第11話

 結婚…といってもここには教会なんてものがない。だから俺らの「結婚」は形ばかりなのだが、それでも、その形だけでも、胸が温まる。


 しかし、結婚という肩書きを得たところで、だ。生活面で何か変わったということの方が少ない。数少ない点を挙げるとしたら互いからのスキンシップが増えた。それと、結婚の流れになった時に朱音に、

『…お二方お熱いところ失礼します。晃様は称号「冬島光の夫」を、光様は「多田晃の嫁」を共通として「結婚者」を取得いたしました。』

 と言われて、称号が増えたということだけだ。朱音曰く、この世界では浮気がなくなるようにと、スキルや称号を作った何かが設定したものだ。しかし、この世界では一夫多妻制が広く常識として広まっている。まぁ、妻たちの了承を得たらいいってことらしい。

 さらに付け足しで、本来なら教会でしかこの称号を手に入れることができないが、この場に教会がないため特殊条件で発現したらしい。…ご都合主義ってやつか。


 スキンシップが増えたが…ラブラブはしてないぞ!?あーんもしてないしちゃんと外は危険だって分かってるから弁えてるし…


 少しボディータッチが増えてハグしたりしてるくらいだ。


 今この時が幸せなのだ。


 互いが感謝と愛の言葉を交わし、互いに譲り合い、互いが互いを求める。こんな嬉しいことはない。


 しかし、異世界だろうと


 結婚してからさらに3年後。


 俺はここはやはり


 とある日に俺が日課のトレーニングをこなしていると、

『マスター今日から前世界基準で一週間ほど、周囲の魔素が激増する「聖魔の行進」が始まります。』


 朱音から一つわからない単語が聞こえる。


「聖魔の行進?」


『「聖魔の行進」とは、50年に一度この世に存在する魔王軍と聖王軍が激突する際に発生する、相反した属性の魔導がぶつかり、魔素がとてつもなく多く、広い地域に分散されるものです。』


 魔素というのは高密度のエネルギーで基本は空気と混ざっている。この異世界の自然界に特別に確立された存在である。この魔素を取り入れることで術者は魔法をより強いものにランクアップさせ打つことができるし、魔物だったら皮膚から魔素を吸収し、強化することができる。もちろんその強化の割合は魔素の量と密度に比例する。


 今年はそんなエネルギー体が高い密度で空気を漂うのだから、ただでさえ混沌カオスな館周りがさらに獰猛な奴らが溢れるようなえげつない空間になってしまいそうだ。あいつらの鳴き声うるさくなんのかなぁ…


『魔素は通称「天星の闇光」と呼ばれていて、この星のエネルギーの半数ほどは魔素が基盤となっているエネルギーが使われているらしく、魔素だけの魔術の属性はユニーク属性で、「星属性」の魔法があります。』


 そうなのか…研究でいろんなユニーク属性の魔法を究めてきたが、星属性は調べることができていなかった。まぁ、初耳だったから調べるなんてこともできなかったんだが。


 そんなことを話しながら魔物を狩っていく。

 …少し倒しづらくなっている。さっき話していた魔物の強化がされているっぽいな。


 そこから1時間ほど経つと、朱音が


『晃様!!今すぐ館に戻ってください!!光様の状態が危ないです!!』


 なっ…!どういうことだ⁉︎

 全力で館に戻る。朱音がいうには光の部屋にいるらしい。

 …光の部屋の前に来るととてつもない魔力量を感じる。遠くからだと感じることができないほど圧縮されて力を認識ができていなかったのだろう。


 何事かと思いドアを開けると…


 光が床にうなされながら倒れていた。

 俺はすぐに光の元に行き、光を抱き寄せる。

「っ…!光!」

 凄く呼吸が荒い。顔が真っ赤で汗が吹き出ている。いつもの明るく、少しだけの臆病さを持ち合わせた姿ではなく、今にも消えて無くなってしまいそうなほどの弱々しさが見て取れる。


『これは…魔素中毒です…』


 魔素中毒…調べた時にでてきたことがある。

 普段魔素の少ない環境で生活しているものがいきなり多大な魔素を受けた時に出てくる中毒症状だ。


「どうしてだ!この館には魔素が十分回っているじゃないか!」


 この館には魔力循環器能力があるため自然と魔素も多くあるはずだ。

 通常の空気中の魔素濃度が高いはずだ。


『…理由を突き止めました。原因は光様のユニークスキルにありました。』


 少し俺は考えて、思い出す。彼女の能力スキルのことを…

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