インターネットむかしばなし ロボットアニメすいたいじいさん
@Theresnosound
ロボットアニメすいたいじいさん
インターネットむかしばなし ロボットアニメすいたいじいさん
むかしむかし、たいそうへんくつなおじいさんがいました。おじいさんはいつも、きかれてもいないのに「ロボットアニメはだめになった、もっとリアルでハードでおとなむけなやつがみたい」とむらびとたちにかたるのでした。そのせいで、むらじゅうのひとにめんどうくさがられています。むらのはずれのごみやしきにこもり、おきにいりのビデオテープをなんども、なんどもみることだけが、おじいさんのたのしみでした。
ロボットアニメすいたいじいさんのとなりには、SFすいたいじいさんがすんでいました。ふたりはおたがいにおたがいのことを、えらそうでいやなやつだとおもっていたので、いつもけんかばかりしていました。
「ひとがたへいきなんておもちゃが、リアルなんてちゃんちゃらおかしい。だいたいロボットっていうのはもともと、じりつしてうごくきかいだけをいってな‥‥」
「よくいうよ。リアル? おれにいわせりゃ、タイムトラベルなんかのほうがずっとありえないね」
「そうみえるだろう。アインシュタインもわからない、ひんそうなあたまではな」
「なんだと」
ときにはつかみあいにまでなるほどでしたが、むらのひとたちはすっかりなれっこになっていました。
あるとき、ロボットアニメすいたいじいさんがいつものようにひきこもっていると、にわにひとのけはいがしました。おじいさんをたずねてくるひとなど、もうながいことなかったものですから、おかしいとおもいとびだしました。そこには、ちいさなおとこのこがいました。おじいさんがさけびます。
「こらっ、どろぼう!」
「ちがいます、ただ、きもだめしをしにきただけで」
「きもだめしなら、ひとのいえにしのびこんでいいのか? だめだよな?」
「あいつらが、いってこいって」
おとこのこがゆびさすさきをみると、こどもたちがいちもくさんににげていきました。おじいさんは、おとこのこをあわれにおもい、いいました。
「まあ、あがっていけよ。きたないけど、おちゃくらいだすよ」
「ど、どうして」
「なかにはいって、いっしょにおちゃをのんだ。ちっともこわくなかった。あのがきどもにじまんしてやりな、こぞう」
おじいさんがにやっとわらうと、おとこのこもそのねらいにきづきました。
「ありがとうございます。あと、こぞうじゃなくてフルアーマーたろうです」
「わかったわかった。よろしくな、フルアーマーたろう」
そうして、ふたりはいえのなかへはいっていきました。
いえのなかはごみだらけで、あしのふみばもありません。けれどもたなのうえだけはきれいにととのえられ、たくさんのビデオテープやプラモデルがならんでいました。
「どうした?」
フルアーマーたろうが、プラモデルのひとつをじっとみつめているので、おじいさんはきになってこえをかけました。フルアーマーたろうがこたえます。
「しょだいバンダムだなっておもって」
「わかるのか、こぞう。なかなかみどころがあるな」
「ほんでしかみたことないんですけどね。うまれるずっとまえのだし、えもふるいし」
「な、なんだって‥‥? えはふるいかもしれないが、えんしゅつはいまでもつうようするくらいだぞ。うちにビデオがある、いますぐみよう」
おじいさんはビデオデッキにビデオをさしこみ、さいせいします。いつしか、ふたりともむちゅうでみていました。いくつかのはなしをみおわると、ひがくれかけていました。
「そろそろかえります。おもしろかったです、ありがとうございました」
「だろ? いまどきのなかみのないアニメなんかより‥‥」
「それはちがうとおもいます」
このおとなしそうなフルアーマーたろうがいいかえしてきたことに、おじいさんはすこしおどろきました。フルアーマーたろうがいいます。
「いまのアニメにだって、おもしろいのはありますよ。しんかんせんがロボになるやつとか‥‥」
「でもおれ、ロボットアニメはリアルしかむりだし‥‥。ちいさなこどもがえらばれしパイロットだと、おとなはなにしてんのっておもっちゃうし‥‥」
「いいから、みてみてくださいよ。こんどブルーレイにやいてくるんで」
「DVDでたのむ。パソコンにドライブがついてるんでな」
「りょうかいです。では、また」
おじいさんは、フルアーマーたろうをみおくりました。いつもならつよくはねつけて、さいきんのロボットアニメがだめなのはきゃくのしつがおちたからだとわめきちらすところでしたが、おじいさんはそうしませんでした。ひさしぶりにひととはなして、ともだちができた、そのことがうれしかったからです。
おじいさんは、フルアーマーたろうにやいてもらったDVDをみてみました。はじめはのりきではなかったのですが、みすすめるうちにさきがきになり、きづけばあさまでかけてぜんぶみてしまいました。つぎのひ、かれはフルアーマーたろうにかんそうをかたりました。
「てつやしてぜんぶみちゃったよ‥‥。めちゃくちゃかんどうした。これはもうこどもむけをこえたな」
「こえたとかではないです。こどもむけのなかでできがいいってだけですよ」
「いうじゃねぇの、こぞう。こどもむけでできがいいといえば、これはどうだ」
というふうに、おたがいのおすすめをかしたり、かりたりしては、かんそうをいいあうのでした。
また、ほうこうせいのちがいでけんかもしました。
「だから、うでにドリルつけてどうすんだっていってんの!」
