第7話 紙

「言ってはおくけど、私もアンタと同じでわかってないのよね」


おいおい・・・そう堂々と言われるとは思ってなかったが・・・。


「で、そっちの本は後で考えるとしてまずはこれを見て頂戴」


そう言って大きめの茶封筒を差し出された。

そこには数枚の紙が入っていて、見たところどれもこれも現代の文字ではないようだ。

何かの設計図か?・・・それとも絵?、ぐちゃぐちゃしていてよくわからない。


「これは?」


そう聞き返すと、足と腕を組み少し考えてから話し出した。


「これは、この間亡くなった父の遺品整理中に出て来た物なの。ほら、考古学もだけど結構この手の物よく集めてたじゃない?。他のは大したものじゃないようだったけれどこれだけ厳重に保管されていたのよ」


七草の父親は教授の先輩でもあり考古学の第一人者のような人だった。

色々と集めてはよく娘に自慢していたようで・・・その結果七草は逆にこうした者が嫌いな方になってしまった。


「何か言ってはいなかったのか?もしくは遺書とかに何か書いていたりとか」


それだけ厳重に保管していたのであれば何かしらあってもいいと思う。


「これの事か分からないけれど、人類の為の設計図がこの世にはあるとよく言っていたわ。詳しくは話してくれなかったけどね」


なんだそりゃ・・・何のヒントにもならないではないか。

人類の為の設計図?・・・宇宙船とかか?いやそれならもうとっくに現代にあるし何より古くはない。

もう近い未来には月に旅行に行けるなんて話もテレビで見るほどなのだからな。

そう言いながら紙をテーブルに並べて見て見た。


「・・・まったく読めん・・・」


頑張っては見たのだが、何をどうしても分からない。

メモにしても、絵にしても全くの手がかりがないしそもそも文字なのかどうかすらも怪しい。


「まぁ、値打ちとかは別にどうでもいいのよ。ただ教授にも話したんだけど・・・そしたらアンタに渡せばいずれ全てがわかるって言われたのよね」


またそういう回りくどいことを・・・そう言いながら面倒ごとを俺に全部押し付けてるだけなんじゃないのか?

火で炙ったりしたら何か浮き出てくるとか、水に浸すと何か見えるとかあるのだろうか・・・。

ちょっとまてよ、いずれ?・・・今すぐにということではないのか?

シグの本の件といい、重なりすぎてもう訳がわからんぞ。


「しかしだな・・・本の件といいこの紙も全く分からんのだ。それこそ俺にどうしろとって感じだな」


事実そうなのだから仕方ない。

せめて絵なのかメモなのか、設計図や何かの写しなのかが分かればいいんだが。


「一応言ってはおくけれど、どんな些細な事でも教えて。あのズボラな父があそこまで厳重に保管していた物だから何か意味がある物なのは私にも分かるのよ。それを・・・父は何を見つけたのか私も知りたい。」


そう言われてもな・・・だが色々と考えてみれば何かしらの仮説は立つかもしれない。

考古学はそうやって後付けして違ったらまた新たな仮説を更新し続けていずれは真実にたどり着くのだから。


「分かった。一先ずこれは持ち帰らせてもらう。色々と仮説を立てて見て検証して見る」


そう言うと七草は承諾してくれたので紙を茶封筒にしまった。


「私、しばらくは日本にいるから何か分かったら連絡頂戴。すぐに飛んでくるわ。」


了解と今後の事について軽く話した後、解散となった。


本だけではなく紙まで出てきてしまい益々こんがらがってしまった日ではあったが、いい息抜きになりそうだ。

本の事は一度置いておいて、とりあえずはこの紙の事について考える事にした。


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