#02 初恋と別れ
2年に進級すると、森田ミワと美少女コンビで有名な高梨イクミと同じクラスになった。
最初、僕の中では「コイツも森田ミワと一緒で僕のことを相当嫌っているだろう」という認識だった。
しかし、高梨イクミは2年になって早々に「三上って、まだミワちゃんのこと好きなの?でも滅茶苦茶嫌われてるよ?」とフレンドリーに話しかけてくれた。
だから僕も正直に『最初から別に好きでもなかった。罰ゲームで一番かわいいと思った子に告白したら、思いの外嫌われた。自業自得だから』と教えた。
高梨イクミは「何それ!?ウケる!」と笑ってくれた。
それからは高梨イクミとよく話すようになった。
高梨イクミは勉強が苦手で、成績が良かった僕によく勉強を教わりに僕の席まで来ていた。
恋愛の話もよくしてくれた。
周りには内緒で付き合っている彼氏がいることもこっそり教えてくれた。
僕も、最初陸上部だったけど事故のケガで続けられなくなったことを教え、脚の大きなキズ跡も見せた。
ある日、高梨イクミが僕に話してくれた。
「1年の時、ミワちゃんに告白した頃の三上のイメージって、文化部の根暗で、頭悪そうで、何でこんな奴がミワちゃんに堂々と告白してんの?バカなの?って思ってた。ミワちゃんもそういう風に言ってた」
「でも、2年になって話してみると、実は面白くて話しやすいし、頭良くて成績も良いし、文化部なのも仕方ない事情だし、1年の頃のイメージと全く逆だった」と。
僕はこの話を聞いて何だか嬉しくて、それから高梨イクミのことを密かに好意を寄せる様になっていた。
そんな2年生を過ごしていたが、秋ごろ高梨イクミが「彼氏と別れた」と教えてくれた。
オマケに「ミワちゃんとも喧嘩中」と。
僕は『何が一体どうした!?』と心配して聞いてみたら
「彼氏と別れたのも、ミワちゃんと喧嘩してるのも、三上のせいだから」と言われ、全く心当たりのなかった僕は『ええー・・・』と驚き、気の利いたことは何も言えなかった。
なぜ僕が原因なのか気になってしつこく聞いていたが、なかなか話してくれず、ようやく数日経って教えてくれた。
別れた彼氏は1年の時の僕の告白事件で僕のことを相当嫌っていたらしく、でも彼女である高梨は好意的に僕の事を色々話していて、しかもクラスでは高梨と僕がよくツルんで仲良くしていることに嫉妬して、それで二人は喧嘩になって別れたらしい。
そりゃ、彼氏の前で他の男の話題ばかりだして、しかもその男が自分の嫌いな奴なら、彼氏も怒るよな、と恋愛未経験の僕にでも判った。
更にその話を聞いた森田ミワも高梨に対して怒ったらしい。
高梨は森田ミワに、僕に対する誤解を解こうとこれまでも僕の話を色々してきたらしいが、森田ミワの僕に対するイメージは全く変わることなく、この時も高梨は「三上は悪い奴じゃない。いつまでも三上の悪口を言いふらすのは止めるべきだ」と説得しようとしたが、そこから森田ミワがムキになって、高梨も「この分からず屋!」って感じで喧嘩になったそうな。
そこまでしてくれていたことに全く気が付かずにいたことがとても申し訳無くなって『彼氏と森田ミワのところに、俺謝りにいくよ。だから仲直りしろよ』と言ったが「そんなことしなくていい。そんなことしたらまた三上が嫌われる」と言って、これ以上僕からは何も出来なくなった。
それからは高梨に迷惑を掛けるのが申し訳なくて、クラスの中でも距離を置くようにした。
でも1週間くらいで、部活中の文芸部に高梨が乗り込んできた。
『お前、部活どした!?』と尋ねると「サボった。部活に行こうと着替えてたけど、ムシャクシャして、原因の三上に問い詰めに来た」と言われた。
そして僕が何か答える前に「最近なんで避けるの!?私嫌われるようなことした!?」と大声で問い詰められた。
文芸部は男子は僕だけで、あとは2年も1年も女子だけの部だが、興奮する高梨にみんな怯えていた。
