#19 きっとこれが本来あるべき3人


僕の部屋に、いとしいイクミと親友のミワが顔を揃えた。

今更だけど冷静に考えると、凄い状況だぞ、これは。



イクミにしてみれば、つい最近までもう会うことも叶わないと思っていた僕と再び恋人となりこの部屋を訪れ、更にそこに散々僕のことを嫌い、いくら言って聞かせても全然改めようとしなかったミワが「アカリ~」って平気な顔して部屋に入って来るんだもん。


そしてミワにしてみても、いくらイクミに言われてもかたくなに僕の事を嫌っていたのに、イクミの知らない間に和解して、まるで自分の家かのようにこの家に馴染んでいる姿を見せるのは、多少なりとも後ろめたさがあるだろう。

ミワの性格からして、きっと気まずいに違いない。



そんな二人が抱き合っている。

イクミは再会を喜び、ミワはそんなイクミに緊張気味。

そして、そんな二人を眺め、内心興奮の僕。


あのイクミの引っ越しの日、あの時の3人がまさかこんな関係となって再び顔を揃えることになるなんて、当時誰も想像すら出来なかったと思う。




改めて、イクミに視線を向けると、柔らかい優しい笑顔だ。

母親のような、お姉さんのような、ああ、流石マイハニー、まさに天使だ・・・・


次にミワの方はと言うと、ちょっと顔赤いぞ?

なんだコイツ? 照れてるのか? おいコラ、俺のマイハニーから離れろ。くっ付きすぎだろ!




僕はおもむろにスマホを取り出し、抱き合う二人を写真に収めた。


「ちょ、なに勝手に撮ってるの!?」


『いや、マイハニーの天使の笑顔を永久保存したくて。あとミワの赤い顔が面白かったから、何かのネタに使おうと』


「はぁ!?アカリまじムカつく!」


「アカリが言ってたとおりだ・・・ミワちゃんが狂暴化してるよ・・・・」


「ち、違うのイクミ・・・普段はこんなんじゃないから・・・」


『だから言ったろ? イクミの知ってるミワの姿は空想上の人物なんだって。本当のミワは、いつもスッピンだし、人んちのベッドにブラジャートラップ仕込むし、人の中学ジャージを借りパクする様な暴れん坊なのよ』


「・・・・アカリマジコロス!絶対にコロス!ていうかスッピンは関係ないでしょ!」


そうミワがガナリ出すと、イクミがゲラゲラ馬鹿笑いしながら抱き着ているミワの背中をバシバシ叩いた。

「ヤバイ!ミワちゃんが超面白い!なにこれ!すっごいウケるんだけど!?」


イクミは、事前に僕から聞いていたミワの本性を目の当たりにして、よっぽど面白かったのか、心底嬉しそうにゲラゲラ笑っていた。


それでもミワは往生際悪く

「違うのイクミ!本当に普段はちゃんとしてるのよ!アカリがいつも怒らせるようなこと言うからなの!」と必死に取りつくろうとするも

「いいからいいから!今のミワちゃんのが面白くって超可愛いよ?」とほおずり。

ミワはイクミに終始押され気味であった。



美少女二人が、僕の部屋で抱き合い頬ずりしている・・・ああ、尊い・・・

僕も二人に挟まれ頬ずりされたい・・・




現役バレー部であるイクミに体格差で負けているミワ、ガッチリホールド&頬ずりから逃れることは出来ない。

男の僕だって、昨日一昨日と身をもって体験したんだ。発情したイクミさんはこんなもんじゃないんだかんね!


「イクミ、もう判ったから!一回離れて!苦しいよ!」

そうミワが必死に訴えるも、相手はイクミだ。

相手が嫌がれば嫌がるほど、きょうが乗るというもの。

「ぐへへへへ、ミワちゃんのおっぱいだぁ~!」


いつの間にかミワのおっぱいを揉みしだいていた。


『あ、お二人さん。僕も仲間に入れて下さい』


「いいよぉ~♪」 by天使

「ダメに決まってるでしょ!」 by猛獣



ああ、楽しいなぁ。

僕とミワだけだと、こんな楽しい空気にはならない。

やっぱりイクミは凄いな。



その後、イクミによるおっぱいモミモミ攻撃と途中参戦した僕からの脇腹コチョコチョ攻撃によりマジギレしたミワが、イクミと僕を並んで正座させてお説教し、土下座謝罪する二人をミワが写メで収めるという不測の事態が起きたものの、ようやく3人落ち着くことが出来た。


因みに土下座謝罪する二人に「アカリだけでも疲れるのに、イクミまでアカリみたいになっちゃって、マジ最悪」と言うミワは、僕のよく知る素のミワだった。



とりあえず、イクミの方からミワへ、僕たちがヨリを戻したことや、正月休みで帰省中なこと、6日までこちらに居ることなど簡単に説明し、ミワからも「アカリとヨリ戻せてよかったね。おめでと」と祝福して貰えた。



そんな感じで、3人で近況などのお喋りをしていたが、ふいにミワが

「アカリ、イクミと二人で話したいから、30分くらい席外してほしい」というので

『うん、判った。じゃぁちょっとコンビニ行ってくるわ』と席を外した。


ミワがイクミに何を語るつもりかは、知らない。

あとでイクミに確認するつもりも無い。

女同士、色々あるんだろ、と言えば安易だが、でもきっとそうなんだろう。

僕のことかもしれないし、僕には関係ない話かもしれない。




コンビニで飲み物とコンドームを購入し、まだ30分まで時間があるので、近所の公園に入り、一人でベンチに座って時間を潰すことにした。



今日の様子を見ていると、先日イクミは「今の私じゃきっとミワちゃんの力にはなれない」と言っていたが、全然そんなこと無いだろ、と思った。


イクミは、凄い。

中学の時から、自分の信念の為なら例え親友や恋人と喧嘩してでも信念を押し通す。

(そのお陰で、僕はイクミと恋人になれたし、1度別れることにもなったんだけどね)


そしてミワは、そんなイクミ相手にタジタジだった。

僕がミワに言い聞かせようとしても、ミワは反発しようとする。

気心を知れているとか、遠慮があるとかの違いかもしれないけど、今のパワーアップしたイクミなら、ミワの迷いや悩みなんて強引に引っ張っていきそうだ。


そんなことを一人で考えていたら、30分経っていたので、購入したコンドームを上着のポケットに仕舞って、家に戻ることにした。



部屋に戻ると、ミワのスマホに保存されている僕や二人で写した高校での写真なんかをやいやい騒ぎながら二人で仲良さそうに見ていた。


イクミは「これが噂のアカリの応援団長!?マジでダサいタスキ掛けてるし!」とか「何これ!?劇で執事やったの!?てかミワちゃん、執事のアカリとツーショットとか羨ましいんですけど!?」と大騒ぎで、僕が『恥ずかしいからやめて~』と泣き言を言うと、ニヤリと悪人顔したミワが「こんなのもあるよ?」と言って、僕がミワのブラジャーを装着している写メを見せやがった。




やっぱり、楽しいな。

きっと、今のこの3人の空気とか距離感が本来あるべき姿なんだろうな。

今更だけど、中学の時、お互いもっと上手くやれていれば、中学の時でもこんな関係を築けていたのかな、とか色々考えてしまう。


因みに、ブラジャー姿の僕の写メを見てもイクミは怒るどころか「これが噂のブラジャートラップ!?」と嬉しそうだった。

ミワも「しょうがないなぁ」って言って、僕たちの写真をイクミのスマホに送ってあげてた。



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