第3話 アーク 2
大きな爆音が聞こえて、振動がトラックの荷台まで伝わってきた。
鳴神神と本郷剛は、他の兵士と一緒に、外の様子を見ようと、覗いてみた。
まだ、基地から何キロも走っていない事も有り。まだ瓦礫が散らばっていた。
それでもこの辺りは被害が少なかったのだが、攻撃を受けたと言う事は、狙われている危険はないか?
神はそれが心配だった。
「神、狙われてるかな」
剛も懸念している通りに、神には狙われるだけの理由があった。
「さあな」
神は吐き捨てるように言った。
「オレを狙うやつには心当たりはあるが、面識はないな」
「準備はしておけよ」
剛は腰に下げたハンドガンを手にして、チャンバーを引いた。
ハンドガン程度が、役に立つとは思わなかったが、無いよりはマシだと思えた。
お守りのようなものである。
「こんなもので役に立つのかな」
神も胸のポケットから、ハンドガンを取りだした。
神のガンの腕は、剛よりもかなり劣る。
ハンドガンでは、練習用の的に当てた事がない。
だから神にとっては本当に気休めである。
「お前のは、本当に役立たずだからな」
練習しておけば良かったか?
神は少しだけ後悔した。
薄暗がりの中、炎がちらつく中を、天空に影が飛び交っていた。
これが今、確認されている敵の影である。
一体が、神や剛の眼前に降り立った。
背中に羽が生えた、昆虫のようなかたちをした、アンドロイドである。
アンドロイドと言っても、メカ的なロボットというわけではない。
捕虜になった一体を調べたところ、生殖機能が無かった事から、これは創られた生物なのではないかと言われていた。
頭部は大きな複眼のついた昆虫であった。
口も、昆虫のもの。
胴体の色も昆虫らしいものだったが、人間のような腕が2本生え、足も2本、まるで体つきは人間のようであるから、ハイブリッドではないかと言う意見もあった。
宇宙人ではなく、誰かが創り出した秘密兵器なのではないかと言うものもあった。
神が3発ほど撃ってみた。
全弾ははずた。
「弾がもったいねぇな」
剛が撃った。
全て右の複眼に命中した。
さすが、言うだけの事はある。
神は口笛を吹いた。
だがこれだけでは、この怪物は倒れない。
弾丸を2、3発頭に叩き込んだくらいでは、相手は死ぬ事はなかった。
頭部は脳ではなかった。
この怪物は、心臓はあるが、脳にあたるものが無いのだ。
研究者の話だと、脳ではなく、身体の細胞全体で思考するのではないかと推測されていた。
と言っても、身体を狙っても意味はない。
損傷場所と違ったところで思考するのだ。
だから、脳が弱点にはならなかった。
心臓はあるが、鋼鉄のような硬度の殻に覆われているので、拳銃程度では、傷つける事すら出来ないようになっていた。
「走らせろ!」
剛は運転手に向かって、指示をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます