らしく生きる

バシャ

スカートに味噌汁がぶっ掛けられる

「あら、ごめんなさい。調理師さんぞうきんを1枚頂戴」

「ほら、これでふきなさいよ」

周りがクスクス笑う

バシャ

「おっとすまない。調理師、ぞうきんを1枚くれ」

「ほらこれで拭くといい」

「貴方、私をだれだと思ってるの?この学校の会長の孫よ?

故意に味噌汁をぶっかけたうえにぞうきんで拭けですって?

こんな仕打ちゆるされると思ってるの?」

「許されるも何もあんたがしたことをまんまる真似てやっただけだぜ?」

周りの人が一人二人引いていく

誰もが関わるとろくでもないといわんばかりに逃げていく中

男はにやにや笑ってる

「あのー。味噌汁は雑巾がほとんど吸い取ってくれたので

これ以上荒立てないほうが…」

最初に故意に味噌汁を投げられた子がか細く言う

「ふーん。あんたにも問題ありそうだな。耐えしのぐだけが能じゃないぜ」

「まぁ、いいや行こうや。こっち」

「あっと、ひっぱらないで味噌汁がこぼれちゃう」

「あははは、人に味噌汁ぶっかけられといて

自分の味噌汁がこぼれる心配するのかよ。あははは」

「そんなに…笑わなくても…」

「いや、すまんすまん。ここらで食べようや」

「はい」

窓辺の一等席だ

座ろうものならさっきの佳代子がやってきて

いつもなら真ん中の狭い席に追いやられる

4人机を2人で使うのも小夜には初めてだった

「会長の孫っていうと大蛹…なんてんだ?」

「おおさなぎかよこさんです」

あんたは?

「土島小夜(つじしまさよ)です」

「さよちゃんかかわいいねいじめられるのそのあたり?」

「あのー私といると標的にされます

佳代子さんは報復をしてくるひとです」

「手はだせないさ。俺は男だし大泉評期(おおいずみひょうご)だしな」

「佳代子さんには男性の取り巻きもいます

乱暴でもされたら…」

「へーそうこなくっちゃこちらもおもしろみがない」

「冗談じゃないです。佳代子さんのせいで自殺した人も…」

最後のほうは消え入りそうな声だった

「俺の言葉ちゃんと理解している?

