第12話 家

「これが七草の実家か・・・」


七草との付き合いは長いけれど個人的な付き合いはしたことがほとんどない為、実家に来るなど初めてだ。

その実家も大きい・・・かなり大きい。

これで七草がバイトもした事がないのに金に困ったのを見た事がない理由がはっきりした。


「ま、座って。大した物はないからコーヒーで良い?」


客間に連れてこられてコーヒーを用意され話が始まった。

とは言っても、父親の事と家の事がほとんどだったが・・・。


「はっきり言って研究所みたいな物だから、色々と探すのにも苦労するのよね。

その辺は覚悟しておいてね」


この家の広さを見るにそれは大体予想できるが、それにしても研究所!?いや、ちゃんとした研究所は入った事がないからわからないけど。


「それで、実際にこの設計図と思しき物が出て来たのはどの辺りなんだ?」


まずは発見場所の周辺を探そうと思いそう聞いて見た。

これだけ広いと手がかりもないに等しいし、わかる所から手をつけていくのは定石だろう。


「父の書斎の方よ。それも厳重にね・・・こっちに来て」


コーヒーを飲み終えると同時に席を立ち書斎へと案内された。

散らかっているイメージを勝手に持っていたのだが、かなり綺麗に整頓されている。

そして、書斎の椅子の裏側の棚の前で七草が何かを弄り出した。


「隠し扉みたいな物なのか?」


操作を続ける七草にそう尋ねてみた。


「そうよ、隠し扉というか隠し通路のほうが正解ね」


そう言うが早いか、がちゃりと音がして人がギリギリ1人入れるくらいの通路が現れた。


「こっちよ」


そう促されて俺はその細い通路を進んだ。

そして少し歩いた先に机があり、その辺りはさっきの綺麗な部屋が嘘のように雑多に散らかっていた。

書類だったり、何かもメモだったりと色々ありホワイトボードや黒板にまで色々と書き綴られているのが目に入った。


「ここが父の本当の書斎。私と母しか知らないのよ。そして見つけたのがここね」


そう指を指されたのでその方向を見てみると比較的小さな金庫があった。

家庭用のサイズよりもワンサイズ小さいくらいの金庫で書類が丁度収まるくらいの金庫。

中を覗くも何もない。


「ここにはあの書類だけがあったのか?」


他にも何かあったのであればそれは手がかりになる!そう思ったのだが・・・


「そうよ、あの封筒と書類だけね。」


がっかりしつつも周りを見て見るも特に何も変わったものは無い。

更にこの中に何か隠し扉があるのではないだろうか?とも思った・・・普通の書斎に隠し通路を作るような人だ、もしかしたらとも思ったが


「一応1日掛かりで調べたけど、何も無かったわ。X線もだめね」


X線までやったのか!?結構興味無いようでかなりちゃんと調べてるじゃ無いか・・・。

思わずこいつ何を言っているんだ?という目線で七草を見てしまった。


「なによ。父の遺した物だもの!他に何かあるんじゃないかって思うでしょう普通!」


普通はX線までやらないと思うが・・・まぁ気持ちはわからんでも無い。

しかしまぁそこまでして何も出ないか・・・となると残る手掛かりはこの部屋にある物って事になるのか。


「調べるとなると通う必要があるな・・・かなり時間が掛かるぞ」


この家まで俺の家から車で片道3時間30分も掛かるのだ。

実際に毎日来るというのはなかなか億劫だ・・・休みは長期で取ってあるので出来なくはないが。


「何を言ってるのよ。泊まりがけでやればすぐじゃない」


え・・・何も聞いていないんだが!?

何も準備も出来ていないし流石に無茶振りすぎないだろうか・・・。


「ちょ、ちょっと待て!そんな話は聞いていないぞ!それにそうするにしても一度戻って出直して準備しなければ行けないだろう」


そう反論するも


「必要な物なんて買えばいいじゃない?家政婦も居るし、必要な物は言ってもらえば全部買うわよ。その位するに決まってるでしょう?」


まじかこいつ・・・じゃああれか?今俺が欲しいと思っている最新のパソコンも必要だって言えば・・・いやいや!


そんな葛藤をしながら俺と七草との捜索が始まった。

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