園子と加奈子


園子という転校生が来た

第一印象はかわいいだった

ぺこりと頭を下げる

ランドセルから教科書が飛び出してきた

蓋がきちんとしまってなかったらしい

第二印象派そそかしいだった

クラスの皆に笑われて

それでもにこにこドジっちゃった

と舌をだす

毒気のない子だった



ひと月とたたずに

園子はひとつのグループに混ざって

お昼ごはんはなどをたべていた

昼休み園子は必ずトイレ行く

一緒に行くよと言うのを

園子は断る

つきあいの悪い奴とかいいながら

園子のトイレはいつも長いので

人を待たせたくないんだなと思っていた



ある日園子の隣にトイレに入った子がいた

「園子ちゃん煙が見えてるで?」

「ほっといてよ、告げ口でもする?」

「あは、告げ口されて困るのはうちや」

「退屈せん。あんたのグループ」

「退屈なくらいで調度いいんじゃない?」

「少なくとも親は安心するしね」

「ふーん」

「うち加奈子や隣のクラスやで」

「遊びたければ声かけて知らんとこないから」

「たばこは理科室の裏がいい」

「調度死角でみまわりもこんで」


園子はたばこを吸っていた

小4の頃からか

前の学校でも問題になり

PTAの呼び出しをくらったり

集会でもそんな子が友達では困ると言われていた

転校したのも心機一転やりなおす為

口実で親がうざいと思って田舎の祖父へ送りつけた

ただそれだけの話だ

お金は毎月送られてくる

全部自由に使えたお金が

お小遣いとして少量になった

だからタバコの数も減った


「あーあー切れちゃった畜生だな」

「来月まで禁煙か」

「私のやるよほら」

そういって加奈子がほうりなげる

「へー同じの吸ってるのか」

「うん気づかなかった?」

「人に感心示さないからな」

「園子らしー本気でうざいこと嫌いなんだね」

「じゃあ貰っていくわ。バイバイ」

「あ、園子。」

「何?」

「日曜日一緒せん?ライナー教会で10時」

「町の真ん中にある教会でしょう?いいよ何?」

「あそぼ」

「OK」


その頃になると園子はクラスで一人でいることが

多くなった

元のグループでも園子ちゃんは団体行動ができない

いっつも好き勝手やってるとはじきだされた

でも園子は気にしてるようすはなかった

加奈子の存在も大きかったもしれないが

もともとうざったかったのも本音だろう


カーンカーンカーン教会の鐘が鳴り響く

頭の被り物をとりながら

「お待たせな遊び行こう」

「加奈子ってキリスト教徒なんだ」

「うん。洗礼うけてるよ。赤ん坊の頃」

「まぁ親がキリスト教徒なのさ」

「でも二人とも浮気に忙しくって金だけ置いてく」

「顔合わせるのもこの日曜のミサだけだね」



「ほら行こうこっち」

加奈子が一番最初に来たのはコインロッカーだった

平気で下着姿になって着替えていく

園子の方が慌てて赤くなりながらはすタオルで隠そうとする

ジーンズに長袖Tシャツと半そでブラウスの重ね着

「いつもロッカーにいれてるの?」

「洗濯するときにはいれかえるけどねー」

「そっかー」

「こっちこっち」

「この切符持って」


二駅ほどで降りる

ひっぱられながら着たのは

「ローラースケート」

「経験したことある?」

「ない」

「風を切るの楽しいよー」

園子は最初オタオタしていたものの

どうにかすべれるようになった

加奈子に手をひっぱられて走ると早い

本当に風を切ってはしっていた

ちょっとバランスを崩して怖かったけど

楽しかった昼も食べずに一日遊びたおした


「夕食どうする帰る?」

「帰ってもおじいちゃんいるだけだし

夕食ができてないって平手うちくらうかな?」

「ひぇー怖い」

「同じ怖いなら食べて帰るかな」

「ならうちにおいなよ

5教科自信ないけど体育と家政科ならじしんあるんだ」

「へー、いくいく」

加奈子の料理は和食だったが見事な腕前だった

「ほんと、美味しい」

「ね?」とウインクしてくる


「勉強教えるよ毎日1時間と休み午前中半日」

「市立目指そう?」

「私の成績じゃなー無理だと思う」

「無理かどうかはやってみてからでいいじゃん

駄目だったらN女子学院あそこなら問題なし

クラスはわかれちゃうかもだけどね」

「偏差値でクラス替えするとこか…」

「OKでも本気で馬鹿やで?」

「わかったそのつもりでいく」


こうして二人の猛勉強がはじまった

「これ小学1年の教科書じゃん」

「できないっていうからもってきたんだよ」

「まずは偏差値調べ」

集中力を欠く加奈子に対して

園子は根気が良かった

無理強いはしない勉強する気になるまで待つ

その間は自分の勉強をしていた

結果園子の根気勝ち

二人して市立に無事入れた

もちろんN女子学院にも

「どっちにしようか迷うよね」

「迷うの?迷わず市立かと思った」

「N女学院はN女子大学のエスカレータ校なんだよ」

「被服科も食物科もある」

「へー加奈子上の学校なんて考えもしなかった」

「中学、高校6年過ごすんだからね」

「女子学院行こうか。親にしっかり金しぼりとってやる」

「あはは、結局はそこか」

「もうひとつは祖父だよ足腰めっきり弱くなって

いつ死んでもいいかわかんない感じ時々ボケるしね」

「女子のが家から通える」

「なるほどじゃあ市立はやめて女子ね」

「うん」

「あっとこれも卒業」

高らかにタバコの箱をほうりあげる

落ちてきたらぐちゃり踏みしめる

「うひゃ。もったいない加奈子にくれ」

「中学入るとうるさいよ?今辞めたほうがいい」

「そっか、じゃあ加奈子も」

と言って放り投げる


「もしかして吸いたくて吸ってた?」

「ううん。親への反抗」

「中学は勉強しなよ。頭のいい不良はかっこいいけど

馬鹿な不良はかっこわるいよ」

「かなーそーのこちゃん」

「はいはい引き続き家庭教師しますから」

「うれし」


その後園子も加奈子も両親が離婚し母方に引き取られ

二人で部屋を借りて住み無事に大学まで卒業していく

勘当覚悟だったが自分たちにも負い目があったのだろう

二人で住むことをあっさり許された


「こころ残りはおじいちゃんかな」

「なになにどーしたの?」

「なんでもない」

「すぐ完結するーなになに?」

「おじいちゃんどうしてるかなって」

「逢えるところにいるんだから逢いに行けばいいじゃん」

「ほらほら善は急げってね」


「ごめんね来なかったほうがいいよね」

「ううん墓参りできただけでも充分」

「一番長く園子と一緒にいてくれた人」

「で2番目は加奈子ちゃんね」


二人はそれぞれ食物科と教育科を卒業

調理師と学校の教師になっていく

お互いに彼氏ができ結婚するまで

二人の共同生活は続いた


青春というには早すぎる二人が

歩んできた道

人はどう問うだろうか

今ではなんでもない家庭を作ってる

二人とも専業主婦で子供を抱えたまま

相変わらず定期的に会っている


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