第17話
ギルドにはいつも通りの人の多さがある。
酒を飲み馬鹿騒ぎをする人、テーブルを囲いこれからに着いて話し合うチーム、新人をいびる先輩。
あれ?新人いびりが起きてるのかこれ?
ケイトはそんなことは我関せずを貫いていたから気にしていなかったのか…
新人たちは3人のチームで、リーダーのような爽やかイケメンの印象を持つ男と魔力量が異様に強く、どんなことにも無関心でありそうなクール?そうな美少女と、男の方を見て目にハートを作っている無邪気そうな美少女たちだった。
(典型的なラノベ主人公のパーティーじゃね?あれは…)
日本人のラノベオタクが遠目に見たら絶対に価値をそろえていうことだろう。
あっ先輩冒険者…ローガンさんが転ばされた…たしか彼は中堅のC級の中でもB級に最も近い人で有名だったはずだ。酒癖が悪いとこもあるが、C級上位に相応しい体つきをしておりそれを軽々転ばした主人公くん(命名)はかなりの実力者なのだろう。
あの動きは何か人為的なものではない感覚がしたのできっとスキルでも使ったのだろう。みんなはそれに気づいてなさそうなのだが。
クールそうな美少女は呆れたようにため息をつき、無邪気な美少女は「すごいっ!かっこいいぃ…」と目をハートにしていた。
あれがわざとつくったあざとさではなく、
素での彼女なのだろう。
そんな光景を尻目に見つつ真顔で依頼掲示板をながめていた。
(俺は関係ないからな。)
俺がいつもやっているのは薬草採取だ。
これなら人気もあまりないし平和だしな。
ケイトは本来あまり無駄な血を見たくない性格で、平和な国日本で育った俺の常識とも当てはまる。まぁ、魔物は別なのだが。
この一つで二つの魂の中で、互いが当たり前だと思っている強い信念だけは貫くこととした。
その一つこそ「無闇に人に暴力を振るわない。」というものがある。まぁ、その続きに「本当にやらなねばいけない、今生の目標達成する夢が潰えるのなら…その時は殺す。」
そうでもしなければ俺は聖人になってることだろう。聖人が悪人に殺される。そんなことがないようにすることも大事だ。そもそも俺は聖人なんて名乗れるわけもないのだが。
薬草採取だけでは資金繰りが難しい。
よくあれだけの少ない金で生活していたものだ。だからそこにプラスアルファして追加の依頼でも受けておこう。
「そうなるとダンジョンもいいし、周辺の森でゴブリン掃討するのもありだな…」
熟考し、思考の沼に沈んでいく。
「お前見ねぇ顔だな!こんなところにお前みたいな貧弱者が来ない方が身のためだぜ?」
先輩の声すら聞こえないほど。
「おい!なに無視しやがんだよ!」
力強く肩を握られ身をねじってローガンさんの方に顔を向ける。
「あっ…俺でしたか?すみません考え事をしていて…」
気づいていなかったのが不幸だな。
ここは素直に謝るのが吉だろう。
「俺様に気づかねぇとはいい度胸だ…」
先輩は酒で酔っているのだろう。
すぐに激昂し、殴りかかろうとする。
「何をやってるんですか!!!!!!」
突如大きな声が俺らの耳をつんざく。
叫び声の犯人はギルドの受付嬢のようだ。
唐突な叫び声は先輩を驚かせるぐらいには充分すぎなほどだ。拳を上げた段階で思わず手を止める。
その瞬間にさっきのイケメン君が俺の前に立ち、再び先輩を転ばした。
そんなことをせずとも一発殴られときゃああっちは満足していたろうに…不満しか溜まってないであろうその不機嫌さと恥ずかしさを混ぜ合わせた負の感情を露わにしていて、
なんかワナワナと震えている。
あっ恥ずかしそうに走っていちゃった…
少し気の毒に思えたが、下手に干渉するのもリスクがあるためそもそも関わらないのが世の常だ。
気を取り直して再び依頼掲示板に視線を変えたら…
「ねぇ君。一緒に冒険しないかい?」
爽やかイケメン君に話しかけられているのだった。これはめんどくさくなりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます