#12 親公認のカレシとスマホ
泣き止んだイクミが「アカリの行ってる高校見てみたい」と言い出した。
今日は流石に中途半端な時間になっているので、明日行くことにした。
イクミは帰省中予定は無く、元々暇で退屈していたとのことで、明日も会えることになった。
その話の流れから、スマホの連絡先の交換をしようと提案すると、イクミはスマホを持ってないとのことだった。
中学の時は僕も持っておらず高校入学と同時に購入した。
イクミも中学の時は持っていなかったが、流石に高校生になったら持っているだろうと思ったら、高校の規則が厳しく学校への持ち込みが禁止されており、だったら持ってても使う機会少ないしお金が勿体ないからと、これまで持たずに過ごしてきたそうだ。
「でも、これからはアカリと連絡取りたいし、やっぱり必要だよね!今からパパとママにお願いしに行こう!」と言い出して、僕を連れてリビングのご両親へお願いしに行くことになった。
部屋を出る前に『スマホの話をする前に、また付き合うことになったことを僕から話しをさせてほしい』とお願いすると、イクミも「わかった。任せるよ」と了承してくれた。
リビングに入ると、高梨のお父さんとお母さんはテレビを見ながらくつろいでいたので、イクミが「パパ、ママ、話があるの」と声を掛け、4人でテーブルに座った。
まずは僕から
『お休みのところ押しかけて、すみませんでした。早速なんですが、イクミさんと話し合って、もう一度交際を再開することになりました。遠距離になってしまうのでイクミさんにも寂しい思いをさせてしまいますが、将来のことをきちんと考えて、必ずイクミさんを迎えに行きます。どうか交際することをお許し下さい』
そう言って、頭を下げた。
お父さんが口を開く前に、お母さんの方から「そんな堅苦しい挨拶なんてしなくても大丈夫よ。今日のイクミ見てたらお父さんだって反対なんてしないよね?」と言って、お父さんに同意を求めた。
お父さんも「朝も言ったけど、ウチは三上くん大歓迎だからね。でも態々ケジメの為に律儀にこうやって挨拶してくれたんだよね。私も交際に反対なんてしないよ。むしろ大賛成だから、これからもイクミのことをよろしく頼むね」
そう言って、ご両親ともに交際の許可をしてくれた。
『ありがとうございます。これからも宜しくお願いします』と言ってもう一度頭を下げた。
イクミは「もう堅苦しい挨拶はいいでしょ? それよりも!パパ、ママ、私スマホが欲しい。スマホあればアカリと離れててもお喋り出来るし、ライン?とかで連絡簡単に出来るんでしょ?」と、早速両親にスマホをねだり出した。
ご両親とも購入することを了解してくれて、イクミは直ぐにでも買いに行きたいと言い出したが、元旦はどこも店が開いていないだろうと言うことで、なるべくこちらに居る間に購入することになった。
それと、お母さんから「3日に向こうに戻る予定だけど、イクミだけ延長してこっちに少し残ったら?部活は何日からだったっけ?何だったら部活も1~2日くらい休んでもいいでしょ?」と、提案してくれた。
イクミも「そうする!冬休み終わるギリギリまでこっちに居たい!」と大喜びでその提案にのっていた。
イクミはご両親の前なのに「アカリ、毎日会おうね♪」と嬉しそうに僕の腕に抱き着いてきた。
再び2階のイクミの部屋に戻り、僕のスマホを使ってスマホの機能を教えたり、どんなのを買おうかと機種を色々調べたりして時間を過ごした。
今日、イクミの家に来てからずっとスマホを仕舞っていたので気が付かなかったが、ミワからのメールや着信が大量に来ていたことにこの時気が付き、汗が噴き出てきた。
イクミとの再会で気持ちに余裕が全く無かったから、ミワのことをすっかり忘れていた。
幸いスマホに慣れていないイクミは着信履歴などに気付かなかった。
イクミが僕のスマホを使って色々な機種を物色している横で、僕は今朝のウチの親とミワのやり取りを思い出していた。
ミワはウチの親からお年玉を貰うほどに、三上家に溶け込んでいる。
いくら恋人では無いと僕が否定しても、余計な誤解を招いたり、不誠実だと言われかねない。
イクミとの交際復活は、ミワやウチの親では、イクミのご両親の様には簡単には歓迎されないだろう。
どのみち揉めるのなら、慎重に間違えないように細心の注意を払って、一番大切なイクミのことだけは必ず守らなければいけない、と覚悟を決めた。
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