II章
第15話
うっ…ここは何処だ?
目が覚めると朝日が差し込む部屋の中、
俺は知らない天井を見据え、ベットに倒れていた。
「ってデジャヴを感じるな…」
転移の時も同じような状況だったな。
…くっ、頭が痛いな。しかも酔ってるってわけでもないのに酔ってるような錯覚を覚える。
魂が覚醒して、塞ぎ込まれていた記憶が元に戻っていく。
頭の中でこの体の記憶と転生前の記憶が混ざり合っていく。
2つの人生を混ぜ込んだ脳は普通の人生を歩んでいる人にはわからない酩酊感が長く続いた。
あ〜思い出してきた…
俺はケイトという名前で、年齢は20歳。
種族は人間族だと周りから認識されているが、本当はハイエルフ族だ。しかし、ハイエルフ族といっても森から抜け出した逃亡者だが。
耳は少し尖っていて、赤毛の混じった黒髪で
顔は中の上いくかいかないかぐらい。
少しは端正な顔立ちだが転生前の記憶が入り込んでくるまで、この顔が醜悪なものだと思って自信がなかったんだ。
まぁ、魂の覚醒によって俺の顔とケイトの顔がそれとなく上手く混ざっているから
前の体よりも少し違ったものだ。
耳はほんの少しだけ尖っているだけで、
普通の人間にもよくいるようなぐらいだ。
逃亡者なため身内はおらず、自身を醜悪と思い込んでいたため自信がなく影を薄くして生活していたため、町人などにあまり認識されていない。
好都合だ。これなら魂が覚醒したことに気づく人なんていないだろう。
少し皮肉めいた考えに苦笑する。
「さぁて、今日も頑張るかぁ…」
俺は一応冒険者ギルドに所属していて、
冒険者を生業に生きている。
ランクは下から3番目のDランクという微妙な具合だ。中堅者はその上のCランク以上と言われてお り、最高ランクはSランクと言われている。ランクは低い方からF・E・D・C・B・A・Sと分かれている。ラノベとかでよくあるやつだな。
…服もすごいボロボロだな…
服を買い替えようにも金を使ってしまったら
宿代が払えなくなったりして、不手際があるし…
『お久しぶりです。晃様。いえ、こちらではマスター・ケイト様。』
わっ…と、びっくりした。
「その声は朱音か?」
『正解です。』
俺のナビゲーター役として前世の俺についていた朱音が今世でもいてくれるのは心強いな。
『マスターは服装の問題に頭を悩まされているのですね。』
「まぁ、それもだけど全体的にお金に困ってるんだよなぁ。」
『その調子だと気づかれていないのですか?』
「何に?」
『説明いたします。マスターの魂が覚醒したことによって、前世の記憶はもちろん私やスキルも全て受け継いでいるのです。スキルは一部しかまだ使えないようになってはいますがね。』
「それになんの関係が…ってアイテムボックスか!」
『首肯します。前世の時に色々なものを入れてましたよね?その中には衣服も入っています。それを受け継いでいるので当面困らないかと。』
アイテムボックスが使えるのならかなり生活が楽になるぞ。
「って、一部のスキルしか使えないのか?」
『はい。「スキルツリー」の効果で見ることができますが、確認いたしますか?』
「確認をしたい。見せてくれ。」
『承知いたしました。』
〈ケイト〉(20)
種族…ハイエルフ
レベル…17
称号
「命知らずの転移者」「冬島光の夫」「結婚者」「禁忌に触れた愚者」「運命に外れるもの」「命を投げ出した転生者」「自由のための翼」
スキル
・無限の可能性(完全ユニーク)
・ナビゲーター(固有名「朱音」)
・アイテムボックス
・スキルツリー
・言語理解(出力・聴取)
・鑑定
・身体能力向上
・我流実践剣術
・我流実践格闘術
・隠蔽
・隠密
・魔法の心得
・魔力循環効率化
・全魔法適正(中)
(解凍済みのみ)
呪い
・魅了の呪い
・波乱の呪い
……なんか呪いがついているのだが。
『転生者としての呪いですね。』
そういう運命らしい。
一度呪いは頭の中の隅に置いておくことにした。
それ以外は1人で生きていくためには十分過ぎるほどの特典でよかった。
「次はスキルツリーを弄ってくか…」
頭の中でスキルツリーと唱え、スキルを発動するのだった。
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