第5話 俺は朝から揚げ物を食う

 朝日が差し込んできて、俺は目が覚めた。眠気がまだ取れていない頭で考える。そういえば、昨日の寝る前にいた奴は何者なのだろうか。眠くて思わずスルーしてしまった。


 建築担当の人なのかな。恰好は作業着だったけど、口調に癖があった。連絡くださいと言われたけど、名前すら知らないのに、連絡できる訳がないと思うんだけどな。


 まあ、謎の男の事はおいておこう。とりあえず飯を食おう。前はカレーだったから、違うやつが良いな。今は唐揚げの気分だから唐揚げにしよう。朝から揚げ物だ!たまにはこんな日があっても良いよな。


 ベッドから降りて、リビングみたいなところに向かう。ちゃんとテーブルがあったな。ここで食べるか。


 揚げたての、外はカリッと中はジュワーッとした唐揚げをイメージ。これだけでよだれが垂れそうだ。5個でいいか。それを皿にのっけて出す。ご飯もセットでな!後は箸置きと箸を出して、完成だ。


 用意してあったイスに座り、手を合わせて、いただきます。


 箸を手に取り、ご飯を一口。うん、ご飯が美味い。次は本命の唐揚げだ、1個を箸で運んで一口分を噛み千切る。


 流石、揚げたてをイメージしただけあって、衣はカリカリしている。中から熱々の肉汁がじんわりと出てきて、最高だ!これだと、いくらでも食えそうだ!


 ご飯も忘れずに食べる。ご飯との相性もバツグンで、もう食べ終わってしまう。手を合わせて、ごちそうさまでした。


 朝食はこんなものかな。次は準備運動だな。昨日約束したゴブリンたちが来るまで少し待っていよう。その間に、食器を洗おうかな。


 食器洗いが終わり、念の為にアイテムボックスにしまっておく事にする。


 それからしばらくして、ノックが聞こえてきた。ゴブリンたちだろうか。返事をしてドアの方に行くと、ガチャッと音がしてゴブルと獣人が入ってきた。ゴブリンたちは来るのは分かる。だが、何故に獣人たちもいるんだ。



「おーいリュート!こいつらも準備運動やりたいと言っていたから連れてきたぜ!」

「「「今日からよろしくですー」」」

「お、おう。だけどこんな人数が入る部屋なんかあったかな?少し待っててくれ」



急いで部屋にあるドアの中を確認していく。そういえば、何もない部屋があったな。そこならある程度広かったはず!ここのドアだったな。中を確認すると大分広くなっていた。


 ここなら問題ないな。ここに来るように言わないと。



「ゴブル、ここの部屋に来てくれ!他の人も連れてきても大丈夫だ!」

「分かったぜ!おい皆、リュートの部屋に向かえ!準備運動するぞ!」

「「「おー!」」」



怒涛のように、何もない部屋に駆け込んでくる。無事に全員がこの部屋に入りきったようだった。しかも十分なスペースがあるから、準備運動するのに丁度良い具合だ。


 みんなで準備運動をする。ゴブリンたちが獣人たちに色々と教えていたので、俺が特に教えることがないまま準備運動が終わった。少し気になる事があったので、ゴブルに聞いてみた。



「もう俺の所に来なくても良いんじゃないか?動きも完璧だし」

「そうかもしれない。でも、みんなでやるって楽しいだろ!だから、そんな事言うんじゃない!もしかして迷惑を掛けているのか?リュートは違うのかよ?」

「迷惑じゃないから大丈夫だ。明日も来てくれよ!でもなんで獣人の皆さんが準備運動の事知っているんだ?」

「俺が広めておいた!教えてくれってうるさいから、この時なら教えても良いって言ったらこうなったんだ!」



マジか。この調子だと、明日の準備運動の時間に、もっと人が集まるかもしれないって事かよ。広めてしまったものは仕方ない、もう少しこの部屋を広くしてもらわないといけないな。



「分かった。広めるのは自由だけど、効くかは分からないから、そこだけは気を付けてくれよ。後、ここの建築の人知ってるか。もう少し広くしてもらわないと、全員入らないだろうから、相談したいんだけど」

「分かってる、分かってる。ちゃんと気を付けておいてるぜ。ここの建築の奴ならそうやって呼ぶだけで来るぞ」

「マジかよ。そんな簡単に来てくれるのか。凄いな」


そんな感じで待っていると、割と謎の男はすぐに来た。



「何かご用ですな?話は聞いておりました、この私にお任せですよ!お戻りになる頃には部屋を大きくしておきますので、皆さん出ていってくださいですよ」

「こう言っているから、この部屋から出ていくけどよ。俺たちと一緒に訓練所に行くか?」

「じゃあ一緒に行かせてもらうよ。魔王さまも、いちいち俺を案内するのは、大変だろうし」



ゴブリンや獣人たちと一緒に訓練所に向かっていく。



「魔王さまが言ってたんだけどよ、リュートはステータスを上げられる武器が作れるんだろ。その力で模擬戦用の武器って作れないか?前みたいに力加減を忘れた時でも大丈夫な奴をよ」

「うーん。そうだな、作れると思うけど思いつかない。良い物を思い付いたら作ってみるよ」

「そっか、頑張ってくれだぜ!もし出来たら実験台になってやるから!」

「その時はお願いするよ」



そんなこんなで、訓練所に着く。



「じゃあ、その辺で訓練しているから出来たら声を掛けてくれよ」

「おう、分かった。頑張って思いついて見せるから待っててくれ!」

「楽しみに待ってるぜ!じゃあな!」



ゴブリンと獣人たちは戦闘訓練する為に、離れていった。それを見届けた俺は、さっき言われた手加減しなくても問題ないような武器を作る為に、考え始める。


 HPが一定以下にならないようにするか?でもな、人によって差があるから数値にすると大変だ。もしかすると%なら問題ない?HPの最大値の20%位ならいけるだろ!