「かっこいいじゃないですか! あとてきのからだをつらぬける!」
「ひとがたへいきのアドバンテージは、てがあることなんだよ! それをつぶしてどうする!」
「じゃあてもちドリルならいいんですね!」
「それは、まあ、そうだな。でもそのドリルでなにをほるんだよ」
「お、おとしあなとか‥‥?」
「ちけいこうげきか、わるくないな」
「そんでそんで、わなにあしをとられたてきに、ドリルロケットパンチ! みたいな」
「ロケットパンチだと? あれこそひごうりのきわみだろ。よけられたらおわりだし、てをつかいすてるのももったいないし。ワイヤーでつながってるとか、うでがのびるとか、そのへんがぎりぎりゆるせるラインだ」
「でもとんでいくほうがかっこいいし‥‥。リアリティとかいいだしたら、きょだいロボットじたいありえなくないです?」
「だからこそ、だろ。うそだからこそ、すこしでもほんとうらしくあってほしいんだよ。だいたいひとがたへいきのアドバンテージはだな、ちょっかんてきなそうさせい、かんそうのよういさ、ちけいそうはせい‥‥にそくほこうはむずかしいといわれているから、へいちではあしにしこんだタイヤではしるのがベターだとはおもうが‥‥」
「もういいです、わかりましたから。じゃあ、ロケットパンチがじりつひこうして、うでまでもどってこれるってのはどうです?」
「なるほど、それはありだな。とばしたうでをビットに‥‥いや、ちかいのはシアーハートアタックか。ロボじゃないが」
「ロボットアニメいがいのこともしってたんですね」
「おれをなんだとおもってたの?」
「えっと、へんしょくへんくつじいさん?」
「ひていはできないな」
それでもさいごには、いつもふたりわらいあうのでした。
あるとき、おじいさんをたずねてきたフルアーマーたろうが、みるからにおちこんでいました。
「どうしたんだ? 何かあっただろ」
「あの、たんじょうびにかってもらったプラモ、うでが、おれちゃって‥‥。せっちゃくざいでもつかなくて」
「それ、もってきてみな。プラモなら、うでにおぼえがある」
フルアーマーたろうはめをかがやかせ、おじいさんのほうをみました。そしていえまではしっていき、すぐにもどってきました。そのてには、うでのおれたロボットのプラモデルがにぎられていました。
「こぞう、よくみとけよ。まずあなをあけて、そこにこのしんちゅうせんをだな‥‥」
せっちゃくざいがかたまると、すっかりもとどおり、うごかせるようになっていました。
「すっげー! ありがとうございます!」
「すごいだろ」
おじいさんが、とくいげにいいました。
おじいさんは、こんなくらしがいつまでもつづくとおもっていました。しかし、そうではありませんでした。いつからか、フルアーマーたろうはぱったりとこなくなったのです。おじいさんはさみしくおもいつつも、どこかなっとくしていました。おやにとめられたか、しゅみがかわったか、あるいは、あいそをつかされたのか。いずれにしても、しかたのないことのようにおもえたのです。
「なぁに、ひとりぼっちにゃなれてらぁ」
そうつぶやき、わらってみても、こたえをかえすだれかはいませんでした。
ロボットアニメすいたいじいさんは、もうロボットアニメがだめになったとはおもっていませんでした。いまやただのロボットアニメじいさんです。とはいえせいかくまでかわったわけではなく、ロボットアニメのすばらしさをきかれてもないのにかたっては、むらびとたちにめんどうくさがられていました。かわったことといえば、きんじょづきあいでしょうか。あるときおじいさんは、となりのSFすいたいじいさんにいいました。
「SFすいたいじいさんよ、このまえいってたこてんSFのめいさくをかしてくれんか」
「きゅうにどうしたんだ? ようやくこてんSFのすばらしさにきづいたか?」
「そとにでてみるのも、あんがいわるくないとおもえたのさ」
おじいさんがそういってわらうと、SFすいたいじいさんはかおをしかめていいました。
「そんなすがすがしくわらうなよ。きらいなやつのしあわせなかおは、めのどくだ。‥‥ぜひ、かんそうきかせてくれよ」
「おう」
ロボットアニメじいさんは、ほかにもかいじゅうえいがすいたいじいさんや、ほんかくミステリすいたいじいさんや、いろんなすいたいじいさんとなかよくなりました。そうしてしゅみがふえていって、みるみるげんきになっていきました。
あるひ、おじいさんのいえに、みかけないかおがたずねてきました。というよりは、しばらくみかけていなかったかお、というのがただしいでしょうか。せはのびていましたが、そこにいたのはたしかにフルアーマーたろうでした。
「おひさしぶりです」
「おっ、ひさしぶりだな、こぞう。そういや、あれみたか? いまやってる‥‥」
「ごめんなさい、さいきんぶかつとか、べんきょうとか、ともだちづきあいとかいそがしくて、あんまりみれてなくて」
「そっか。いや、せめるつもりはないんだが、その、しあわせになったんだな」
「はい。しあわせです」
「ちょっとは、けんそんしろよな」
「しょうがないじゃないですか、ほんとうにそうなんだから。その、きょうはおれいをいいにきたんです。いちばんつらかったとき、おじちゃんがともだちでいてくれたからたえられた」
「ちがうよ、れいをいいたいのは、おれのほうだ」
ふたりは、いつまでもだきあっていました。
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