#2

僕の等級は〈ろく


 


魔と直接対峙して戦闘をすることは


 


未だできない等級の数字が身体に現れた。


 


日々鍛錬の為に身体づくりも兼ねて、


 


弓を引いている。


 


 


僕の父は〈〉の数字を有している。




前に封じの儀をしている時に見たことがあった。


 


最近は少し具合が悪そうで、


 


いつもと同じようには封じの儀を行えず、


 


補助ほじょの護符を身に着けていた。


 


 


 


 


 


 


ーー封じの儀とはーー


 


魔物が人の世へ、


 


里へ来ないように結界を張る儀式ぎしきの事。


 


この儀式は身体に数字を持つ者だけではなく、


 


この世に生きる者皆が、して思念しねんする事で、


 


自身の持つ様々な大きさの力を


 


白い波動を矢として放ち続け、


 


結界を作る期間がある。


 


とても気力を奪われる、


 


精神の修行のような時間であり、


 


その期間も含めて鍛錬とされ、


 


鍛錬をすればするほどに、


 


身体に数字が発現したり、変化をしていく。


 


 


 


 

 


ちょうどその封じの儀が終わったのが昨日。



 


 



 


 


僕は朝ご飯を食べ終えて、


 


自分たちの明日以降の食糧しょくりょうの調達と

 


里より川上へずっと行った先、たもとに住む


 


いち〉の数字を持つ彼らに食糧を届けるため、


 


まだ薄暗い畦道あぜみちをぬけ、里を出た頃、


 


大きな川が見えてきた。


 


 


 


 

 


 


この川岸をひたすら川上へと向かう ――――――――――


 


 



 


背に負った大きなかごに入りきらないほどの食料を、


 


両の手にも抱えながら


 


ひたすらに川上へ歩みを進めていたところに


 


突如とつじょとして大きな屋敷やしきが現れる。


 


 

 


っ・・・!!!


 






 


「そうだった・・・。


 ここは””のお方の住む屋敷。」


 




 


ここを通るときはとても緊張する。


 


 


 


 

 


 


この屋敷を見たということは、


 


もう里からもう随分ずいぶんと離れたことを意味し、


 


そして僕の目的地、


 


彼らとの距離が近づいていることも意味している。


 


ここのお方は、ひどく冷たい眼をした、


 


怖い方だともっぱらの噂だ。


 


 


 


 


 


 


しかし僕含め、


 


実際に会ったという人物は身近にもいない。



 


 


 


 


 


 


 


何故なら、


 


ここはすでに “普通の人間” は、


 


近づいてはならないとされている場所に


 


入ってしまっているからだ。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


  


屋敷を越えてさらに歩き、草丈の整えられた河川敷で


 


荷を降ろし、一息つく。


 


 


 


 


 


 


「ふぅー・・・」


 


 


 


 


 


 


 


いつもなら川の中腹、この辺りで彼ら三兄妹に出会うはずなのだけれど…


 


 


 


 


どうしたのだろうか


 


 


 


 


 


姿が見当たらない


 


 


 


 

 


僕は辺りを見回し、少し歩いてみることにした。


 


 


釣竿から糸が川面かわもへ垂らされたままだ。


 


 


つい先刻まで、ここに居たのだろう。


 


 


 


 ・ ・ ・?


 


 



 


 


____あぁ。


  どこかへ身を隠して、僕を驚かそうとしているのか!


  あの小さな兄妹が考えそうなことだ。______


 


 


 


そんな風に考えて、辺りをくまなく探しにかかる。


 


物音ひとつ、聞きらさないように・・・・・


 


 


 


 


 


 


すると、


 


草の揺れるような軽やかな音とは


 


明らかに違った、異音に気づく。


 


 


 


 


 


 


 


この音は  


 


 


 


 


 


 


 


何だろうか ・・・?


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


かすかな音のほうへ目をやると


 


 


 


 


薄暗い大きなもやが・・・


 


 


 


 


見える・・・?


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


なんだ・・・


 


 


 


 


 


 


 


あれは・・・ ?


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


こちらの雲一つない青い空とは


 


全く別の世界を切り取ってきたように


 


異音の先は、重く鈍い色のもやが広がっていた。


 



 


 


 


 



 


あの場所は、


 


 


彼ら〈壱〉の君が住む辺り・・・


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 続・・・


 


 


 

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