金<<かね>>

ガーキィガチャン

カチャ

ギチギチカチャ

部屋に入る

少し迷ったが

先にトイレに入った

ガチャンガチャン

窓ガラスが割れる

背中にガラスが入った気がする

慌ててトイレをすませベランダのほうに行く

トイレの窓ガラスを割った奴はわめいている

借金の取立てだ

ガラスを割ればそれだけ費用がかかり

返すのも遅くなる

それくらいわからんのか

ボケが

ベランダで上着を脱ぐ

誰かに見られているかもだが

部屋にガラスを散らしたくはない

ブラだけになりガラスを払う

すこし傷がついたようだ

キャミだけ着て部屋に入る

何も悪いことはしていない

友人の保証人になっただけだ

なのに友人は夜逃げした

このまま借金を肩代わりするつもりもない

きょうも弁護士のところへ行ってきた

トルルルルッ

警察に電話をかける

充分器物破損になる

かすり傷だが障害もはいるかもしれない

少しだけソファで休むまだわめき声が聞こえる

そのままさわいでてくれれば調度いい





少しして警察が来た

慌てて降りていく3人の男たち

もう遅い

現行犯だ

警察に背中の傷も見せ

もう羞恥心もへったくれもない

この状況が続く限り

私も夜逃げしなくてはならなくなる

が10年勤めた会社を辞めたくない

やっと下働きを終えて一人前になったところだ

たかが経理されど経理なのだ

場所が違えばやり方も違う

資格のない私にはこの下積みは100万の富に値する

同時に友人の友人だった人も教えておく

本人がでてくるのにこしたことはない

全てと縁を切ったか残ってるかかけだ

警察に君も保証人になったのだから払う義務がある

と言い聞かされながら男たちは逮捕されていった

世の中のどれくらいの人が

本気で保証人として肩代わりをするはめになると思って

サインするものか

本来は信頼の上になりたっているはずだ

私はすさんでいた

幼稚園以来の知り合いだ

この都会をでて親戚でも頼って田舎に逃げたか?

みつけれるものならみつけてやる

それに窓ガラスを割られる理由はない

今月の支払いは済んでるはずなのだ

全額いっぺんに返せと言うほうが無茶なのだ





一晩開けて朝になる

結局まともに寝ることもせず

ソファーで転寝をしていたらしい

写真を探り出す

封筒には住所も書いてあった

よし

手かがりをつかんだ

急いで旅支度をする

からぶりかもしれないが

取立屋にも住所を教える

窓ガラスを割るくらい短気なんだ

向こうもすっ飛んでいくかもしれない





到着すると

「和子さん夫妻着ていませんか?友人の都です」

ちらっと後ろを振り返る2階

見逃さない。いた。

「居ませんよ。帰ってください」

「来てませんよとはいわないのね。視線の先、私もみたわよ」

ついついと歩いて開いた玄関に入ってく

出来る限り大きな声で「和子さんいるんでしょう?」

「出てきなさいよ義理も果たせない貴方にわざわざ会いにきたのよ」

でてこない

「いいわ。覚えてなさい。義理を先に欠いたのは貴方よ」

「今度は弁護士とくるわ」





取立屋がいくと100万ほどまとめて支払いをしたらしい

そして…逃げた

また夜逃げだ

今度はどこだ

幼稚園からの知り合いほとんど隠し事は無かったはず

行ける場所なんてしれている

弁護士を連れて行くと

引っ越したという

場所を聞いても言わない

さすがは親である

だが親である以上肩代わりしてもいいはずだ

私の保証人になって変りに払えと言ってやる





それから毎月いくばかのお金が届くようになった

支払いには全然届かない

私は結局自分のざいさんのほとんどを失った

裁判に持っていっても勝ち目は低い

そんなわけで私は全額肩代わりしたようなもんだ

それからもいまだに数千円の仕送りがある

払い終わったことを知らせる気にもなれず

そのお金は生活費にあてがった

10年かけて貯めたお金が無くなったのだ

それでもおわらずに支払った

破産宣告したいのをぎりぎり留まって

私は結局支払いを終えた





その代わりに得たものは

金に汚い醜い女だった

もう綺麗に笑うことはないだろう

私の微笑は氷のように冷たくなった

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