胎児転生〜異世界行ったら本気を出したい、母親という檻の中で〜
リヒト
始まりにして終わり
「糞!」
俺は親に悪態をつき、親に向かって暴言を吐いてから家を出た。
もう、全てが嫌だった。
「……はぁー」
俺は深夜の夜道を一人歩きながらため息をつく。
「……やりなおせれば」
ぽつりと無意識のうちに呟く。
いや、俺はどうしようもないクズだった。親の言うことも聞かず、少しいじめられたくらいで家に引きこもり、親に怒鳴った。今日もそうだ。
どうせやり直しても無駄だろう。
あぁ、それでも思うのだ。あのときこうしていれば。あのとき、あのとき、と。
考え事をしていて、ぼーっとしていたからだろうか。
俺は目の前から迫りくるトラックに気が付かなかった。
気づいたときにはもうすでに時は遅し。
逃げようにも、引きこもり、贅肉に恵まれた自分の体が動くはずもなく、自分の何倍もの質量を持つトラックにあっけなく跳ねられた。
あぁ、これで終わるのか……。暗転してゆく視界の端で何かがぱっと光った。
■■■■■
ん?あ、あれ?意識が、ある。なんで?
俺はトラックに跳ねられはずじゃ……。
俺は気づいたら何も見えない真っ暗な空間で、意識を取り戻した。
体を動かそうにも、うまく行かず、なんとか目を開けようと努力するも、そもそもまぶたの存在を感じられなかった。
聞こえてくるのはトクン、トクンという規則正しい心音と、お風呂に浸かっているのような温かい感覚があるだけだった。
もしや、これは……。
転生、したのか!?
引きこもり、ネット小説を読み漁っていた俺はすぐに今の現状に気づいた。
胎児にでも転生したのだろう!
あぁ、これで、やり直せる!人生を。一から!
今生は全力で生きよう。自分を生んでくれた親に恥じない生き方をしよう。
後悔することがないように。
自分の持てる全てを使って。
ところで、いつになったらこの暗闇から出れるんだろうか。
暗い。ただただ暗い。トクン、トクンという規則正しい音ですら耳障りになってきた。あぁ、一人は嫌だ。誰か……誰か、誰かいないのか。
何も見えない。何も感じない。何も聞こえない。何も、何も、何も……あぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
嫌だ!助けて!出して!ここから!お父さん!お母さん!助けて!ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごえんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいめんごごめんなさいごめんなさいめんごごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごえんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごえんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいめんごごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごえんさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!情けない子供で!親不孝な子供で!期待を裏切り続けて!素直になれなくて!こんな子供で!育てさせてごめんさない!生まれてきて、ごめんなさい!
あぁ、だから。だから。でもぉ。でもぉ、助けてよ。お父さん。お母さん。
あぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
ひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっくひっく
■■■■■
「おぎゃおぎゃおぎゃおぎゃ!」
生まれたばかりの赤ちゃんは元気よく泣き声をあげる。
「ほら見て、奥さん。元気な男の子ですよ」
「ほんと。よかった」
彼は生まれ変わった。望み通り異世界に。
だが、人生をやり直すことは出来ないだろう。
どうせ何も変わっていないのだから。
胎児転生〜異世界行ったら本気を出したい、母親という檻の中で〜 リヒト @ninnjyasuraimu
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