第19話
ギャルってさ、かなりお金を使っているイメージない?
化粧道具とか、アクセサリーとか、私服とか、カラオケなんかの遊びだったりとか。まあそれらは派手な見た目と遊んでんなーというイメージからくるものなんだけど、あながち間違ってもないと思う。
じゃあそのお金は一体どこからくるのだろうか?
親からのおこずかいか、普通にバイトをしているのか、それともパパ活なんていう危うい手段を取っているのか。最後の奴はオタク知識からくる僕の勝手な偏見だ。恐らく世の中のギャルは、自分のお金は自分の力で手に入れてると思う。バイトを掛け持ちとかしてそうだ。
では僕の周りを取り囲む美少女ギャル達はというと……。
「ああ~お金がないよぉ~、今月使い過ぎた~」
僕の隣の席のスーパーギャル、安藤花さんは、机にうつ伏せになりながら両手をダランとしている。豊満な胸が潰れてとてもえっちぃことになっているのだが、そんな事を気にするのはムッツリ陰キャの僕くらいだろう。机とおっぱいの間に顔を挟まれたいとか思っちゃう。あー、今日もこのギャルはエロいなぁ。
「ハナちんもバイト始めれば~?」
「バイトか~面倒臭いな~」
僕の斜め前の席にいるロリ巨乳ギャルの夢野桃さんが提案するが、安藤さんは乗り気ではないみたいだった。
それにしても夢野さんの巨乳は暴力的だよね。六月に入って暑さが増し、より暑い日にはカーディガンを脱いでワイシャツ姿になることもあった。初めて彼女のおっぱいが解放された時、教室中の男子の目線は豊満な果実に釘付けになり、前屈みになっていたのが懐かしい。あの時の女子の冷たい眼差しは今でも思い出せる。全女子に殺されるかと思ったもん。
なんとか慣れてきて前屈みになることもなくなったけど、チラチラ見てしまうのは男の悲しきサガだろう。
「そういえば花って、モデルやってなかったっけ。今はやってないの?」
「たま~にね~。専属じゃないから、時々連絡が来た時にやるぐらいかな~」
へぇ……安藤さんってモデルやってるんだ。モデルをやってるって言われても特に驚くことはない。だってめっちゃ可愛いし、スタイルも抜群だから写真映えもする。それにギャル雑誌とかなら彼女が最適だろう。モデルをやっていても何もおかしくない。
にしても、七瀬さんは黒いなぁ。元々肌が黒いほうだけど、ここ最近日差しが強く、陸上部の彼女はさらに焼け、黒さが増している。まさに黒ギャルだ。安藤さんと夢野さんの肌が白いだけに、余計黒が映えている。
そんな七瀬さんは、僕の机に肘をついて、頭を拳で支えている。そしてスラっとした足を組んでいる。するとどうなるか。僕の顔の前に七瀬さんの頭があり、シャンプーの良い匂いがゼロ距離で漂ってくる。さらに艶めかしい黒脚が見下ろせるのだ。
僕の息子は今にもビンビンになりそうで困ってしまう。
僕思った。
黒ギャルって最高じゃね?
「ハナちんもバイトやれば~?モモも最近始めたよ~」
「へぇ、なんのバイト?」
七瀬さんが問いかけると、夢野さんは甘ったるい声音で告げる。
「カフェだよ~。なんか~頑張れば頑張るだけ時給もアップするんだ~」
「カフェか、モモには合ってるかもね」
「ナナちんはやらないの~?」
「私は部活もやってるし、あんたらみたいに金遣いも荒くないからね」
「えーあたしだってそんなに使ってないよー」
「「いやいや、花 (ハナちん)は使ってるでしょ」」
ギャル仲間に一刀両断され、安藤さんはがっくしと意気消沈してしまう。彼女は顔だけ動かして、今度は僕に尋ねてきた。
「黒崎は?なんかバイトやってる?」
「えっ僕?やってないよ。そんなにお金使ってないし」
僕はオタク趣味だ。家帰って撮りためたアニメを見たり、携帯小説を読んだり、月額で払ってる漫画サイトで漫画を見ているだけ。買い物としたらラノベくらいだろう。
オタクの中にもお金を使うタイプと使わないタイプが存在する。スマホゲームのアプリに課金したり、アニメグッズを集めたり、円盤を買ったりするオタクだ。使わないタイプは僕のように、できるだけお金を使わない方法で楽しむ。イメージとしては、前者は社会人で後者は学生という感じだ。僕も大人になって働き出したら、オタク趣味に沢山のお金を突っ込むこともあるかもしれない。
勿論、安藤さん達のように外見とか服とかにも気を使ってないのもある。髪を切るのは千円カットだし、服はユニクロだったりGUとかの安くて無難な服が数着あればいい。さらに僕はぼっちで遊び相手がいないから、休日にお金を使うこともないのだ。
……自分で言ってて悲しくなるなぁ。
「ええマジ?じゃあさ、あたしのおっぱい揉ませてあげるから、千円ぐらい頂戴よ」
「――!?」
彼女の提案にドキってしまう。
え?いいの?本当にいいの?たった千円で安藤さんのおっぱいを揉めるなら、僕いくらでも払っちゃうけど!?マジでいいんすか!?
「なに興奮してんだっての。冗談に決まってるじゃん、ひくわー」
「陰キャ君は分かりやすいね~」
「あんた、最近見境いなくなってるよな」
三ギャルからの一斉放火に死んでしまいたい気分に陥る。
分かってたさ!冗談ってことぐらい!!でも童貞はね!!いつもワンチャンを期待しているんだよ!!それくらいわかってよ!!
はい、ごめんなさい。誠に申し訳ございませんでした。
「バイトか~ちょっと考えるか~」
やる気なさそうに呟く安藤さんを横目に、僕はギャルも大変なんだな~(小並感)と思ったのです。
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