#22 約束



朝、目が覚めると、イクミはまだ僕の腕の中で寝息を立てていた。


綺麗な寝顔を眺めながら(また今日からしばらく会えないんだなぁ)と、なんともやり場のない寂しさが湧いてきたけど、(今日は、僕が寂しがったり悲しんだりして、イクミを困らせるようなことだけは無いようにしよう)と気を引き締めた。


この1年半の苦しかった時間に比べれば、どうってこと無い。

いつでもスマホで連絡出来るし、春にはまた会う約束もしてる。

何よりも、沢山「好き」って言って貰え、確かな気持ちの繋がりを感じることが出来ている。


今の僕には、これ以上を望むべきじゃない。


この数日間、イクミのお母さんの計らいで二人だけの限られた時間を夢中で楽しむことが出来た。

だから、これからしばらくは将来に向けて考えていくべきだと思う。


イクミともご両親とも「必ず迎えに行く」と約束した。

もうコレは、僕にとっての使命だ。


僕はそう決意し、まだ寝ているイクミのおっぱいをパジャマの上からそっとモミモミした。




おっぱいモミモミしても起きないので、ホッペをムニムニしたり、唇をツンツンしたりしてみた。

それでも起きないので、唇にキスして、こじ開けるように舌を口の中にねじ込むと「う~ん」と言いながら一瞬起きたと思ったら、僕の首にがっちり腕を巻きつけ抱き着いてそのまま、また寝てしまった。


寝惚けながらも僕に甘えてくれるのが妙に嬉しくて、もうしばらく寝かせてあげよう、と抱き枕になりきることにした。




それから1時間ほどしてイクミが起きた。


『おはよう』と言って、キスして舌を絡ませる。


口を離すとイクミが「する?」と聞いてくれたが、『今日は止めておこう。エッチすると名残惜しくなりそうだし、今日はイクミは移動で疲れるだろうからね』と今日はエッチ無しを提案した。


イクミも「そうだね。あんまりセックスばかりして、その為に付き合ってるみたいになるのもヤダだしね」と理解してくれた。



二人で洗面所へ行き、交代で簡単に顔を洗ってから、リビングで朝食のトーストを食べながらスマホで時刻表を調べ、帰り時間を相談した。


最寄の新幹線の駅まで在来線で30分程度なので、12時半頃にココを出て1時に電車に乗り。2時前の新幹線に乗って帰ることになった。

僕も新幹線のホームまでは送っていくことにしているので、そこまでは荷物持ちをするつもり。



ある程度話がまとまりすることが無くなると「今日はずっとギュっとしてて」と言うので、イクミを後ろからギュっと抱きしめ、時間まで過ごした。





少し早めのお昼を済ませ、予定の時間になるとタクシーを呼び、お祖父さんに挨拶をしてから出発した。


ホームで待つ間も電車に乗ってからも、ずっと手を繋いで離さなかった。


電車に乗って二人で並んで座席に座ると、イクミは僕の肩に頭をもたれ掛けた。

電車が発車すると、周りの人目を気にしながらも二人でポツポツ話をした。


「二人っきりで過ごせて楽しかったね」


『うん、高1のカップルらしからぬ過ごし方だったけど、凄い楽しかった』


「ママに感謝しないといけないね」


『うん、そうだね』


「春休みにまた会えるよね?」


『うん、約束したからね。絶対に会いに行くよ』


「うん、すっごい楽しみにしとく」


『僕も楽しみ。その時はお母さんとお父さんにもお世話なると思うから、よろしく言っておいてね』


「うん。ママもパパもアカリのことお気に入りだから、たぶん二人とも楽しみにしてると思うよ」


『えー、そうなの?』


「うん、そうだよー」






「ねぇ、アカリ」


『うん?』


「高校出て大人になったら、結婚しようね」


『うん、結婚しよう。必ず迎えに行くよ』


「うん、待ってる」


それから目的の新幹線の駅に着くまで無言のままだった。


駅に着き、乗換の改札前で見送り用の切符を1枚購入し、ホームまで上がる。

まだ時間が有ったので、ホームのベンチに座って、またポツポツ会話をした。


「家に着いたら電話するね」


『うん、電話待ってる』


「明日からも毎日電話してもいい?」


『うん。僕からも掛けるね』


「電話で話せば、寂しくないよね?」


『う~ん、そうだね。寂しくならないように、いっぱいお喋りしようね』


「うん・・・」


予定の新幹線がホームに入って来たので立ち上がって、乗り込む列に並ぶ。

イクミだけ乗り込み座席に荷物を置くと、再び僕が居るホームへ戻って来た。


イクミが泣きそうなのをガマンしているのが判った。


僕は人目もはばからずにイクミを抱きしめて

『また恋人になってくれてありがとうね! お蔭でこれから楽しいことがいっぱい待ってるよ! もし辛くなったらいつでも僕を呼んでね!』と強く言い聞かせるように話した。


イクミは鼻声で「うん、うん」と何度も頷いてくれた。


最後にイクミのオデコに自分のオデコをそっとくっ付け『愛してる、イクミ』と囁いた。



出発のアナウンスが流れたので、体を離しイクミは列車に乗り込む。

ドアが閉まって動きだし、お互い見えなくなるまで手を振りあった。



出発した列車が見えなくなるまでその場で見送り、帰ることにした。





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