 よし、試しに作ってみよう。適当に木刀でいっか。木刀で攻撃すると20%以下にはならない感じで作る。右手の所に出るようにしてと。


 出てきたな。軽く振ってみる。割と軽いから俺でも振るのは楽だな。さて、性能の方はどうなんだ?木刀の詳細を確認したいな。


『要望を確認。詳細を表示します。』



名称:木刀


説明:見た目は普通の木刀。だが、この木刀で攻撃すると相手のHP最大値の20%以下にならない。



 ちゃんと出来ているな。これでゴブルに頼まれていた物は出来た。早速ゴブルがいる所に行くか。


 そう離れた場所ではなかったから、すぐに着いた。模擬戦をしているゴブルを見つける。手を大きく振ってみたが、気付いてないみたいだ。仕方ない大きめの声で言うか。



「おーい、ゴブルが頼んだ物が出来たぞ。今から、実験台になりやがれー!」

「おう!分かったぜ!少し待っててくれ。コイツが終わったら行くぞ!」



ただ待っているだけでは、もったいないので、ゴブルとゴブリンの模擬戦をみる事にしよう。


 ゴブリンがパンチしたが、すぐにゴブルが受け止める。今度はゴブルがゴブリンにパンチをする。簡単に受け止められるが、もう片方のパンチに気付かないまま、それを喰らってしまった。その衝撃で地面に倒れてしまう。


 その様子を見て苦笑いをする。ゴブルは相変わらず、手加減してなさそうだ。こっちにゴブルが来た。



「終わったから来たぞ。どんな感じの奴なんだ?凄く気になるぜ!」

「これだよ。試作品だから、ああしてほしいとかがあったら言ってくれ」



ゴブルに木刀を渡す。ゴブルは受け取ると、両手で持ち軽く振って使い心地を確かめている。どうだろうか?



「こんな感じか、分かった。リュート、これはどんな効果があるんだ?」

「それは攻撃してもHPが一定以下にならない。それだけだ」

「そうなのか、じゃあリュート模擬戦してくれるよな?」

「分かった。その代わりに、俺は普通の木刀でやるからな」



相手が武器を持っているんだ、俺だって持っていてもいいじゃないか。俺は普通の木刀を作って構える。



「おう、良いぜ。かかってこいや!」

「ありがとな。じゃあいかせてもらう。オラァ!」



勢い良く木刀を振るが、当たり前のように防がれてしまう。こうなったら、フェイントをかけてやるぞ。これならどうだ!右に軽く振ってから、左に思いっきり振る。


 だが、駄目だった。全部防がれてしまう。どうすればいいんだ。一瞬、悩んでいると隙だらけだと言わんばかりに、攻撃された。


 なんとか防げたぞ。どうだ、俺も少しはやるんだぞ!くそ、そんな事を考えていたら油断していた、全部フェイントだったらしく、本命が今来やがった!


 まだ間に合うはずだ。そう思い込んでいた。これもまたフェイントだったのだ。気づいた時には腹に一撃喰らってしまう。


 あの木刀の効果で、前に殴られた時よりはあまりダメージは入っていないが、痛いものは痛い。思わず、うずくまってしまう。



「なんだ、今のでお終いかリュート?」

「まだだ!俺はまだいける!」



だんだん痛みも無くなってきた。今なら隙が出来ているはずだ、やれる!魔法で体の動くスピードを上げて、一撃お見舞いする!


 カンッと高い音がして、そのままゴブルの木刀を弾いた。やった、勝ったぞ!



「これは一本取られたな。凄いなリュート!油断していたとは言え、俺に勝つのはあまりいないから、誇って良いぜ!」

「そうなんだ。木刀の性能も試せたし、色々ありがとうゴブル!」

「どういたしましてだぜ。こちらこそ、俺の模擬戦用の武器を作ってくれてありがとうなリュート!これからも使わせてもらうぞ!」



喜んでくれたようで何よりだ。でもコレだけじゃ感謝が足りない気がするな。よしカレーでも作ってあげようか。



「ああ、自由に使ってくれ。後、お礼と言っちゃアレだが、みんなでカツカレーでも食うか?」

「良いのか?なら、昨日の大盛りのやつで頼む!勿論、お前たちも食うだろ?」

「「「カツカレーお願いします、リュートさま!」」」

「分かった!じゃあ昨日の食堂モドキの所に行くぞ!」

「「「おー!」」」



そんな感じで昨日の食堂モドキの所に来た。ちゃんと残っているな。だが、昨日洗っていないらしき皿が大量にある。仕方ない、俺がなんとかしてやるぞ!


「みんな、昨日使った皿をまとめて俺の所に持ってきてくれ!」

「「「了解です(だ)!」」」


みんなの連携により、あっという間に皿が山積みになった。サッと魔法で分解していく。これで問題ないな。

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