勝利を収めることができ、ひと段落ついたのだった。


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転生編はまだ続きます。


これ…転生してまだ一日しか経ってないですよ?長々と伸ばしすぎましたね…もっとサクサク進む方がいいのですかね?

難しいものです。

基本この文章は深夜テンションで完成させるのが最近のルーティーンになっています。

生活習慣(主に就寝時間)は学生である自分の身を考えると直していかないとですよね…

努力努力。精進します。

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