第2話 最初のシルヴィア 2/2
アドリアーノも周囲も、私の身辺の安全には気を配ってくれていた。実際子どもも含めて無事に過ごすことが出来た。
だけれど、妃たちが落ち着きを見せる度、ことあるごとにアドリアーノが彼女たちを煽るので、管理が本当に大変だった。
だから、そのことに関して全く感謝はしていない。当然の義務だと思う。
ただ、王子教育を頑張っていた可愛い息子アルフォンソに、父上は病気だから諦めて…とまで言わせたアドリアーノに殺意が芽生えたのも事実。
可愛い娘アリアンナに、世の中にはこんな男しかいないと勘違いさせて、お嫁に行きたくないと泣かせたことも忘れていない。
あんな病気持ちはそうそういないと全力で何度も説明することになった。
まだまだ幼いアルマンドに、アルフォンソとアリアンナが事あるごとにあんな男になってはいけないと言い続ける様になったことも許さない。
アリアンナが同世代の令嬢を招いたお茶会で見初めたとか言い出して、十七歳の娘よりも若い十五歳の令嬢を妃にしたことも忘れていない。
私もアリアンナも、本気で気持ちが悪かった。せめて、アリアンナが嫁いでからにして欲しかった。しかもその子は、何故だか私に対抗意識を激しく燃やしていた。
「おばさんの出番はもう終わりよ。これからは私がアドリアーノ様をお慰めするわ」
勝手にどうぞとしか思わなかった。
「おばさんの代わりに私が第一妃になるわ。アドリアーノ様も若い方がいいに決まっているもの」
はいはい、そうですねとしか思わなかった。
「おばさんが目立ってどうするの。その仕事は私に譲りなさい」
これを言い出した頃にはもう、呆れていた。
子どもたちはかなり腹を立てていたが、私は怒る気力さえなかった。脱力感の方が強い。
やれるものならやってみろ、っていうか何様だよ。間もなくアドリアーノによって降嫁させられたが、出る時も大騒ぎだったし、嫁ぎ先でも迷惑をかけまくりフォローが大変だった。
子どもたち全員が立派な大人に成長し、アルフォンソは国王になった。アリアンナは友好の為に隣国へ嫁ぎ、アルマンドはアルフォンソを支えられる様な家柄の令嬢と結婚した。
全員に子どもも出来て、幸せに暮らしている。全員がアドリアーノを反面教師にしていると聞いて、涙が出た。あいつ…!
私は隠居を機会に、アドリアーノとは離れて余生を送りたいと子どもたちに告げた。子どもたちは当然のことだと理解を示してくれた。
アルフォンソの嫁に来てくれたフィオリーナにまだ手助けが必要なのはわかっているが、フィオリーナでさえ、賛成してくれた。
私はもう疲れたのだ。事前に鍛え上げた配下を残して去った。
勿論、必要とあれば息子とその嫁を手助けする気はある。子どもたちとは連絡を取り合うことを約束して早急に王宮を去った。
アルフォンソによると、私が隠居先に離宮を選ばなかったことに、アドリアーノは大層驚いていたそうだ。何で?
当然でしょうが、って思いましたけどね。余生はあんな奴の顔を見ずに過ごしたい。
アドリアーノは元国王。立場的にも血筋的にも王宮の敷地内から気軽に出て余生を送るのは難しかった。警備とか色々ね。
先代の国王夫妻は離宮で最後まで過ごされた。けれど、妃に関しては自由が許される。それは国王が隠居する際に、第一妃と隠居するとは限らないから。それを利用した。
第何妃か興味も無いが、余生はその方とお過ごし下さいという話だ。
私は子どもに孫に囲まれ、最愛の友人に見送られ、楽しくも穏やかな余生を過ごして旅立った。大変な人生だったけれど、息子や娘、その子どもたちにも見送られて、幸せな人生だったと思う。
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