第21話 第二の危機勃発か!?
「結局あれなんだったんだろうな。」
「さぁ?専門の人とか呼んで色々調べたらしいけど結局よく分かんないんだって。」
「そうなんだ。専門の人でも分からないんだったら、もう宇宙人の仕業って考えるぐらいしかできねーな。」
屋上での件から幾日か経って、少しずつそのことに関する生徒の関心も薄れていった。人の噂も七十五日とはこういうことを言うのだろうか。
しかし、俺を取り巻く環境は大きく変わってしまった。原因はもちろんユイのせい。彼女はバレないようにやっているのかもしれないが、ずーーっと俺の後をつけてきたり、授業中に誰にも気づかれないように植物で攻撃をしてくる。もちろんユイが俺に対して特別な態度をとっているのは周知の事実となっている。気づいていなのはユイだけだ。
「ねぇねぇ、ユイちゃん。なんであんなに白石くんのことを気にかけてるの?もしかして転校してくる前から知り合いだったの?」
「なんのこと?ユイは白石くんのことなんて気にしてないよ?席だってユイが白石って苗字が好きだから隣になっただけ。」
「ははは。そ、そうなんだ〜。」
クラスの女子に聞かれても、ユイは何故か得意顔でしらばっくれる。聞いた女子もドン引きである。
「み、美心。そっちもユイからの被害が結構あるんじゃないのか?」
「そ、そうね。あなたほどじゃないけど少しだけあるわ。」
「そうなんだ。」
「うん。」
「・・・」
「・・・」
(気まずーーーーーい!あの時からちょっと気まずいよ!なんか向こうも向こうで頬赤らめちゃってるし!やめてよ!そんなキャラじゃないでしょうに!)
あの時とは、もちろん美心が屋上であんな事を言った時のことである。あれ以来、会話をする度にお互いの間になんとも言えない空気が漂っている。
「おいおい、お前ら。なーに青春しちゃってんの。」
そんな絶妙な空気感を断ち切るように、クラスの王子様である悠が降臨した。
「べ、別になんもないから!ユイのことでちょっと話してるだけだから!!」
「ふーん、まぁいいや。でも確かにそれは問題よな。あの子、自分と周りの空気感の差に全く気付いてないからなぁ。」
「そうなんだよ!あいつ無自覚ヒロインみたいなフリしやがって!そのせいでクラスの男子からも質問攻めだよ。」
「ははっ、それは結構面白いぜ。オドオドしながらユイとの関係性を否定してるお前見てるの結構楽しいわ。」
「笑ってないで助けろよ!」
「それより柊。明日何があるか分かってるわよね?」
俺と悠がやり取りをしていると、美心が割って入ってきた。
「明日?なんかあったっけ?」
「はぁ、体力テストでしょ?しっかりしてよね。」
「あー、確かにそうだった。それがどうしたの?」
「お前も天然バカか。今のお前たちの身体能力を持ったまま、どうやってこのテストを乗り切るかってことだろ?この鈴木の顔見てみろよ。」
悠に言われて美心の顔を見てみると、美心がジト目でこちらを睨んでいた。
「あ、あぁ!もちろん分かってるよ!そうだよね!それは大変だ!ははっ!」
「勢いで誤魔化せると思わないで。」
「・・・はい。」
何とか勢いで乗り切れると思ったが、敵は中々強大だったようだ。
「まず私たちが力をしっかり制御できるかっていうのはもちろん重要よ。けどそれ以上にユイさんにそれが出来るかってことよ。」
「あぁ、確かにそれは難しいかもしれないな。」
そこでようやく俺は美心の言いたいことを理解した。ユイが力を制御できずに体力テストに臨んだ場合、そこから屋上での一件が繋がってしまうことを、美心hs危惧しているのだろう。
「とりあえずユイさんにあなたから言っといてもらえる?明日の体力テストで力を抑えるように。」
「え、僕が言うの!?美心が言ってくれればいいじゃん!それか悠が!」
そう言って俺は悠の顔を指さした。
「おいおい、俺はいちばん無いだろ。多分言っても「なんのこと?」って言われてとぼけられるだけだぜ?」
悠は本当に勘弁して欲しいと言わんばかりの表情でその提案を断った。
「それにユイさんは私よりあなたの方に興味があるっぽいから、あなたが一番適任だと思うの。ダメかしら。」
「うっ...わ、分かったよ。僕から言っとくよ。」
目をパチパチさせながら、わざとらしく上目遣いをしてくる美心のお願いを、柊は断ることが出来なかった。
(ふっ、ちょろいわね。)
そして、美心の心に住まう悪魔の囁きが柊に伝わることは決してなかった。
放課後、いつものように下校中の俺の後をつけてくるユイの姿を確認した俺は、後ろを振り返ってユイがいる方向へ歩を進めた。
「や、やぁ。偶然なのかな?シュウの家はこっちななんだね。」
表情は岩のように変化させず、しかし少しだけ声がうわずっているという奇妙な様子をしていたユイに、美心から頼まれていたことを伝えた。
「なんで疑問系なんだよ。まぁ、偶然かどうかはとりあえず置いておいて、ユイに一個聞きたいことあったんだ。」
「なに?」
首をこてんと、傾けながらユイが答えた。
「明日の体力テストあるでしょ?ちゃんと力の制御出来るの?」
「ふっ、ユイを馬鹿にしすぎ。ユイにかかればそんなこと目を瞑ってテストで100点を取るくらい簡単。」
「ふっ、そうか。明日のテストでそれを示してくれることを楽しみにしている。」
「このユイ様に任せておきなさい。」
「あぁ。」
そう言って二人は背中を向け合いながら、片手をポケットに突っ込み、もう片方の堅く握りしめた拳の甲をお互いにぶつけ合うことで、この日は別れることとなった。
(い、今のめちゃくちゃかっこよくないか!あいつも中々分かってるな。恐らく明日の体力テストも大丈夫だろう。ふふっ、美心にも同じことをやってあげるとするか。)
柊はこの一連のやりとりに興奮していたせいと、あまりにもユイが自信たっぷりな口調だったため、彼女の放った言葉の意味を理解していなかった。
『目を瞑ってテストで100点を取るくらい簡単』
この作業がどれだけ難しいことかを。
そう、彼女は嘘をつかないのだ。
ユイの一人称を私→ユイに変更しました!
あと、人物紹介も更新したのでよろしくお願いします!
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