『とりあえず落ち着いてくれ。場所変えよう。ここだとみんなの迷惑になる』と言って、近くの空き教室に連れ出した。
場所を変えたせいか少し落ち着いた高梨が話してくれた。
「私は三上と仲良くするの止めたくなくて、彼氏とも別れたしミワちゃんとも喧嘩したのに、なんで三上は私を避けるの?」
『ごめん・・・僕のせいで高梨に迷惑かけたと思って、距離置いた方がいいと思ってた。高梨がそこまで僕の事大事に思ってくれてたなんて、想像すら出来てなかった。ホントにごめん』と言って、頭を下げた。
高梨の反応が無いので頭を上げると、泣きながら抱き着かれた。
女の子に抱き着かれるなんていう経験の無い僕はガチガチに固まってしまったが、ひたすら泣き続ける高梨をとにかく宥めようと何とか僕から引きはがした。
引き剥がされた高梨は泣きながら「私のカレシになって。なってくれないと許さない」と告白された。
高梨に密かに好意を寄せていたとはいえ、ここまで追い詰めてしまっていたことに罪悪感が強く素直に喜べなかったが、結局僕は付き合うことを了承した。
そして、仕方なく付き合うわけじゃないと解って欲しくて『実は僕も前から高梨のことを好きになってた。でも彼氏居たから気持ちがバレないようにしてた』と白状した。
初めて出来た彼女で判らないことが多かったけど、僕は不器用ながらも仲良く恋人として過ごした。
学校では、まだまだ僕は敵が多かったので、付き合っていることは内緒にしていた。
クラスでは元々仲良くツルんでいたので、今まで通りにしていた。
ただ、高梨は僕のことを「アカリ」と下の名前を呼び捨てするようになった。
休みの日は高梨は部活があったので、部活が終わる頃に僕の方から会いに行って、家まで送ったりしていた。
高梨の家にもよく遊びにいった。
初めてのキスも高梨の部屋だった。
クリスマスは二人でデートしたし、バレンタインも生まれて初めて家族以外からチョコを貰った。
3年になったらクラスが別れたが、それでも順調に交際を続けていた。
しかし、夏休みに高梨が転校することになった。
父親の仕事の都合で、遠くはなれた土地に引っ越すことになった。
僕はこの話を、高梨の部屋で初めてセックスをした後に聞かされた。
高梨にしてみれば、離ればなれになる前に思い出が欲しくて、思い切って行為に及んだが、僕は何も知らずに初めてのセックスで最高潮だったところに冷や水をぶっ掛けられたかの様にどん底に突き落とされた気分だった。
更に追い打ちをかけるように、高梨から別れ話を切り出された。
僕は遠距離でも何とか交際を続けたくて、思い直すように説得してみたが、高梨は頑なだった。
僕はどうしたらいいか判らなくなって、長い時間無言になってしまったが、ようやく絞り出すように『わかった。今までありがとう』と別れを了承した。
その代わりにと『引っ越す最後の日に見送るのだけはさせて欲しい。あと引っ越すまでに森田ミワとも仲直りするべきだ』と2つお願いをした。
高梨は「わかった。わがまま言ってごめん」と言って、僕のお願いを聞き入れてくれた。
高梨の引っ越しの日に、高梨の家まで行った。
この日は森田ミワも見送りに来ていた。 高梨は僕のお願いを2つとも実行してくれていた。
お世話になった高梨の母親に「三上くん、いままでありがとうね」と言われたので『こちらこそ、いつもありがとうございました』と頭を下げた。
高梨には『高梨が居たから毎日楽しかった。今までありがとうな。向こうに行ったらケガとか気をつけてね』と最後の挨拶をした。
高梨は僕に「私も凄く楽しかった。我がまま言ってごめん。アカリも元気でね」と言った。
二人とも泣くのを我慢してたが、声が震えて凄く辛かった。
その場に居た森田ミワも高梨と会話をしていたが、僕は聞かない様にした。
最後、父親が運転する車が見えなくなるまでその場で立ち尽くして高梨を見送り、家に帰った。
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