失恋

なんでなんでなの!


6年間付き合ってきて


今さらにふられて


私は泣き叫んだ


猛(たける)は


学業に専念したいということだった


だけど



邪魔なんかしてない


高校に入って部活動の忙しい猛を


部活の邪魔したことさへない


誕生日もクリスマスも我慢した


一緒の大学に入ろうと


勉強の手助けをした


ここ3年間は


それが唯一の一緒の時間で


それでも堪えた


猛は希望校をサッカーの推薦で入れるところに決めた


本気なんだ


少しずつ実感が沸いてくる


泣いても泣いても止まらない涙に自分でも嫌気がさした


それでも徐々に悲しみは落ち着いていった


考えてみれば自分勝手なんだ


サッカーしたいからつきあえない


そんなことあるわけない


家庭を持ってるプロ選手なんていくらでもいる


勉学に専念したいと言ってスポーツ選手の枠で入学するのだし


少しずつ泣く時間が短くなり勉学に励む時間が長くなった


受験が終わってほっとしたころ


猛のまわりにいっつもひっついてる女の子をみかける


かわいい子だ。華奢で守りたくなりそうな女の子だ


ああ、あの子が原因だな


誰がみたってわかる乗り替えられたのだ


もう涙も出ない




夏が過ぎた


大学の生活もバイトの仕事も慣れたころ


N校で部活の懇親会が行われることになった


ていのいい合コンだ


一度断ったものの副部長の私が出ないのはまずいと言われ


でることになった


だいたいが1年の私が副部長するくらいの文学部だ


理系で文学部も笑えるがちゃんとあった小人数だが


他に科学部が参加している


「じゃじゃじゃーん!N校の皆様には


今お流行のサッカー部員にきてもらいました」


悪夢だ猛と鉢合わせになるそれだけでげんなりとした



わいわい合コンがはじまって半ば


私の隣に空席ができた


すかさず猛がやってくる


嘘だろおい疫病神あっちいけ


本気で思った


「ほのかだろ?ニキビ綺麗にとれちゃってえらい美人に見えるけど」


「それはどーも」


「付き合ってる奴いるの?良かったら寄り戻さない?」


「終わってる。最悪に迷惑なんだけど」


「高校のころあんなに引きずってたじゃん俺のこと好きだったろ」


「だから寄り戻せと。例の彼女とは別れたの」


「別れた好きだったけどサッカーでの推薦ではいってたから…


結局サッカーサボってばかりで勧告されてね


その点ほのかはじゃましないじゃん」


私は飲みかけの酒を猛めかけて放り投げた


当然、猛はびしょぬれになる


「ふざけるんじゃないわよ


じゃまにならない?邪魔をしなかったのよ


今更やり直しましょう?


どんだけ思って忘れたと思ってるのよ


どんだけかけて区切りをつけたと思うのよ


あんたみたいなのと付き合うのはまっぴらごめんよ」


「ほのか、まーまー落ち着いて」と部長の里子先輩


「落ち着いてます。勘定してください。私抜けます」


お金だけ置いて抜けだした


街の通りにでたらまた涙があふれてきた


今度は悲しみのあまりじゃない


なんであんなの好きだったか情けなくって泣けた


サッカーサボってまで彼女と遊び倒したんだ


それはわたしにとってそれだけの女だったことをしめす


6年と付き合ってた時間は長いが


中身は私が熱をあげただけで猛には女ならよかった


そういうことだろう


そして卒業まじかで付き合った子が初恋


自分の好きなものをなげうってまでつきあってたのだから


反省もしたのかもしれない


それでももう付き合う気はなかった


小学校の頃から付き合って知り尽くしてたつもりだったのに


結局は負けたのだからそこで身を引くべきだろう


自分がきずつくのはもううんざりだ




結局私が恋をするには10年かかった


三十路を過ぎて結婚前提で付き合い始め


半年で家庭をもった


猛も大学をでてサラリーマンになったようだ


すくなくともプロにはなってない


あの時別れずにすんだのならプロになれたろうか?


考えても仕方ない


ふったのは猛なのだから


私はふられた相手と二度も付き合うほど


プライドが低くなかった


てか、涙が消えると悪いところばかり思いついて


もう一度恋することができなかったのだ


せめてあの時すきな子ができたと


正直に言ってくれれば


泣きに泣いた後友に戻れたかもしれないが


やっぱりむりかもしれない


川っぱらで遊ぶ子供を見ながら


そんなくだらないことを思い出していた


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