シナリオ17


「ラミア様! 先に賞品を下さい!」


 プレイヤーの選択肢(本能)に従うままに、ラミア様の胸へと飛び込んだ。

 アグリの精神はたちまちその二つの柔らかな感触に支配される。

 それこそ骨のずいまで……。


(ああ、モンスターでも良いものは良いんだ……師匠の教え通り……んっ……?)


 アグリはこの『リアルクエスト』の世界ではドーテーだが、それ以外の世界では違う。バーチャル(エロゲや電子風俗)という意味においては、むしろ経験豊富な方だ。


 それらの経験と比較して、やや劣っているような気がしてならない。

 エロ専メーカーのVRゲームじゃないから、ラミア様は爬虫類はちゅうるいだから、という考え方も出来る。

 それにピコピコも言っていた。この洋館はアダルト版移行のためのテストバージョンではないかと。

 つまりアグリはテスターになった、もしくは『無料体験版』を一足先にエンジョイさせてもらっていると考えるべきか。

 だったら、現状、文句のつけようがない。

 体温が全く感じられずに、良質の抱き枕――シリコンパッドのような感触がするだけだから。

 それから、少しだけ爬虫類臭もするか……。


(ええっ……!)


 そんなことを考えていると、アグリの体を中心にラミア様はとぐろを巻き始める。

 元来、ヘビの交尾とはそのようなものなのだが、体格差や体重差もあってか、かなり息苦しい。

 というか、すぐに生存困難な状況に陥った。アグリは『レベル一』なのだ。


「ラ、ラミア様……」


「フフフッ……そんなに嬉しいのかい?」


(なんか色々と勘違いしてる~)


 だが、これがラミア様のご褒美なのだ。

 ショーでも多くの上位モンスターがラミア様の抱擁で命を落としていた。


「さあ、遠慮するんじゃないよ。きなさい……」


 ラミア様の抱擁は一段と強さを増した。

 アバターの骨格がミシミシと悲鳴を上げ始める。


(このままだと、俺、死んじゃう……)


 アグリの性癖がソッチ系ならば死さえも受け入れられるが、残念ながらそうではない。なんら快感さえも得られていないのに、死ぬわけにはいかない。

 どんどんと力を増してくるラミア様の抱擁に必死に抵抗した。


「激しすぎ! こんなの無理っ!」


 慌てた直後だった。

 アグリのゴスロリメイド衣装が、ビリビリと音を上げて破れた。

 興奮したラミア様が衣装をぎ取ったのだ。

 ふんどし一丁になってしまったアグリは、もうなすすべがない。


「おやおや? あんたおとこだったの?」


 白い毒牙と先端が割れた長い舌をむき出しにして微笑むラミア様。アグリの股間のアレを確かめるように、しっぽの先でまさぐって来た。


「ひ、ひぃ……新しい世界に目覚めちゃうっ!」


 こんな危機的状況であるにも関わらず、ちょっとだけ気持ち良かったのが悔しい。


「男の娘のようだけど……感度はなかなかだね」


「俺、ノンケです! こんなの無理だからっ!」


「フフフ……面白い素材を見つけたわ……そうだ、呪いをかけてあげましょう。これであなたの心と体は本当の意味で解放される……」


「いやっ、やめて! えっちは普通が一番!」


「あらあら、心配しないで、これから本物のこちらの世界を教えてあげる……ウフフフ、さあ遠慮なく、おきなさい……」


「いーやぁー!」


  ☂


ピコピコ:アグリはきました。

【シナリオ31へ】

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