第12話
俺は、彼女の
朱音は彼女特有のユニークスキルはこの世界に初めてのものだから情報がなく、どんなものかわからないという未知への不安を話していたこともあった。
『…晃様。光様のユニークスキルの詳細が分かりました。』
そんな不安を隠しきれていないまま朱音は原因をより明確にしていく。
「わかったのか⁉︎」
『光様の容態も良くないため簡潔に申し上げます。…光様のスキルは「星属性」のもので、周囲の魔素を増幅、吸収する能力といった能力で、スキル自体のランクは世界中で類を見ないほどの超高等スキルです。』
星属性…魔素による強化魔法のようなものだったよな…それの最上位クラスか、なるほど…
「…最近の聖魔の行進のせいで通常より増えた魔素が光の周りで増大されて、それを過剰に吸収しすぎているってことか…」
仮説は確信に変わった。
『はい。こればっかりは対処ができません…聖魔の行進が収まることが早まることを祈るしか…いや、この量の魔素をあと2日ほど当たってしまったら治すことも厳しくなっていくかと…』
ここは決断を早くしなければならない。
…はっきりと言ってしまうが、まだ打開策は見つかっていない。だから決断をすることに困っているのだが。
明日までくらいに決断を固めなければ彼女は死ぬ。魔力中毒は一度治る見込みが潰えると二度と治すことができなくなり、最悪の場合魂の浄化、よくて植物状態が永遠にだ。ほぼ確定死亡演出まっしぐらってやつだ。
…一応この状況を未来の俺に託す方法もある。朱音が俺らにもしもの時にがあったら、ということを見越して教えてくれた…いわゆる禁術ってやつが。
「でも光に負担がかかる可能性があるからなぁ…」
禁術と言っているのも術を行使したあとの代償があるのだ。可能性は五分五分なのだが被験者と術者のどちらかに想像することがし難いような対価を取られてしまうこととなる。
しかし、ほっといて確実に死亡をまつ状態にさせてしまうのは俺が絶対に許したくない状況だ。少しでもの可能性に賭けるのも…でも…
そこまで考えた時不意に、衰弱した彼女が口を開く。
「何を奥手になってるのかなぁ…私…を助けようとしてくれてるのでしょう…?その気概を決断にもステ振りしておけばよかったのに…」
ステ振りなんて彼女がいうことはないと思ってたのにこんな状況なのに肩透かしにあってしまうな…しかし、彼女も永くない。もう苦しそうに意識を保っている。
…彼女がこんなに頑張っているんだ。その頑張りに応える義務が俺にはある。そう思うと少し決意が漲った気がした。
「…やっぱり光には敵わないなぁ…光。君が術の対価に侵されるかもしれない。でも僕は君を死なせたくないんだよ。こんな我儘な俺は最低かもしれない。でも、君が死ぬことを考えたらきっと我儘も言っとくべきだったなんて後悔するだろう。…新しく生きているこの世界で後悔したくないんだ。こんな俺のエゴを君は…受け止めてくれるかい?」
彼女は最後の力を振り絞ってはにかみ、頷いてくれた。
「…朱音。」
『承知いたしました。マスター。』
俺が近くの魔素を吸収し始める。しかしこの周りの魔素の濃度が変わらないため、彼女の負担は変わらないものだった。俺が魔素を使って濃度を薄め、負担を軽減させるということも一度は頭をよぎってはいた。しかしこのこの状況を鑑みて俺には、いやこの世界の者ではできないのだと悟った。禁術はその名に相応しく、俺はユニークスキル「無限の可能性」のおかげで使えているが、普通自身の魂の消滅を代償としたりなど無理難題なことである。魂が消滅するほどのエネルギーはこの星からの強いエネルギー体である魔素を大量に消費することでギリギリ使えるのだが、その消費量では屁にも及ばないようだ。
たっぷりの魔素を吸収した俺はそれを一点に集め、光に向かって円状に放ち、途中で固定させる。その円を基盤として朱音が情報をまとめ上げ魔術式を成り立ててゆく。
ここまでは問題はない。この勢いなら成功するだろう。
「光、少し長い別れかもしれないけど君を絶対助ける。待ってろよ。」
彼女にそう声をかけて、練り終わった魔術式を俺は長々しい詠唱した後、光に向かって囁くのだった。
「またな。」
そう再開の言葉を残して。
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