山に登りて

哲雄が山に登るかといいだした

どちらかというと本の虫で

体力なら私の方がありそうなきがする

その彼が山登りをしたいという

一瞬言葉に詰まった

出た言葉は「本気?」だった

「うん。この景色をなまで見たいんだ」

そう言って雑誌を広げた

綺麗な景色だった万人が万人綺麗というかはわからないが

見たくもない景色だというひとは少なかろう


それからは慌しかった

正式な位置を調べ

登山用具を買い

すこし階段の上り下りなんかもしてみた

学校で登った登山を数からはずすと

お互い初登山だ

付き合い始めて10年

こんな慌しいのは始めてだった

おそらく生まれてからもお互い初めてだろう


どうせなら紅葉をと決めた吉日

私たち二人は山を昇り始めた

結構人が多い

おかげで遊歩道が踏みしめられ

道に迷うことなく進めたが

仕事で荷物配達している私と違い

自由業で自室でパソコン片手に仕事をしている彼には

厳しい道のりだった

出来るだけ歩調を合わせる

「ごめんなー男なのに情けない」

「そう思うなら今度から体力作りするのね」と返す

どうせやりはしない

1分の時間があれば本かパソコンに向かっている人だ

その気になれば株を売るだけで家が建つやり手なのだ


茶屋で一杯ついでに雑誌をだす

場所を聞くとCに数字が書かれた場所を目印にするといいという

雑誌に載ってから客が後をたたなくて商売繁盛だとほころぶ

優しげなおばさんはその後マナーのなってないのも多くてね

と悲しそうにつぶやいていった


到着するといい景色が目に入った

「うぁおーっ。最高だね」

「うん。思った以上の景色だね」

「でも」と言って足元をみる

缶にプラ、包み紙放り出されている

「持ってきたものを持って帰るだけでいいのにね」

「うん」

美しい景色をバックに写真を撮る

手一杯伸ばしたがそれでもなかなかいいショットは取れない

そしたら「撮ってさしあげましょうか」と今ついた観光客が言う

願ったりであるお願いして2.3枚とってもらう

お礼を言っておそらく他の人も撮るだろう位置をゆずる


私たちはしばらく眺めてそれから宿にむかった

宿はもう少し登ったところにある

行くと何かもめている

とりあえずてづづきをすまそうとすると

「お客さんW1つじゃだめですかい?」と聞いてくる

これは私がこたえるべきだろう

「かまいませんが」ちらっと二人のもめていた人をみる

「そら助かった。そっちのお客さんに礼いいな」

「そんなこと宿がきりもりしてとうぜんじゃない」

そう言って手続きに入る

カチンときた私が腕をまくってと彼に止められた

無駄な争いはするもんじゃない

それは彼の鉄の鉄則のひとつだ


部屋をふたつとったが

何も知らない仲でもない

彼は神が後押ししてくれたんだなという

「何を押したのよ?」と私

目の前には指輪のケース

中には彼と私の指輪が納まってた

「そろそろ結婚してもいいだろう?」


私は一度断っている

性格が天と地ほど違うと

あれから8年くらいたつか

ずっと持っていたんだな

「OK根気負け。愛してるよん」

そう言って抱きつく

勢いに押されて倒れる

本来私は筋肉質な人が好みだ

自分も鍛えている

でも付き合いは続いていた10年

私から見ても潮時だろう


まぁ私の気が変らないうちに

山をおりたら

結婚式の準備でおおわらわだろう

幸せになれますように




朝帰り道、昨日の場所に行くと

数名でゴミ拾いをした人達がいた

その中に茶屋のおばちゃんをみつけて

おばちゃーんと手を降る

そしたら振りかえしてくれた

観光客が少なくなるまで続く

地道なさぎょうだろう




ただ客が減れば収入も減る

複雑な気分で

組合の人たちはがんばってるんだろうな

私たちの関係に似てるかな

悪いとこを拾っては捨て

拾っては捨て

いいとこだけを信じていきられるようになった



山の景色は最高の贈り物だったよ


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