不老不死

むかしむかし


あるところにとても美しい人魚がおりました


人は彼女を食べると不老不死になると


追い掛け回します


それでもその土地にとどまり


陸の周辺を泳ぎ回るのには理由がありました


彼女にはその村に人間の恋人を持っていたのです


二人は毎月


月の明るい満月に逢瀬を重ねていました


もともと異種族


その逢瀬は心と心の交し合うだけの


とても清らかなものでした



ところがある日二人はその逢瀬を


人に見られてしまいます


村人が駆けつけたときには


人魚は逃がされ男だけが立っていました



二人は会う機会を失いました


お互いが海を


陸を見回しますが


見つかるのは狩人ばかりで


肝心な愛する人は見つからない



そんなある日だった


愛する人を乗せ船が出た


罠なのはすぐにわかった


もりをもった人間も何人も乗っていた


だけど愛する人が両手両足を縛られ


海に落とされる


何度も死ぬ寸前で拾い上げられ


とうとう殺す気なのか遠くに数人で放り投げた


溺れていくその人を助けるため


私は愛する人に近づき


何本ものもりに狙われる



抱きかかえながら


必死で陸を目指す


陸には更に大勢の人が待ち構えていた


逢瀬を重ねた岩場に連れて行き貝で縄を切る


そんなことをしている間に


船に囲まれた


人魚は逃げる場所を失い


捕まってしまった



人魚はまず魚の胴体部分を切り落とされた


村中に響くような悲鳴


そして両腕を根元から


また悲鳴が上がる


そしてやっと首が切られた



男には肉が配られる代わりに


生首が渡された


ひどい苦痛に苦しんでる生首


それを大事そうに抱いて村人達をただみてた



一人が血をはいて


くるしみもがきながら死ぬ


村人はみな後に続いた


不老不死どころか毒薬だった


村人は赤ん坊から老人まで死に絶えた



それを見届けた男は生首から首の肉を切り取る


作ったばかりの小さな祠に


生首をいれ蓋をする


そして男も人魚の肉を口にした



男は死ななかった


歳もとらない


10年祠の守をして過ごした


生首はミイラになっていた



男は海に出る


人魚がいるならでてきてくれと


この不老不死の体を人に戻してくれと


沖へ沖へ行き叫び続ける


一人の人魚が現れる


不老不死は死なない殺せない


だが人魚に食われる気があるなら死ねると


生きたまま食われるんだと



男は問う


それで死ねるのかと


愛するものの元へ行けるのかと


なら生きながら食われる


苦痛も恐怖も乗り越えようという



男の周りに沢山の人魚が集まった


そして男が船から飛び込むと



一斉に人魚達が不老不死の男の体を


食いちぎっていく


男は悲鳴ひとつあげなかった


苦しみは長く続く


水の中では息ができない


だけど溺死では死ね無い


何度も生き返り


ただひたすらに人魚に食われていく



食われながら一つの疑問を口にした


村人は全滅した


何故人魚を愛し共に逝きたかった俺だけが


不老不死になったのだと


骨の見えてきた体で男は聞く


不老不死になれるものは稀なのだと


不老不死になった者の肉を食べることで


人魚は美しく若さを保つのだと


そして肉を食べた人魚は子供をはらみ産む


子孫はそうやって増える



不老不死の人間は


人魚の一番大事な食べ物なんだと


男は笑って死んでいった


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