第16話
適応が早い。そう自覚をせざるを得ないほどのスピードで俺は世界について知ることができた。
ケイトが前から温めていた知識もあるが、
この魂が何者かによって真実へのある程度への手繰り寄せをしているような得体の知れないものに自分の情報を書き換えられる気持ち悪さは恐ろしいものだった。
まぁ、その奇妙な感覚をどうにかすることは出来なさそうなので無視していくが。
そんなことは今後どうにかなっていくことを望む。
〜
頭の中でスキルボードと唱えると、
完全に無の場所から突如手持ちサイズの
板が現れた。
「…これって完全にスマホだよな。」
前前世のものと何かしらの因果関係があるのかもしれない。
スキルボードは縁が黒くシンプルなデザインで手のひらより少し大きいほど。片手だけで持てるほど軽い。電源ボタンのようなものはないが、ホームボタンのようなものがある。
今の画面はまだ真っ暗で何処かしらを触れば起動しそうだというのは地球での生活からの常識なのか。
「ホームボタンくらいしか押せるものもなさそうだよな…」
恐る恐るホームボタン(命名)に指を触れさせる。すると黒一色だった画面が色づき始め、光が灯る。
《スキルボード》9:37 残量BP…200
〈能力項目〉+or− 可能
筋力 - 130
敏捷力 - 190
耐久力 - 160
知力 - 300
魅力 - 【呪】
武力 - 165
魔力 - 600
潜在力 - 無限
(解凍済みのみ)
〈他写機能〉
・干渉機能
画面をスクロールし終える。
「現在の時間が書かれているのはスマホっぽいな…魔力の数値が異様に高いな。これは他の人との能力値の比較が欲しくなるな。あと他写機能ってなんだよ?他人に干渉できるっぽいが、下手に干渉するのも問題だろうし…あぁっ!気になることしかない!?」
一気に独り言をぼやいたって何かわかるわけでもなく、頭を悩ませる問題が多くなってしまった。
『すみません。そのスキルに関しての情報を持ち合わせておりません…』
朱音も知らないとなると迂闊には触れない。
そのままスキルツリーをそっと閉じたのだった。
そのあと支度やら腹ごしらえやらを済ませて昼過ぎに部屋を出る。目標は冒険者ギルドだ。服装やらを買い替える必要がなくなったのはかなりのアドバンテージだ。武器なんかもアイテムボックスに収納していたことも幸いだった。
昼過ぎの気温が1日の中で最高に達するであろう時間帯。人でごった返している街道を歩く。街並みはラノベによくある中世のヨーロッパ風で、イギリスのカッスル・クーム村のような石造りの建物が立ち並んでいる。
装備品は怪しくならないように「転移の館」で初めて見つけて愛着の沸いた、軽く頑丈な素材でできたチェストプレートに、籠手をつけて短剣を携えたthe冒険者スタイルだ。
これくらいなら周りにいっぱいいるからな!
ところで、ハイエルフは金髪が多いと聞いたことがあるのだが、残念ながら俺は少し目が吸い込まれそうな美しい黒さを持った髪がまばらに映る赤髪だ。ケイトの記憶を手繰り寄せるとやはり金髪以外の髪色は異質なものらしい。しかし、長命な種族であることに変わりはない。20代まで成長し、300年はその若々しい容姿を保つことができるらしい。
これもまた都合がいい。
今生の目標は「転移の館」に戻り、光と共に生きていくことだ。
この体で戻るもよし、別の方法を使うもよしだ。
このケイトの体は魔力量が他の能力と比べてぶっちぎりに多いところが素晴らしい。しかし、この体で転移の館の柵をくぐれるのか。そこが課題なのである。
転移の館は魂の情報を記憶して所有者が許可するものだけを判断して結界を通すか決めることができるらしい。しかし、魂は覚醒前はただのハイエルフ「ケイト」なのだ。
「ケイト」の魂と「多田晃」の魂が入り組んでいる。そんな可能性すらある。
そこを懸念すると、やはり禁術を使うのか…と思う。禁術は朱音が教えてくれたのだが、生憎魔術式に使う材料が希少すぎる。
転移の館には揃っていたのだが、それは大賢者の研究物資だったりしたのであろう。
それを根性で集めるとなるとかなり時間を要する。だからハイエルフは都合がいいのだ。
ちなみに俺が今いるこの国は、
転移の館のあるルニシア王国の地図を見ると真反対である「アビルスター共和国」という国の国都の隣街「アイルスタン=シィ=カイン」という街だ。ちなみにカインというのは現領主の名前だったりする。
領主が代替わりするたびに町の名前が変わるのだから地図制作が盛んに行われていたりする。
ケイトの情報を少しでも思い出そうと奮闘していたらいつのまにかギルド前まで着いていたようだ。
営業時間は空きっぱなしの年季の入っていて貫禄の見えるドアの敷居を新しい魂が踏みしめたのだった。
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タイトル詐欺とは言わせません。(ちゃんと戻れる…はずですので。)(強い意志)
あと、更新がなければその日は機材がタヒんでいたと思ってください。すみません。
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