s1.12 ハーメストの魔法理論。
王太子との対面から三日経った。その日は、お願いごとを聞き入れてくれることになったエリオットと共に、大人たちの所へ戻った。
二人とも婚約に前向きなことを告げると、先王ノウマー公爵はたいそう喜んでいた。わたしのお父様、お爺様とは言うと、表面上は喜んでいても、エリオットが言うには少し悲しそうだったらしい。
敬称を省いて呼び合えば仲睦まじく見えると思ったけどそう簡単ではないらしい。親の心は分からない。
今日はエリオットを自室に招き、一緒にお茶を飲んでいた。
「最近はどうしてるの?」
バークッキーを
「アルクセラ先生から魔法理論を学んでいます。」
10才になったということで、二日前からアルクセラ先生の授業に魔法理論が増えた。勉強時間は増えていないから、学ぶ科目が変わっただけ。
先生の専門は魔法だから初日から楽しみにしていた。このまえ書庫で魔法を目の当たりにしたものだからいっそう興味が湧いている。
「どれくらいまで進んだ?」
「まだ魔法の分類についてですね。理論的な所はまだです。」
早く実技をしたいのだけど、基本的な理論を修めていないと怪我をするらしい。冒険者なんていう稀有な人なら即実践で学ぶことも多いと聞いた。けど怪我人も多いと聞いた。自転車ほどの危険性ならいいけど、自動車ほどなら人が容易く死んでしまう。安全第一。
「まだ導入の所だね。」
「そうですね。魔法を自分で使えるのは何年後でしょう。」
実践は座学を
「僕は一年くらいで魔法に触れさせてもらったけど、どうだろうね。王族への教育が他と同じとは思えないし。」
「王族の方に危ないことをさせるとも思えませんけど。それにエリオットは王太子ではないですか。世継ぎはそれこそ大事では?」
死んだら死罪、怪我でも死罪ではないかと思う。わたしも例外ではないから気を付けたい。
「……これを言ってしまっていいのか迷うんだけど、君が過保護なんだよ。危なくない魔法なんて幾らでもあるし騎士になる訳でもないんだから。」
「やっぱりわたしの家族はみんな過保護なんですね。考えすぎかとも思いましたけど。」
「頼めば教えてくれると思うよ。」
「お父様はともかく、お爺様は説得できる気がしませんね。我を通して不仲になるくらいなら、わたしは素直にいう事を聞きます。」
「まぁ、焦ることはないんじゃないかな。使う機会は余りないし。」
わたしに甘い二人もちゃんと貴族の一員で、
「そういえば、アリーから学んでいるってことは、ハーメストの魔法理論?」
「そうですね。」
エリオットはアルクセラ先生のことをアリーと呼ぶらしい。仲が良いのかとも思ったけど、きっと先生がそう呼んでくれと頼んだのだろう。エリオットは余程のことがなければ頼みを聞いてくれるから、素直にアリーと呼んでいるのだろう。
「テレストリア学派の書籍は幾つもあるそうですから、座学ではハーメスト学派を学ぼうかと。テレストリアは自分で勉強します。」
魔法理論には二つの派閥があり、一つは古き良きテレストリア学派、もう一つは新進気鋭のハーメスト学派。
テレストリア学派は古いからこそ纏まった書籍が出版されていて、ハーメスト学派には未だ代表的な書籍がない。だからこそハーメスト学派を学べる環境は貴重だ。
「王族はハーメスト学派についてはまだ懐疑的な立場だから、僕はハーメストの魔法理論は知らないんだよね。何か面白い所とかあったら教えてね。」
「いいですよ。」
王族にもかかわらずハーメスト学派のアルクセラ先生が異端らしい。
「それで、テレストリアの魔法理論についてはどれくらい進んだ?」
「魔法入門第六版というものを薦められたので、取り敢えず最後まで読みました。」
先日、アルクセラ先生に渡された。入門書として一番メジャーらしい。
「へぇ、最後まで。」
「まだ読んだだけなので、理解してはいませんけどね。」
「僕だってもう一年以上取り組んでるけど、わからない所が多いね。」
理論と名が付いていても、テレストリアの魔法理論は数学を
「個人的にはハーメストの魔法理論の方が分かりやすいです。」
「そうなんだ?」
「テレストリア学派とハーメスト学派は導入から結構違うのですけど、その時点で何となく。」
エリオットも他学派に興味があるようだ。
「テレストリア学派は、魔法陣が発生させた事象に注目して体系化を図るんだと思います。液体を使った魔法だから水魔法に分類する。固体を扱うから土魔法。結果重視だと思います。」
「たしかにそうだね。灯りの魔法だと、風魔法と土魔法と火魔法の複合だよ。結果から要素を分割して、それぞれに適切な魔法陣を考え、タイミングやプロポーションを調整して発動する。」
「……そんなに複雑なんですか、灯りの魔法。」
先生に見せてもらった灯りの魔法が奇麗だったから楽しみにしているのだけど、先が長そうだ。
「難しくはないよ。それぞれがちゃんとできていれば順番に発動すればいい。」
「……。」
「信じてないね?」
「信じてないですよ。」
「本当に順番に発動するだけだって。」
「……ま、わたしがチャレンジしたときに分かることです。取り敢えずは信じておきますね。」
復讐と関係なく、わたしは魔法に憧れている。魔法の授業は10才の誕生日から忘れていた純粋な高揚を感じた。
復讐を遂げる意思は変わらない。でも子供として子供であることを楽しみたい。お母様が生きていれば、わたしには子供らしく生きていてほしいと言うだろう。それはわたしの願望なだけで、本当はお母様も復讐を望んでいるのかもしれない。
親というものをわたしはてんで理解していないから、どうにも自信が持てないでいる。
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「s1.12 の pv が +1 増えました。」
感謝に堪えません。耐え切れずワクチン 2nd を打ちます。
副反応舐めちゃダメ。熱が出る前でも頭が回らなかったよ。
つづきを読みたい方は、
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私に極上のエサをください。
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tips. ワクチン二回目副反応まとめ。
・夕方に注射。
・腕が痛い、頭が回らないと思いながら就寝。
・12時起床、昨晩と体調変わらず。
・14時ごろ、頭痛を感じる。体温38.2℃
・頭痛は16時ごろがピーク、その後減衰。
・0時ごろ、頭痛がマシ、体温37.8℃、就寝。
・12時起床、体温は下がった、動くと頭に強い痛み。
・この日は一日中変化なし。
・翌日、頭痛がほとんどなくなる。
→快方!‹‹\(´ω` )/››‹‹\( ´)/››‹‹\( ´ω`)/››
正直副反応予想できてたのに準備せずに更新できなかったのは不甲斐ないと思ってます。せめて一週間分の余裕を作りたいですね。
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