月日流れて

「うああっ。カスミソウの束どうしたのこれ」とかすみ

「買って来た」とぼそと言う流

「買って来たって高かったでしょうなんかあったの?」

「あのさーつきあわん俺と?」

「幼馴染じゃんこれ以上したしくっていうと……

きゃーえっち流ちゃん!」

「何を考え取る何を。うんなんじゃないよ」

「わかってるって流ちゃんそんな子じゃないもん

目つぶって」

かすみが流のほほにキスをする

「な、だからそんなんじゃないって」

「わかってるって今のはカスミソウのお礼」

「カスミソウいっぱい抱えて告られるなんてしあわせだぁ

流ちゃんならではだね」

かすみはにこにこしている

「幼馴染だからな」どこかツンとしている照れているらしい


カッキーン

ボールが勢い良く飛んで行く

ホームランじゃないが

これは点数取られるな

「かすみ、流とつきあいだしたって?」

「うん。まぁ、なんもかわんないけど」

「仲いいもんねあんたら」

「そっかなー普通じゃねぇ」

「仲いいよつきあってるから武の試合みにきてるけど…

全然つまんないもん」

「かすみはこんなこと小学校からやってるんでしょう?」

「ちゃうちゃう小学校のときは野球やってたんよ

でも中学から男女別になってそしたらつまんなくなってさ

やめちゃった。まだ見てる方が楽しい」

「見てても全然たのしくなーい

クリスマスも正月も誕生日もおめでとうってぷれぜんとだけくれてさ

野球に飛んでいっちゃうんだもんわたしいつも2番目」

「武ちゃん野球好きだもんねぇ」

「そういうあんただっておんなじでしょ。ずーっと野球の方が夢中

って感じじゃん告られたならすこしはこっちを見ろとか思わん?」

「んーでも流ちゃんの実力じゃプロにはなれないし

草野球はつづけてるかもしんないけど…今はさせてあげたいかな」

「できてるなぁ私別れようか真剣に考えてるのよ」

「駄目だよ武くんならプロ目指せるもんそしたらずっと野球続けてるし

でもまゆみちゃんいるからそれくらい頑張れるとおもうのよ?」

「私は優勝トロフィーじゃなーいおいとかれたってほこりかぶるだけだわ

青春今しかないのよ。何が嬉しくって紫外線にあたってなきゃいけないの」



けっきょくまゆみは武と別れた

今はちょっとイケメンでみんなからも羨ましがられる遠見さんと

つきあいだしたらしくけっこういちゃいちゃしている

武の打線守備は一時期滅茶苦茶だったが

まゆみが遠見さんとわかれてフリーになった頃は立ち直って

一層野球にうちこんでいた

かすみも

「私ずーっとりゅうちゃんおっかけてたからきづかなかったけど

好きな人がすきなことにうちこんでるのってそんなにつまんないかな」

「そりゃひとそれぞれだろ。少なくともスタメン入ってる時は

試合に出れなくてもかすみは見に来てるぜずーっと」

「だよねー私って馬鹿なのかしら」

「んなことないだろ馬鹿になっちゃうくらい俺だって好きだぜ」

かすみのほほが朱に染まる

「もう流ちゃんたら」


だがかすみも別れた

夏の真っ盛り用事を頼まれたかすみは

めずらしく流の練習試合を見ずに帰った

その帰りに交通事故にあった

後の裁判で事例としてもあげられる

「誰かを引いてみたかった」という交通事故だ

目を覚ましても流が来ない

来たのは次の日練習が終った夕刻だ

「ごめん、流ちゃん別れて…一番居て欲しい時に居てくれないのは辛い」

「お前が俺を待たずに帰ったから起きた事故だぞ!

なんで別れなきゃいけないんだよ仕方ないだろサボれるほど

俺の野球は上手くないんだ」

「流ちゃんがきらいじゃない。でも野球止めてっていっても無理でしょ?」

「無理だよ」

「だから別れて」



それから幼馴染の関係もギクシャクして

二人ともなんとなく疎遠になった

流は企業球団に入って野球を続けていた

かすみはOLをしていた

そんなある日カスミソウの束を持って流が表れた


「限界まできた野球止めて来たよ

もう一度付き合ってくれ 」

「馬鹿じゃないの。そんな都合のいい話あるわけないじゃない

2度目のカスミソウなんてかすんじゃうんだから」

「ごめんどんな花束がいいか考えたけどおまえにはこれしかないって

でも駄目か好き勝手した後でいまさらだよな

ひどいこと言ったごめん…」

流が階段を降りていく降りきったところでかすみが

後を追いかける片杖をついてきようにおりていく

「待ってよ。私の足ずっとこんなんなんだよ。

野球好きだった。でも二度とできないキャッチボールさへできないんだよ

これでも医者は運動神経が良かったし忍耐つよくリハビリしたからだって

置いてかないでよ。そんなに簡単にあきらめないでよ

わたしずっとまったのにまってたのに…」

「かすみ」流が頭を抱きしめる「ごめんずっと自分を優先して来た

お互いあってなのにな。ごめん」

流がほほにキスをする

「俺待たせたんだなまっててくれたんだなごめん本当にごめん」

「ごめんはもういいから私の片足になって」

「ああ、そだな。なるよかたに手をかけて杖よこせ」

「何度と無く上り下りした階段を上っていく」

かたにかすみの重たさを感じながら


それから二人が結婚した知らせがくるのは

長くなかった。とても幸せそうな二人の写真を

バーでまゆみが見ている

「私も待てたら今頃奥さんだったのかなー」

「マスター店あけますよー」

「はいはいわかったわいいわよー」

そういいながら引き出しに写真をしまった


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る