第4話 二度目のシルヴィア 2/2
いつ終わるかわからないと思っていたが、ティベリオと結婚した。ティベリオは本来なら私たちが最期を共に過ごした領地を継ぐはずだったが、前回は弟が跡を継いでいた。
私はそれを気にしていたのだが、弟は元々国政に参加したかったのに、自分が無理を言って弟に任せたのだと教えてくれた。
そして、ティベリオの弟はアドリアーノ殿下の側近になった。婚約者は前回と同じ令嬢で、二人は環境が変わっても仲良く過ごしているという。
私は妊娠した。アルフォンソのことを思い出したが、ティベリオが案外、アルフォンソかもしれないよと笑って言っていた。
生まれた子どもは男の子で、ティベリオにそっくりだった。トビアと名付けて、以前はかけられなかった時間をたっぷりかけて育てた。その後、娘と息子も授かった。
「私は二男一女を授かる運命なのかしら…」
そんなことを呟いていたら、トビアが「久し振りです、お母様、ティベリオ」と言ったのだ。何と。そんな感じはしなかったのに、トビアにも記憶があった。
「これは国の為に頑張った私たちへのご褒美ですよ。楽しみましょう。ティベリオが父だなんて、念願が叶って本当に嬉しい」とトビアは言った。
「アルフォンソもそう言ってくれるなら、目一杯楽しみましょうね」との私の言葉に返事をしたら、トビアは前回の記憶を失くしていた。
と言うより、あの瞬間だけ記憶があったと考えた方が自然だった。ティベリオともそれで意見が一致した。
子どもたちはよく、あれが父親だなんて忘れたいと言っていた。嫌な記憶は無い方が、二度目の人生を楽しめるだろう。
テレーザ、テオは一瞬も記憶が戻る事はなかったけれど、トビアは私たちと言っていたので、アリアンナとアルマンドの可能性が高い。三人が三人ともティベリオが大好きだった。
だけど私は思ったのだ。トビアもテレーザもテオも可愛い。けれど、ティベリオとの子どもも授かりたい。授かった子どもはティーナ。全員が可愛がって育てた。
そして、立場は違えどティベリオの家格も高かったので、前回の記憶を持つ息子たちは前回夫婦となった令嬢と知り合い、婚約することが出来た。
彼女たちにも記憶は無さそうだけれど、仲も良かったし相性が良かったのだろう。テレーザは以前の夫と仲睦まじく過ごしていたが、さすがに他国の令息と政略以外で結婚するのは難しい。
そう思っていたのだが、テレーザの夫は記憶を持っていた。一目見せようとテレーザを連れて隣国に旅行に行った際、知り合うことが出来た。
私が前回とは違う人生を歩んでいたことで、アリアンナは存在しないと思っていたそうだ。
彼はアリアンナと生涯仲良く過ごし、もしまたアリアンナがいるならば結婚したいと思ってくれていたそうだ。
記憶の無いアリアンナも彼の事を気に入り、国王にお伺いを立てたりと色々時間はかかったが、テレーザも前回と同じ人と婚約が決まった。
全員がティーナに最高の男を! と大騒ぎしたが、ティーナは地元の文官、ティベリオの側近の息子に恋をした。
今回は本当に穏やかで、素敵な人生を送る事が出来た。私たちは幸せだ。
アドリアーノに関しては、時々残念な噂が流れてきたが、それはそれ。これはこれ。
国は一人で運営できるものでは無い。全員が力を合わせた結果、普通に運営されているのでそれでいいのだ。
今回はストレスも無く健やかに暮らしていたお陰か、ティベリオを子どもや孫と一緒に看取った。一人になったのは寂しいけれど、子どもや孫たちも私の事を気にしてくれる。
前回のティベリオもこんな感じだったのかなと思いながら、私もまた子どもや孫に看取られて穏やかに生涯を終える事が出来た。
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