第2話

 前回は…助けようとしてはねられて、気づいたら知らない天井だった。


 …一応こんな感じだもんな。


 〜


 先ほどまで朧だった意識が覚醒し、

 体をゆっくりと起こす。


 周りを見渡してみると、この家の内装はほぼ何もないといっても相応しく、12畳の部屋には、俺の使っているベッドに木製の簡素な机。あとは指で数えられるほどの本しか入っていない本棚だけだった。一応、この部屋は家の一室だということがわかる。


 その前にずっと疑問に思っていたことがある。

 俺は車に撥ねられて、良くて全身を骨折、悪くて死亡の当たり方だった。

 それなのに体には傷一つなく、むしろ先ほどまでよりも体が軽く感じる。


 ガチャリ。


 今起こっている奇妙なことへの思考の深い沼に入っている俺には、ドアが開いたことが確認できなかった。


「あっ目が覚めてる!」

「…へ?」


 急に気配を感じ取りっ体がビクッ!と揺れた。

 僕は声のする方に顔を向ける。

 そこには、先ほど僕が助けようとした女性がこちらを見て、明らかに安堵していた。

 見た目は小柄で、銀髪のクセのないストレートな髪と、人形の様に可愛らしい童顔は制服を着ていなかったら中学一年生ほどのものだと錯覚してしまう。二つの慎ましいモノは、主張は控えめだ。


「ダッ、大丈夫ですか…?」


 …心配してくれてるのか。一人暮らしで、クラスのみんなに無視をされて人に関わることなんてなかった俺からしたら新鮮な感じだな…


「案外平気ですね。撥ねられたっていうのにその傷も痛みもありませんから。逆に聞き返すようですが、そちらも大丈夫なのですか?貴方も撥ねられたので…」


「私も無傷だよ!…それと、堅苦しい敬語はいらないよ!ここは日本じゃないような雰囲気でちょっと怖いもん!せめてここにいる人とは仲良くなりたいの!!」

「わ、わかったよ…えぇと…」


「あぁ!名前言ってなかったね。私は冬島光ふゆしまひかり!よろしくね!」

「俺は多田晃。よろしく。」

 簡単な挨拶を交わし、先程の話に戻す。

「じゃあ…光さん。ここは日本じゃなさそうって言ってたけど、それって本当?」

「本当だよ。窓を見てみたけど、知らない植物とか、ツノをつけた兎とかもしいたし、トカゲみたいなでっかいナニカもいたしね…」


 おぉう…異世界転生じゃねぇかよ…

 しかもトカゲみたいなでっかいのってドラゴンじゃね?まぁいいか。


 でもまさか自分がするとは思っていなかったモノぶっちぎりのNo. 1だった異世界転生。

 まさか叶ってしまうなんてな…人生捨てたモノじゃないな。…いや、既に人生死に捨てたのか俺。


 俺はまだ、ベッドから起き上がれない状態だから外を見ることが出来ないのだが、彼女が嘘を言っている様子も、意味もない。本当のことなのだろう。


 何故かほぼ初対面の光さんのことをここまで信頼してしまっているようだ。とんだお人好しだな。俺も。


 そこまで考えていると、僕のお腹から

 ぐぅ〜と音が鳴る。


 何も食べてないからな。そりゃお腹も空いてるわな。

 恐らく異世界転生をしたのだが、

 そのきっかけとなる撥ねられたのが、昼時前で、昼食を食べれず空腹のまま飛ばされてしまったようだった。


「晃くん!何か作ってくるよ。」

「光さんありがとう。楽しみにしとくよ。」

「任せて!」


 そんな会話をしながら弾むように彼女は部屋を一度後にしていったのだった。

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