第20話
ガソリン爆破はかなりの威力で、
吹き飛ばされたリザードマンを見ると
爆発に近かったやつほど被害は大きく、
表面の鱗が吹き飛び、柔らかい内側の肉を
抉るようにして鮮血が飛び散っている。
内臓が見えていて、断面が焼き焦げてしまっているグロいやつもいる。
平静を装ってはいるが精神的にキツいな…
転移の館時代はモンスターを切ったりはしていたが、こんな光景を見た事がなく、肉がすっぱりと切れてはじけていくグロさとは別ベクトルのものを感じる。
でもここでへばってたらダメだな。
隠密は一度姿を現したら相手の意識がこちらから別のものに移るまで発動するしても意味がない。本来なら隠密はここで無効とされるのだが、
この状況は本来を逸するうってつけの
今回はあいつらの能力を見たいからあえて全てを倒したりはしないが、この相手からしたら突然の爆破とその影響による火災は混乱するのには十分過ぎる材料なのだ。
実験としての被験者とさせてしまったことにある少しばかりの罪悪感を薄めるため、敵の総数を減らすべく短刀を構えて敵陣を駆け巡る。
俺が確実にモンスターの共通の弱点である心臓を目掛けて切り伏せたり、刺したりして、魂をこの世ではないどこかへと誘っていく。
残りの敵数が25体になったであろうところであいつらがやってきた。
〜
「すごい…こんなところに集落があったのか…こんなに規模が大きければ魔物の数も半端じゃなかったんだろうな。でも…やっぱりケイトさんがかなりの数をやっつけてくれたね。」
「あのケイトっていう人こんなに凄かったの⁈少し甘く見てたよぉ…」
突如起きた爆発がケイトさんなりの合図だと
察して僕は爆発のした場所まで移動していた。
僕とロゼアが口々に言葉をこぼし、ラシュカが読み切れない不思議な無感情でこの光景を目の当たりにした。
そこで僕の目に映ったのは、集落が炎によって侵されていて、その炎をその身に浴びながら死んでいくリザードマンの山がそこらじゅうにあった。
「私の魔法…使わなかった…」
ラシュカはケイトさんが俺たちを試すために
わざと敵の数を調整しているのではと考察しており、その中ではラシュカの魔法を見てみたいと言いだすはずだと思っていたらしい。
しかしこの惨状にさらに追い討ちをかけることは要らないことだと悟り、
少し期待から外れてしまう。
(実力があって頭も結構キレるんだろうけどね…自分の欲に勝てないのかな…?でもちゃんと人間っぽいところがあるんだなぁ…)
欠点なんてない完全無欠な人間だったら少し神話の生物を連想してしまい、距離感が遠く感じてしまう。もし、ケイトさんにも弱点があるならそれはそれで人間味があって親しみがこめれる。
彼を見た時にラシュカの方が凄く反応していたが、彼の異様なオーラを僕も感じ取っていたのだ。
ラシュカの興味が湧くことはあまりなく、
好物である甘味ぐらいにしか楽しみがなかったと言う。そんな彼女が人に初めて興味を示したのだ。僕もあのオーラを目の当たりにしたことで、彼をチームに誘い込めるかを真剣に考えたのだ。これなら僕らの最高戦力になってくれる。そう確信していた。
そしてこの光景である。
リザードマンは元来Cランクの魔物であるはずだ。それをいとも容易く、圧倒的に倒してしまうのだから、凄まじいとしか言いようがない。
彼はDランクだと言っていたが、本当の実力はAランクすらも超えているのかもしれない。
こんな低ランク帯にいてはいけない存在。
そうだとしか思えない。
僕の目に…間違いはなかった。
〜
「ほれ!早く倒さなきゃ多勢に無勢だぞー!」
現在、俺は戦闘中であるアレクを見やる。
(案外…というかラノベよろしく結構強いな。)
今はまだ外に出たてであまり戦闘に慣れていないが場数を踏んでいくと、いつかに急成長し、世界的に有名な冒険者になっていくところまで見えてしまう。ただの妄想なのだが。
慣れていないとはいえ剣先はあまりブレておらず、動きもそれなりにいい。
楽には生きてこなかったんだろうな…そう感じる。
というかラシュカが魔法を発動させようとしてないや…ピンチの時にしか使わないのか…?いや、俺の炎のせいで発動する意味がなくなってしまっているのか…?少し失敗だな…
残り20体。減りが芳しくない。
俺が出れば問題はないのだが、あいつらがそれをさせてくれない。自力で突破したいらしい。
しかし、目の前の人を俺が見殺しにするなんてことはない。この体の信念でもあれば、
俺は地球にいた頃からのお人好しなのだ。
車には負けたけど、今は違う。
絶対に死なせない。
ラシュカを守っていたロゼアはアレクがリザードマン多数と対峙していることでラシュカの魔法がアレクに当たってしまうため、動けなかったラシュカから一度離れ、アレクの元へ向かう。
ラシュカは1人でも動けるのか…
なんて感心も泡となって散る。
小規模の魔法を駆使してなんとか敵を倒していく。
だか、彼女は背後からの敵に気付いていない。
それを察した俺は隠密を解除し、
彼女の元へ走りだす。
「今度は死なせねぇんだよ!」
間に合わない。が、最後の抵抗だ。
手に持った短刀の刃先をリザードマンに向けて、大きく振りかぶる。
「おらぁ!」
と大きく掛け声を上げたその短刀は放物線を描き、なんとか彼女の背後にいたリザードマンの首筋に刺さる。
突如何かが空を切る音とリザードマンの悲鳴が同時に聞こえたラシュカは目を見開きながらこちらを見る。
状況を理解するのに数瞬の時が流れて、
彼女の口が開く。
「貴方は…期待以上…凄い…」
「当たり前だ。早く戦うぞ。」
感嘆した彼女の意識を再び戦場に持ってかせて、俺は投げた短刀の回収に向かう。
その時、突如脳に信号が走り、言葉が浮き上がる。
『マスター。称号「禁忌の大罪"傲慢"」を解放致しました。』
朱音さん。
俺はまた何か物騒なものを手に入れてしまったのか…?
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