#7

魔の物が姿を消した瞬間にすばやく回り込み、


人の里の方向へ背を向けて、


魔の物と向き合う形で対峙たいじする。











魔の物は、   消えては現れ、     また消える。









致命傷は与えてある。


けれど、欠片も残さずっさなければ、


存在し続ける魔の物。






動きは鈍いとはいえ、



放たれる瘴気しょうきと無数に生えた



手のような物の不規則な動きは、



どちらもまだ戦闘に参加したことのない



自分には、とてつもない脅威きょういだ。









視線は高く、





視野は広く、





現れるその瞬間を見逃すことのないように










(視線は上)








(視界は広く)








(何一つとして見逃すな)







音もない、






匂いもない、






ただのかすみのような実体とたたかう恐ろしさは







息をすることさえ忘れそうなほどに








緊張を呼ぶ。









しかし、





腰を落とし両の足先へ力を込めて、





重心を低く保ち、






より高く、






早く、






舞うように






ちゅうへ飛ぶことを意識して、かまえを取る。

















ゆらりとかすかに揺れるような感覚を











視界がとらえたその時、















魔の物が現れた。











そしてその瞬間、




高く飛びあがり詞珠ことばだまを巻き付けにかかる・・・!!








          ブワッッ・・・・!!








が、振り払われてしまった。







瘴気しょうきを放ち続ける上、



近づけばよりいっそう濃く放たれてしまっては、



なかなか簡単にはいかない。













何故なら



力を持つ者といえども、

 


魔の物の瘴気しょうき耐性たいせいがあるわけでは


 

ないからだ。








自身も距離をあやまり、



その瘴気しょうきに触れてしまったならば、



瞬く間に取り込まれてしまう。











しかし距離を取りすぎてしまっては、





1歩 





また1歩と






魔の物を人の里へ




近づかせてしまうことになる・・・。












落ち着け・・・









     (視線は上)





 (視界は広く)








    (何一つとして見逃すな)









「集中するんだ・・・」










        (腰を落とし)





   (両の足先へ力を込めて)





(重心を低く保ち)





     (より高く)





  (早く)  








 (舞うように)








   (宙へ飛ぶことを意識して)












自分以外・・・








いないだろ・・・








誰も・・・








いないんだ・・・







うつむきそうになる心を





無理やり顔を上げることで





なんとか持ち直し、








グッと奥歯を噛み締めた。











すると突然




ドサッ!!!!




何か、物が地面に落ちた音がした。








男「う・ぅわああああああーーー!!!」






(?!)









男「な・なんなんだよ。


  あれは?!?!いったい・・・・。」










里の人間だ。





やはり身体に数字が現れていない。











「こんなに近くまで来てしまっているとは・・・。」











あせりと少しの落胆らくたん





感情が持っていかれないよう追いやって、





冷静に、冷静に伝えなければ。














「ここは危険です!!


 


 この黒いもやに触れてはいけない!!


 


 あなたは力を持たぬ者。


 


 早く里へ・・・!!」












         「にぃちゃん・・!」









・・・








(今、何て・・・?)










里の者とは別の方向から





聞こえるはずのない





聞き覚えのある声がした。






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