第4話 アーク 3
トラックは、轟音と唸りを上げて、走り出した。
流石にフルスロットルというわけにも行かずに、瓦礫を避けながらの走行だったが、敵はすぐに飛びかかってくるようなことはなかった。
ゆっくりと、間合いを取りながら追ってくる。
大した武器はないのがわかっているのに、嬲っているのか?
それとも、ただ単に知能が低いだけなのか?
わかるはずもなかったが、間合いを置いているのだけは、わかった。
トラックに乗っているのは兵士なので、当然の如く、強力な火器を持っている者も3人ほどいた。
小型のロケット砲を持っているものが居るらしく、レーダーが反応するのかどうかをテストしていた。
なにせいきなり襲われたのだ。
相手の能力を知らないことには、効果的な攻撃も出来ない。
「映った」
言った兵士はトラックの荷台の後ろまで来て、照準をつけて、飛来する敵を狙った。
携行型のロケット兵器には、照準を確認する画面がついていたが、ロックオンするとマークが出るので、その合図に合わせて、兵士はトリガーを引いた。
同時に3個の標的をロックできる優れものである。
連続して3発のミサイルが発射された。
追ってきた敵を、またたく間に3匹叩き落とした。
追ってきた敵が、状況を判断して、より慎重な攻撃をするために、さらに間合いを変える。
だが、ここで、ひとつだけ問題が発生した。
「だれか、他に持っていないか?」
引き金を引いた兵士が言った。
使い捨てのロケット兵器?というわけではない。
だが、一度にセットできるミサイルの数には限りがあるということだ。
3発で打ち止めなのだ。
予備弾数がないのか。
「ロケット砲はないな」
もう一人、重機関砲を携えて、敵に備える兵士がいた。
腰を据えて、引き金を引いた。
追ってくる敵は、あと5体。
狙いをつけて一体倒した。
さらに連続してもう2体。
残り2体になったところで、他の兵士たちが、手にしていたマシンガンで応戦する気力が出てきたらしい。
やれると思ったので、立ち向かう気力が出来たのだ。
「集まってくる前に逃げ切れるか?」
鳴神神が大声を上げた。
運転手は舌打ちをしたが、神には当然聞こえなかった。
「やっている!しっかりと敵を殺ってくれよ!」
運転手役の兵士は、苛ついた様子で、後ろの荷台に向けて声を上げた。
マシンガンでも、貫通型の徹甲弾であるから、充分に通用するようである。
襲い来る2体も、難なく撃退できた。
思ったよりも手応えがないな。
神は思いながらも、辺りの敵の様子を観察した。
大きな群れが、撤退を始めている?
基地を潰した1団は、目的を果たしたのだろう、もう撤退を始めていたのだ。
命拾いしたのだろうなと、神は冷静に判断した。
兵士たちもその、敵の動きに気がついたのだろう、安堵の雰囲気が流れた。
だが、トラックは、出来る限りのスピードで、素早く走り続けた。
早くこの場を撤退して、他と合流したり、指示を仰がなければならないというのが、今の状況を解決するための必要事項だった。
神や剛は正確には軍人ではなかったから、この部隊の指揮権はなかった。
かと言って、この1団には、適当な司令官はいなかった。
さっきの重機関砲を持ち出した兵士が、一番の上官だったが、伍長である。
彼女は女性ながら、豪のものであった。
だが、まとめ役になってくれるか?
まあ、他と合流するまでの、仮のものだが。
神も剛も、何もなければいいがと、心を砕かなければならなかった。
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