第21話
『少し語弊がありますね。大罪の称号はもともとマスターが地球で生を授かった時点でマスターの中にあり続けた能力です。ですが、転移や、転生を経験して何度か"リセット"が働いていて未取得になっている
まるでゲームだな。難しい言葉で言われたが、つまるところ、
「もともと持っていたのが一度なくなっていて、たまたま今回もう一度ゲットできた」
と言うわけだ。
まぁ、あんな簡単なことでゲットできるのは
いささか不思議なものだが、
「小さな偶然だろうと必然は生まれる」なんて考えを教えてくれた先輩が昔いたが、
これはその考えを体感する貴重な例だな。
閑話休題。
見た感じだとどうも戦況は良くなさそうだ。
アレクとロゼアがなんとかリザードマンに
傷を与えてはいるが、致命傷にさせきれていない。このままの状況が続けばあいつらは死んでしまうだろう。
ラシュカの魔法は中距離、長距離における範囲効果魔法が一番の得意らしく、繊細な軌道は苦手とのこと。リザードマンにアレクたちが近いことでなかなか発動に踏み切れていないと言った具合だ。
観戦状態に入っていた俺は少し焦ってきた。
あいつらが死んでしまったらどうなってしまうのだろう。
様々な思考が頭をよぎる。
その数多の考えの中で1番頭から離れないものが
(これであいつらが死んだら何かのバランスが崩れる。)
確信にまでは至らなかったが、直感がそう告げてくる。
その何かの正体がわからないもどかしさを腹に抱えて、再び活動を始める。
木の枝を飛び交い徐々にアレクたちに近づいていく。
ラシュカの近くには結界を張ってあるらしいから単独にしても問題ないだろう。
それならあいつらも入れて完全防御で圧倒できるのでは?と疑問に思って聞いてみると
「この結界は…私の唯一の結界で…外からも中からも攻撃ができなくなっちゃう。だから戦いには…不向き…」
とのこと。確かに内部の人間が攻撃できなければ外部の奴らが数を増やして結界を囲んでしまえば四面楚歌の完成だ。そうなったら絶望しか残らないためやらないのだろう。
アレクとロゼアにできるだけ近づくが、
隠密を発動しているから敵からも味方からも認識されない。
奮闘しているように見えるがやはり押されている。モンスターとの戦いの経験が乏しいのだろう。
あいつらと意思の疎通を図ることができないのが唯一残る不安だが、今はもうしょうがない。まぁ、これを外すことなんてないのだが。
短刀の能力は魔力、生命エネルギーを吸収、蓄積、開放ができると言うものだ。
そのうちの「解放」は万能な能力である。
吸収、蓄積をしなければ発動しないが、
魔力の塊に短刀を通して術式を送り込むことで魔力の回復を仲間に施したり、攻撃魔法にしたり、ものに魔力を纏わせることができたりとなにかと万能な能力だ。
魔力を放ったりする際には任意でスピード、大きさ、軌道を変えることができ、今回の場合はそれが大きく活きる。
木の影から身を出して、短刀の刃先をリザードマンに向ける。
少し抑えめな発光が起き、短刀の周りに術式が浮き出てくる。今回は攻撃魔法の術式にした。属性はつけないでおく。属性耐性をもつやつでもいたらたまったものではない。
狙いは勿論あいつらの周りにいる奴らで、
スピードを上げて、なるべく口径を小さくする。
術式の設定が終わり魔法を発動する刹那。
抑えめだった光は突如爆発したように大きく轟きながら輝く。
その光は隠密さえも貫通するほどで、
絶対的な存在感を持つ光にアレクも、ロゼアも、その周りにいたリザードマンたちが一斉に目を奪われる。
その瞬間唐突に数々の光が短刀から打ち出され、リザードマンにダメージを与えていく。
首筋に打たれたり、横なぎのようにして足を切ったりと相手のやられ方は様々だ。
この「解放」は、一度術式の設定が完了すれば、設定の変更がない限り、ラグがほぼゼロに近いスピードで速射が可能であるという武器チートの名を体現した短距離兼長距離に対応できる最高の短刀である。
威力もお墨付きで次々にリザードマンは
倒れていく。しかしそれは殺したわけではなくあくまで倒しているだけで、体が回復するしたら再び動けるようになるであろう。まぁアレクたちにトドメは刺すのだろうけど。
これで俺らの依頼は過大な戦績を得て終了した。
…はずだった。
ゴォォォォォン!!!!!!
突如轟音が鳴り響き、辺りの木々が突如薙ぎ倒される。
意識しなければ気配は辿れないことが仇となった。その轟音の正体は厳つい筋肉に覆われ、片手には俺らの背丈よりもでかい大剣を担いだ今までの比ではないほどのデカさを誇るリザードマンが現れた。
アレクたちが直感と敵から発せられる圧倒的な威圧感から悟る。
奴はボスで絶対に勝てないと。
…先程の説明に少し不備があった。
ボスは、リザードマンではなかった。
背中には大きな翼を広げられている。
あいつはリザードマンではなく、その上位種。
「下位」などついているが、
これから俺たちは神話級の相手をすることになったようだ。
呪いがこれほどまでに厄介なものだと思っていなかった自分を呪ってしまいそうだ。
--------------------------
前回のコメントで「大罪への課程が簡単すぎる」とご指摘いただいたのでこの話の冒頭はそれについての説明を入れております。
またこのようなご指摘があれば、
ぜひコメントしていただけるとより良いものを書けますので、ご協力いただけると幸いです。
この作品を読んでいただきありがとうございます。ぜひ、これからも読んでいってもらえると僕も、この作品も嬉しく思えます。
この執筆活動はあくまで自分の趣味なので、これに打ち込める時間は、やらなければならないことよりもやっぱり少なくなってしまいます。ですが、これは自分なりに努力して創っている作品ですので、時に温かく、時に厳しく時に楽しく見ていっていただけることが僕にとってこの上ない執筆活動の励みになります。
長々とすみません。
改めて読んでいただきありがとうございます。
これは、下手な打ち切り漫画とかではありませんのでこんなあとがきを書いていっても続きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます