第4話
光さんが何か作ってくると言って体感2時間半ほどが経った。彼女を待っている間に立ち上がれるほどまで回復が出来た。少し遅いことが気がかりで少しふらつきながら歩いて、ドアに手をかける。
ドアを開けるとちょうどお盆をもって光さんが佇んでいた。
「あっ、動けるようになったんだね!」
「あぁ。こっちは平気になってきたよ。遅かったけど大丈夫だった?」
「う、うん!初めて見る食材とかが置いてあって…でもどれが食べれるとかは教えてもらったから大丈夫だよ!私も食べてみたから!」
「ありがとう。…って誰に教わったの?」
この家に誰かが住んでいるのか?それなら少し警戒をしなければいけないな。…出会って間もないのに光さんに気を許しちゃってるのか…すごいお人好しだなぁ俺…
「ちっ違うよぉ…「朱音」っていう女の人が心の中に直接話しかけてくれてるような感じで…ってあれ?知ってると思ってた…」
朱音?…あ!俺がつけた固有名?じゃん!
あれ?なんで光さんが知ってるんだ?
『お応えします。私はもともと晃様の称号「命知らずの転生者」の称号効果の一つで、「主サポート型成長可能思考分離回路機能」という能力です。転生した際に授かった能力は基本モード・ユニークという特定個体限定及び譲渡型スキルで、二人同時に得ることのないスキルなのですが、光さんのスキル「感覚共有」により光さんにも「主サポート型成長可能分離機能」が共有されているという極めて稀なケースとなっております。…開示できる情報は以上です。』
ほぇ…「感覚共有」かぁ…なんとも応用力の高いスキルなことで…
色々なことができるな。
「それって俺の持ってるスキルとかも全て共有できるのか?」
「それはね出来なさそうだったよ。なんでも、『極上の呪い』っていうのが私の中にあってそれが共有をさせてくれないの。」
「そうなのか…これは使えるな…」
雑談に興じていたらいつのまにかご飯が少し冷めていた。お粥を作ってくれていたらしい。この世界にも米、もしくは米のような食物があるというなら嬉しいな。異世界で食べれなくて日本食が恋しいなんていう話も読んだことあるからな。そんな思考を頭の中で回転させつつゆっくり食べながら、光さんと朱音に色々なことを教えてもらった。
この世界が改めて「異世界」であることや、
光さんのスキル、その詳細、逆に俺の能力の詳細なんかを丁寧に朱音が教えてくれる。
基本的に俺は基礎ステータスとして、光さんはスキルとして、「言語理解」を持っているらしく、世界中どこでも話せるそうだ。
これで少しばかり安心だった。
あと、俺はずっと転生と言っていたが朱音に『これは転生ではなく、転移の部類なんですよぉ…本当はもう少し違う形ですけどまぁ、大体は転移という形のはずでの異世界への介入となっています。』と訂正されてしまった。
恥ずかしい。
装備は館の地下に綺麗に置かれていて、
朱音によると『大賢者さまの置き土産、らしいです。』と言っていたので、少し躊躇いながらも感謝して袖に腕を通す。
俺は高校入ってからずっときてる物とほとんど類似しているワイシャツと、頑丈な革でできたジーンズを着て、その上にとても暗い黒のコートを羽織っている。
効果は、少しばかり「隠密能力」が高まる。という物だった。
光さんは、教会の人が来ていそうな物で、しかし、旅人が来ていそうなラフな物であった。それは白を基調とした物で、赤色の意匠が施されており、とても華やかな物だった。
あとは館にあった綺麗でよくものが切れそうな剣と、不思議な感覚のする短刀を腰に携えて玄関の扉のドアノブを回したのだった。
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