俺は大泉評期だしなと言ったんだぜ?」

「はい。お名前ですよね」

「ついでに天然ボケ娘なのな、

首席で入ってしどろもどろなあいさつで逆にめだってたけど…

頭は使わないと腐るぜ?」

「はぁ、日々勉強はしているつもりです。すいません。」

「この学校はなんて名前?」

「私立大泉技術学院…あ、大泉さんもこの学校の関係者さんなのですか?」

「そゆ、こと。オーナーの息子立場だけなら俺のが上」

「それよりずーっと気になってたんだ

頭はいいくせにおどおどしててだから人がちょっかい出す

八つ当たりだな…」

「あ、もう一つ思い出した」

「何?」

「いつも次席…ごめんなさい…」

「謝らなくていい今日から俺に勉強教えてくれ

そん代わりボディガードしてやる」

「そんな教えれることなんてないです。たまたまいいだけで」

「たまたまで入学式は済んでも学力テストで2連荘1番とはいかないぜ」

「明日から俺と付き合うことOK?NOはなしだぜ?」

「強引なんですね…」

「見ちゃいられないんだよ。うずうずしてさ。いじめるほうも嫌いだが

甘んじてる奴も嫌いなんだよ。でも気になるから例えばさ

成績下げれば目立たなくなるんじゃないかとか考えない?」

「すくない取り柄ですから…」

「でもいじめられてるのはそのせいだと思うぜ?」

「そうなんですか?」

「ほら天然ボケ大蛹はいつもトップ10入りしてる」

「あーそうなんですね…気づかなかった…」

「それもこうむらむらむらといじめたくなるような体質してる

もっと背をピシンとしてあご上げて歩け

トップならトップらしくしてろ」

「はぁ…らしくですか…」

「そうらしくだ。明日から特訓してやる。その間に俺が首席をとる

なかなかいい案じゃないか。うんうん。我ながら頭がいいぞ」

放課後さっそく大泉は土島を迎えに来ると

「さっそく味方をみつけたとばかりに一緒にいるじゃない

クリーニング代だしなさい」

「そっちか土島さんのクリーニング代だしたら考えてやる」

「きーっ、誰がだすもんですか二人ともやっておしまい

女は後で好きなだけ遊んでいいわよ」

「へへーっ、そういうことだ言うこと聞かない子には体罰だな」

「土島さんそっちの角で大人しくしてろ片付けるから」

「片付けるって10人近くいるじゃないですか…」

「いい子だから下がってろ邪魔なんだよ」

「はい」


勝敗はあっさりついた

ほとんどが大泉のKO勝ち数をものともしない強さだ

「強いんですね」

「勉強だけじゃ片輪と同じ。うちの家訓」

「じゃあ私は片輪だわ」

「だろーなー。真っ白けだ。少し日焼けしろ

家どこ?送ってくしばらくは油断できないからな」

「こっちです」あるくこと60分家についた。

「土島さん自転車持ってないの?」

「あー乗ったことないんです運動音痴だし」

「そっか、じゃあ通った公園の出口側土島さんの家側で明日5時半待ってるわ」

「…5時半ですか?」

「異論は却下だぞ」

「…わかりました」

「食事してきますか?すぐつくりますが?」

「娘が作るの?」

「うち父子家庭なんです。私が長女」

「あーできるのは勉強だけじゃないわけだ」

「5時半早すぎ?」

「いえ間に合わせます」

「いい返事だ」


こうして土島と大泉の交際は始まった

朝来ると自転車が用意してある

おそらくはとは思ったが特訓が始まった

「もっと勢いに乗ってバランス取る」

ガチャーンと倒れる

「いたた」

「みせてみろ擦り傷だなめときゃなおる」

「もう一回」

休み時間には大蛹がやってきてひと悶着起こす

そんなことが1週間も繰り返された頃

「あの大泉評期さんなのですね」

「そうだよ。やっと名前聞き出したのか?」

「すいません!すいません!オーナーの息子さんなんてつゆ知らず

ご無礼ばかり働いて本当にすいません」

「いいよ。もうあっちいけ」

「あのーどうしたら許してもらえますか?」

「許すも許さないも権力かさにかけるやつも権力に屈するやつも

俺は大っ嫌いなの。出来る限り視野に入るな。それだけでいい」

「はい。すいませんでした」

「これで騒ぎはもうおきないかな?」

「だといいのですが…」

「てことでこころおきなく特訓だな」

「まだ、やるのですか?」

「ああ運動音痴なのはよくわかった

が、乗れないもんじゃない」


それから約2ヶ月

「あ、乗れます。乗れました大泉さん乗れます」

「みりゃわかる。その自転車プレゼントしてやる

明日から学校に乗って来い。」

「手続きがいるから明日からは無理かも…」

「そういやそうだったな」

「いいんですか?こんな貴重なものもらっても」

「それ俺が中学のとき使ってたやつ、もう背丈たりないから」

「調整すれば乗れるんじゃ…」

「中学の頃おれチビだったの前から2番目

それが今の高校じゃ一番後ろ調節しても乗りにくい」

「はぁ…じゃあいただきます。ありがとうございました大泉さん」

「あーそれもやめない?俺、小夜って呼びたいし

マジ勉強も教わりたいし俺の事評期でいいよ」

「はぁ呼び捨てですか?」

「俺の事嫌い?」

小夜は慌てて首をふり

「こんなによくしてもらったのは始めてです」

二人はそっと口付けを交わした


ちなみに小夜の成績は平均60点台の中90点台を保持するつわもので

評期がトップを取るのは随分と時間がかかった

それもまぐれとか運がいいとかそんなレベルで小夜は圧倒的だった




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